廃プラスチックを取巻く国内外の状況

～廃プラスチックの行方～

2025年7月14日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

日本においては、廃棄物のリサイクルに関して「資源有効利用促進法」、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律（プラスチック資源循環促進法）」、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律（再資源化事業等高度化法）」などが施行され、廃棄物の分別制度が比較的国民の理解を得て、金属類、ガラス、小型家電類、プラスチック類（PETボトルや発泡スチロールによる食品トレイ、その他キレイなプラスチックなど）、紙類（古新聞、雑誌、その他の紙類）、ボロ布、その他（生ごみなど燃えるごみ、ガラスや陶器など燃えないごみなど）が市町村によって、多少の差はあるかと思われますが、比較的分別が守られて回収されているように思えます。

筆者は以前、ごみの終末処分場の見学をしたことがありますが、昔のイメージと違って、残土がほとんど排出されずに処理されている状況に驚きました。

一方で、改めて家の中を見回すと、使用されているプラスチックの多さと、あっと言う間に溜まる使用済み食品容器包装の多さが目につきます。これらの廃プラスチック類は資源ごみとして回収されて行きますが、海洋に流出した廃プラスチックが海洋生物に与える影響、さらにはマイクロプラスチック化した微粒子の生体に対する悪影響も懸念され始めています。このような状況において、廃プラスチックはどのようにリサイクルされているのかが知りたくなり、2022年に制定された「プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律」などの資料から、その行方を追ってみました。

2.　我国におけるプラスチックの生産量・消費量・排出量（出典；プラスチックリサイクルの基礎知識 (プラスチック循環利用協会、2024年度版)

生産量

生産量は1990年代に1,400万～1,500万トン/年で推移していましたが、2009年頃から減少傾向で、現在は1,000万トン弱/年まで減少しています。

消費量

国内消費量は1990年代に1,000万～1,200万トン/年で推移していましたが、生産量同様2009年頃から減少し、現在は900万トン/年まで減少しています。

排出量

排出量は産業用と一般用合わせて、1990年代に約1,000万トン/年だったものが現在は約800万トン/年まで減少しています。産業用と一般用の比率はほぼ同じで推移しています。

海洋プラスチック流出量

年間約2万～6万トンと推定（推計値には幅があり、不確実性も考慮する必要があります）。世界全体では年間約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出していると報告されています。海洋に漂うプラスチックごみの総量は、約1億5000万トンと推計されています。使い捨てプラスチックが海洋ごみの大きな割合を占めています。

3.　廃プラスチックの総排出量・有効利用量・有効利用率の推移

我国における廃プラスチックのリサイクルは主に以下３つの方法で行われています。

マテリアルリサイクル

廃プラスチックを原料に戻して、新しい製品に再利用する（比率は22%）。

ケミカルリサイクル

廃プラスチックを分解して、化学物質を回収し、新しい製品の原料に利用する（比率は３%）。

サーマルリサイクル

廃プラスチックを焼却し、発生した熱を回収し、発電や暖房などに利用する（比率は64%）。

廃プラスチックの総排出量と上記（1）～（3）の有効利用量の推移は、表1のとおりです。マテリアルリサイクル量、ケミカルリサイクル量の絶対量は横ばい、サーマルリサイクル量は増加。廃プラ総排出量は減少傾向にあるため、廃プラの有効利用率は2005年の58%から87%まで増加してきている状況です。

表１　廃プラスチックの総排出量、有効利用量 (単位：万トン/年)　、有効利用率(%)
（出典：プラスチックリサイクルの基礎知識、プラスチック循環利用協会、2024年度版)

年		2005	2010	2015	2020	2022
廃プラ総排出量		1006	945	879	822	823
有効利用量	マテリアルリサイクル量	185	217	173	173	180
	ケミカルリサイクル量	29	42	30	27	28
	サーマルリサイクル量	369	465	498	509	510
	合計	582	723	498	509	510
有効利用率（%）		58	77	80	87	87

