第33次REACH規則SVHC候補物質が追加　#29

～SVHC候補物質として3物質が追加され250物質に～

2025年7月14日

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1.　はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は2025年6月25日付けで「新規3物質の追加」のため、“Candidate List of substances of very high concern for Authorisation”（高い懸念のある認可対象候補物質「SVHC候補物質」のリスト）を更新しました。これにより、2025年6月25日現在、SVHC候補物質は250物質（群）となりました。

2.　第33次REACH規則の新規追加SVHC候補物質

2025年6月16日、ECHAの加盟国委員会（MSC）は6月の会合で、新たに2つの高懸念物質（SVHC）を特定することに合意しました。
さらに、1つの物質が委員会の関与なしに6月に候補リストに追加されました。

＜今回追加された3物質＞

1	物質名	英名	Tetra(sodium/potassium)-7-[(E)-{2- acetamido-4-[(E)-(4-{[4-chlor-6-({2-[(4-f luor-6-{[4-(vinylsulf onyl)phenyl]amino}- 1,3,5-triazin-2-yl)amino]propyl}amino)-1,3,5- triazin-2-yl]amino}-5-sulf onato-1-naphthyl)diazenyl]-5- methoxyphenyl}diazenyl] -1,3,6-naphthalin
		和名	テトラ(ナトリウム/カリウム) 7-[(E)-{2-アセトアミド-4-[(E)-(4-{[4-クロロ-6-({2-[(4-フルオロ-6-{[4-(ビニルスルホニル)フェニル]アミノ}-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]プロピル}アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ}-5-スルホネート-1-ナフチル)ジアゼニル]-5-メトキシフェニル}ジアゼニル]-1,3,6-ナフタレントリスルホネート; Reactive Brown 51
	CAS RN		なし　（EC番号：466-490-7）
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		生殖毒性（第57条c）
	主な用途など		繊維処理製品および染料として（床材、家具、玩具、建材、カーテン、履物、皮革製品、紙および段ボール製品、電子機器などに使用）出典：ECHA
	備　考		情報なし
2	物質名	英名	Decamethyltetrasiloxane (L4)
		和名	デカメチルテトラシロキサン(L4)
	CAS RN		141-62-8　（EC番号：205-491-7）
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		vPvB (第57条e)
	主な用途など		化粧品およびパーソナルケア製品、洗濯および洗浄製品、香水および香料など。出典：ECHA シリコンオイル（消泡剤），化粧品配合剤、潤滑油、グリース出典：NITE、他
	備　考		（1）化審法：既存化学物質（2）米国TSCAインベントリ収載物質、Flagなし（3）韓国：化評法( K-REACH)：既存化学物質（4）台湾：TCCSCA/OSHA：既存化学物質出典：NITE
3	物質名	英名	1,1,1,3,5,5,5-heptamethyl-3-[(trimethylsilyl)oxy]trisiloxane (M3T)
		和名	1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]トリシロキサン(M3T)
	CAS RN		17928-28-8 (EC番号：241-867-7)
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		vPvB（第57条e）
	主な用途など		化粧品およびパーソナルケア製品、香水および香料など <屋内での使用例> 洗濯機用洗浄液／洗剤、自動車用ケア製品、塗料およびコーティング剤または接着剤、香料および芳香剤 <屋外での使用> 塗料およびコーティング剤または接着剤の結合剤）出典：ECHA
	備　考		（1）化審法：既存化学物質（2）米国TSCAインベントリ収載物質、Flagなし（3）韓国：化評法( K-REACH)：既存化学物質（4）台湾：TCCSCA/OSHA：既存化学物質出典：NITE

＜解説＞

（1）No.2のデカメチルテトラシロキサン(L4)とNo.3の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]トリシロキサン(M3T)は異性体です。
（2）過去にD4、D5、D6のような環状シロキサンがSVHC候補としてあげられて来ましたが、今回の様に直鎖や分岐鎖のシロキサンもSVHCの候補に挙げられるようになって来ました。
（3）No.2、No3の物質共にシリコンオイルで有り、潤滑剤やグリースの他、接着剤、塗料、コーティング剤などに添加されることが有るので注意が必要です。
（4）No.1の物質は主に繊維処理製品および染料として建築資材に使用されていますが、一部電子機器などにも使用されている模様です。

＜参考＞

（1）シロキサン（siloxane）とは、ケイ素（Si）と酸素（O）が交互に結合した構造を持つ有機ケイ素化合物の総称で、一般に以下のような構造をしています：
–[Si–O]n–
（2）この「Si–O」骨格に、メチル基（–CH₃）などの有機基が結合しており、揮発性・撥水性・柔軟性などの特性を持つため、さまざまな用途で使われています。
（3）シロキサンは便利な化学物質ですが、既にD4、D5、D6など環状シロキサンについてPBT性（難分解性・生物蓄積性・毒性）、vPvB性（非常に難分解性かつ非常に高い生物蓄積性）、水生環境や大気中への放出リスクなどが有るとされ、SVHC候補物質となっていますが、今回追加された2物質は直鎖構造を有するシロキサンです。
（4）特に化粧品などに添加されているシロキサンは下水処理を行っても環境中に残留することが問題視されています。

3.　まとめ

（1）ECHAは2025年6月25日付けで“Candidate List of substances of very high concern for Authorisation”（高い懸念のある認可対象候補物質「SVHC候補物質」のリスト）を更新し、新規に3物質を追加した。
（2）これにより、SVHC候補物質は250物質になった。
（3）今回追加された３物質のうちNo.1の物質は一部電子機器に使用されているが、主には繊維処理製品および染料として建築資材に使用されている。
（4）No.2及びNo.3の物質は異性体であるシリコンオイル。用途は一部化粧品などに使用されているが、工業用の潤滑油やグリースとして使用される他、接着剤、コーティング剤、塗料などの添加剤としても使用される。
（5）過去、D4、D5、D6のような環状シロキサンがSVHC候補物質として挙げられているが今回のNo.2及びNo.3の様な直鎖や分岐鎖のシロキサンもSVHC候補物質として挙げられるようになって来た。
（6）シリコンオイルやシリコングリスを使用する場合は注意が必要。

引用・参考資料

Candidate List of substances of very high concern for Authorisation　（ECHA, 2025/6/25）
New proposals to identify substances of very high concern　（ECHA weekly, 2025/3/5）

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