廃プラスチックは図１に示すように、単純焼却（比率7%）または埋め立て（比率4%）の他は、上記３つのリサイクル法で処理され、そのリサイクル率は85%に達しています。

図１廃プラスチックの処理比率（出典：種々資料より筆者が推計してグラフ化）

4.　プラスチックの種類と用途

プラスチックの種類はたくさんありますが、用途に応じて使い分けられています。例えば、ポリエチレン（PE）はレジ袋やラップフィルム、ポリプロピレン（PP）は食品容器や自動車部品、ポリ塩化ビニル（PVC）は配管材や床材、ポリスチレン（PS）は発泡スチロールに加工され、食品トレイなどのほか、梱包における緩衝材や保温材などに利用されています。これらのプラスチックは、それぞれの特性を活かして、日常生活から産業まで、幅広い分野で活躍しています（表2、図2）。

表2　主なプラスチックと主な用途
（種々資料より筆者が作成）

プラスチック分類名	生産量（万トン/年）		主な用途
プラスチック分類名	2010年	2022年
ポリエチレン (PE)	296.4	224	レジ袋、ラップフィルム、食品チューブ、農業用フィルム、電線被覆など.
ポリプロピレン (PP)	270.9	451	食品容器、自動車部品、医療機器、日用品など
ポリ塩化ビニル (PVC)	174.9	154	配管、床材、サッシなど
ポリスチレン (PS)	138.5	104	発泡スチロール、食品トレイ、カップ麺容器、自動車部品、照明カバーなど.
ポリエチレンテレフタレート（PET)	63.1	154	ペットボトル、衣類、食品包装など
その他ポリカーボネート（PC）など熱可塑性樹脂	157.2	154	メガネレンズ、CDケース、スマホケースなど
フェノール樹脂	100.5	83	自動車部品、住宅の断熱材など
エポキシ樹脂	100.5	83	接着剤、自動車や船舶の塗料、コーティング剤など
＜合計＞	1224.2	951

筆者注）これらのプラスチックは、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類される場合もあります。熱可塑性樹脂は加熱すると軟化し、冷却すると硬化する性質を持ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが含まれます。熱硬化性樹脂は加熱すると硬化し、一度硬化した状態では加熱しても軟化しない性質を持ち、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが含まれます。

図2　生鮮食品などの包装容器類（筆者撮影）

5.　我が国のプラスチックのリサイクルの問題点

プラスチックは、軽量で耐久性があり、加工しやすいという特徴から、古くから様々な分野で多用されてきました。短期間に使い捨てられるプラスチックとして、レジ袋、食品包装、ペットボトル、ストロー、カトラリー、シャンプーや洗剤などの容器、歯ブラシ、ハンガー、製品運搬のための緩衝材など様々なものがありますが、石油資源の無駄使いや海洋汚染などの問題も顕在化してきたことから、レジ袋を始めとする使い捨てプラスチックの削減が進みつつあります。しかし、プラスチックの廃棄、回収における問題点は多くあります。

まず、廃プラスチックのリサイクルにおける主な問題点は、リサイクルコストの高さ、分別・処理の難しさ、リサイクル率の低さ、そして海洋汚染などが挙げられます。

リサイクルコストの高さ

プラスチックのリサイクルは、新品の製造よりもコストがかかる場合があります。これは、廃プラスチックを元の原料に戻すための洗浄や分別、処理に手間と費用がかかるためです。特にケミカルリサイクルでは、大規模な設備投資が必要で、コスト競争力が課題となります。

分別・処理の難しさ

プラスチックの種類は多岐にわたり、素材の選別や汚れの除去が難しいため、リサイクル効率が低下する要因となっています。複合素材や異物混入があると、リサイクルが困難になる場合もあります。

リサイクル率の低さ

我が国では、廃プラスチックの多くがサーマルリサイクル（焼却による熱エネルギー回収）で処理されており、マテリアルリサイクル（再生利用）の割合が低いのが現状です。国際的な定義では焼却による熱回収である「サーマルリサイクル」はCO2を排出するため、リサイクルとは認められず、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの比率を増やす必要があります。

海洋汚染問題

不適切な処理や管理によって、プラスチックごみが海に流出し、海洋汚染を引き起こしています。マイクロプラスチックによる生態系や人体への影響も懸念されています。

その他の問題

プラスチックの製造には石油などの化石資源が使われており、資源の枯渇や温室効果ガスの排出につながるという問題もあります。国内のリサイクル処理能力が不足しているため、廃プラスチックの輸出に頼ってきた側面もありますが、輸出規制により国内での処理が求められています。

表3　主なプラスチックと主な用途各国・地域の廃プラスチック処理の特徴

地域	主な処理法	政策の特徴	リサイクル率・特徴
EU	メカニカル・ケミカルリサイクルを重視	循環経済行動計画使い捨てプラ禁止包装材の再利用義務	リサイクル率は約40%前後埋立ては段階的廃止へ
アメリカ	埋立て・焼却が主流、州ごとに差	連邦レベルでは統一規制なし州ごとにEPR（拡大生産者責任）やPCR（コンシューマープライスリバース：消費者が製品を購入する際に、将来の廃棄物処理費用の一部を前払いする制度）義務化	リサイクル率は10%未満（2020年時点）ポイ捨て・不法投棄が深刻
中国	国内回収＋マテリアルリサイクル	廃プラ輸入全面禁止（2017年）第14次五カ年計画で回収強化	回収率は30%以上埋立・焼却も依然多い
日本	サーマルリサイクルが中心	容リ法・資源循環促進法プラ新法（2022年）で設計段階から規制	有効利用率は約85%だが、そのうち約60%が熱回収

6.　これからのプラスチック利用

今後のプラスチック資源循環施策のあり方について、政府は「プラスチック資源循環戦略」に基づき、2030年までに100%リサイクル可能な状態を目指し、リユース、リサイクル、回収可能な状態にする目標を掲げています。また、2022年4月には「プラスチック資源循環促進法」が施行され、プラスチック使用製品の設計から廃棄まで、資源循環を促進するための措置が講じられています。

※以下環境省の今後のプラスチック資源循環施策のあり方について　（環境省、2021年）より抜粋

環境配慮設計

プラスチック製容器包装・製品の製造事業者やブランドオーナー（設計決定者）が取り組むことが求められる環境配慮設計の基本的事項を整理した指針を示し、事業者による環境配慮設計やそのための業界単位での設計の標準化などを促す。

ワンウェイの容器包装・製品の設計決定者が取り組むべき環境配慮設計の基本的な事項を整理した指針を示す

小売・サービス事業者等に対してワンウェイの容器包装・製品について、使用の合理化を図るため、消費者の意思確認の徹底や代替素材への転換など事業者が取り組むべき措置を示し取組を求め、消費者の行動変容を促す。

家庭からのプラスチック資源の回収・リサイクル

＜市町村による分別回収＞

「容器包装と製品」を「容器包装リサイクルルート」を活用してまとめてリサイクルできるよう措置
プロセス全体でコストが低減し、リサイクルに支障がない場合には、選別工程を一体的に運用が行えるよう合理化のための措置。
分別努力に応じた市町村に対するインセンティブ等を通じて、分別収集体制を全国的に整備。

＜事業者による自主回収＞
事業者が自ら製造・販売した容器包装・製品に加え同種のものも含めたプラスチック資源を円滑に自主回収・リサイクルすることを可能とする措置事業者が実施する回収量向上策を支援。

再生素材やバイオプラスチックなど代替素材の利用促進

再生素材について、政府率先調達等による需要喚起、業界における認証整備等の支援等・バイオプラスチックについて、導入ロードマップを策定し、これに基づく施策を展開。

事業者からのプラスチック資源の回収・リサイクル

排出事業者に対し、プラスチック資源の排出抑制や分別・リサイクルの徹底、体制整備、情報発信等、取り組むべき措置を示し取組を求める。
排出事業者がリサイクル事業者と連携し、自らが分別・排出するプラスチック資源を円滑に高度リサイクルすることを可能とする措置。
事業者（例えば小規模店舗等）から排出されるプラスチック資源を市町村が回収する場合には、家庭から排出されたものとまとめてリサイクルできる環境を整備等。

効率的な回収・リサイクル基盤整備

プラスチック資源の性状に応じた最適な手法の選択が可能となるよう技術開発と社会実装に向けたインフラ整備を支援。
リチウムイオン電池等のプラスチック資源への異物混入対策等。

7.　まとめ

日本の廃クラスチックのリサイクルの特徴と課題

強み

分別回収制度が全国に普及し、有効回収率は87%に達している。

課題

サーマルリサイクル（焼却＋熱回収）依存が63%と高く、国際的には「リサイクル」と見なされない場合もある。焼却によるCO2排出⇒廃プラスチック重量当たりのCO2排出量の低減。

マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの比率が低い。
資源輸出と称する廃プラスチックの輸出依存からの脱却が求められる（中国・東南アジアの輸入規制以降）

他国に学ぶべき視点

製品設計段階からの規制（エコデザイン）、再生材使用義務、PFASやマイクロプラ規制など包括的）

アメリカ（州単位）

企業連携による革新的技術（例：プラを燃料や建材に変換など）

中国

輸入禁止を契機に国内処理インフラを急速整備

ケニヤ

厳罰化による行動変容（罰金最大400万円＋懲役）

プラスチックは、軽量で耐久性があり、加工しやすいという特徴から、古くから様々な分野で多用されてきたが、安易に多用されてきた結果、焼却によるCO2の発生、海洋への流出とマイクロプラスチックの問題などが懸念され始めており、短期間の使用で捨てられる用途（使い捨て）には、設計段階において極力使用しない方向で努力することが求められる時代に入ったと思われる。

引用・参考資料

「プラスチック資源循環戦略」について　（環境省、1989年5月）
プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律　（環境省、2022年11月）
プラスチックを取り巻く国内外の状況＜参考資料集＞　（環境省、1990年11月20日）
今後のプラスチック資源循環施策のあり方について　（環境省、2021年）
資源有効利用促進法　（経済産業省）
資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律について　（環境省）
【2024年度版】廃プラスチック回収・リサイクルの現状　（リバー株式会社、2023年3月15日）
プラスチックリサイクルの基礎知識　（プラスチック循環利用協会、2024年度版）
2023年廃プラスチック総排出量は769万t、有効利用率は89% ｢プラスチック製品の生産･廃棄･再資源化･処理処分の状況(マテリアルフロー図)｣を公表　（プラスチック循環利用協会、2024年12月23日)
欧州委の研究機関、廃プラ処理は焼却よりリサイクルを推奨する報告書発表　（JETRO、2023年3月）
EUの政策概要　（環境省）
アメリカの脱プラスチックへの取り組みと対策/プラスティック大国・アメリカ　実情と対策例　（せかいじゅう/シェルトン株式会社、2021年11月22日）
米国リサイクルプラスチック最新政策まとめ：リサイクル含有率と罰金の連動、プラスチック企業は十分な留意が必要無題ドキュメント　（REACH24H、中国）
製造大国・中国の「プラスチックリサイクル」事情 part1ー中国リサイクル市場の概要ー　（PlaPlat/長瀬産業株式会社、 2023年3月3日）
中国のプラスチック資源利用状況およびプラスチック汚染対策　（サーキュラーエコノミー/株式会社ブライトイノベーション、2021年12月24日）

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