第32次REACH規則SVHC候補物質が追加　#28

～SVHC候補物質として5物質が追加され24７物質に～

2025年2月13日

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1.　はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は、2024年11月7日付けで「1物質の更新」と2025年1月21日付けで「新規5物質の追加」のため、“Candidate List of substances of very high concern for Authorisation”（高い懸念のある認可対象候補物質「SVHC候補物質」のリスト）を更新しました。これにより、2025年1月21日現在、SVHC候補物質は247物質（群）となりました。

2.　第32次REACH規則の新規追加SVHC候補物質

今回追加された5物質は下表のとおりです。

１	物質名	英名	reaction mass of: triphenylthiophosphate and tertiary butylated phenyl derivatives
		和名	トリフェニルチオホスフェートと第三級ブチル化フェニル誘導体の反応質量
	CAS RN		192268-65-8
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		PBT物質（第 57条(d)）難分解性、高蓄積性、毒性を有する
	主な用途など		出典：種々金属加工油剤、油圧作動油、潤滑油、グリースなど
	備　考		（1）TSCA（米国有害物質規制法）：インベントリ収載物質、Flg：PMN、active 出典：NITE-CHRIP（製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）
2	物質名	英名	Perfluamine
		和名	パーフルアミン別名：トリス（ペルフルオロプロピル）アミン
	CAS RN		338-83-0
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		vPvB（第57条(e)）発がん性や変異原性、生殖毒性などの深刻な危険有害性の可能性を持つ物質
	主な用途など		ECHAに登録情報なし電気、電子、光学機器、機械、車両の製造に使用。冷蔵庫の冷却液、油性電気ヒーター加工助剤
	備　考		(1)　化審法：新規公示化学物質（2011年3月31日以前届出） (2)　安衛法：新規名称公表化学物質 (3)　TSCA（米国有害物質規制法）：インベントリ収載物質、flagなし,Active 出典：NITE-CHRIP（独法　製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）
3	物質名	英名	Octamethyltrisiloxane
		和名	1,1,1,3,3,5,5,5－オクタメチルトリシロキサン
	CAS RN		107-51-7
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		vPvB（第57条(e)）発がん性や変異原性、生殖毒性などの深刻な危険有害性の可能性を持つ物質
	主な用途など		化粧品およびパーソナルケア製品、洗濯・洗浄剤。(ECHA) 化粧品配合原料（髪・肌の保護，保湿効果）(NITE)
	備　考		（1）化審法：既存化学物質（2）TSCA（米国有害物質規制法）：インベントリ収載物質, Active 出典：NITE-CHRIP（独法　製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）
4	物質名	英名	O,O,O-triphenyl phosphorothioate
		和名	トリフェニルホスホロチオエート
	CAS RN		597-82-0
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		PBT物質（第 57条(d)）難分解性、高蓄積性、毒性を有する
	主な用途など		潤滑油、グリース, （冷蔵庫の冷却液、油性電気ヒーター、自動車サスペンションの油圧液、モーターオイルやブレーキ液の潤滑油などに添加の可能性）、ECHA
	備　考		（1）化審法：既存化学物質（2）TSCA（米国有害物質規制法）：インベントリ収載物質, Active 出典：NITE-CHRIP（独法　製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）
5	物質名	英名	6-[(C10-C13)-alkyl-(branched, unsaturated)-2,5-dioxopyrrolidin-1-yl]hexanoic acid
		和名	6-［（C10-C13）-アルキル-（分枝不飽和）-2，5-ジオキソピロリジン-1-イル］ヘキサン酸
	CAS RN		2156592-54-8
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		生殖毒性（第57条(c)）
	主な用途など		油圧作動油、潤滑油、グリース、金属加工油
	備　考		情報なし出典：NITE-CHRIP（独法　製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）
＜今回更新された1物質＞更新理由は新たに内分泌かく乱物質であることが判明
6	物質名	英名	Triphenyl phosphate
		和名	トリフェニルホスフェート
	CAS RN		115-86-6
	構造式		出典：ECHA
	収載理由		内分泌かく乱作用（第57条(f)-環境）
	主な用途など		接着剤およびシーリング剤、コーティング製品、化粧品およびパーソナルケア製品、（塗料やコーティング剤、接着剤中の結合剤）、可塑剤、難燃剤など出典：ECHA、NITEなど
	備　考		（1）化審法：既存化学物質（2）化管法 (令和４年度分までの排出量等の把握や令和４年度末までのSDS提供の対象) 、(令和５年度分以降の排出量等の把握や令和５年度以降のSDS提供の対象) （3）安衛法：名称公表化学物質、新規名称公表化学物質、ラベル表示・SDS交付義務対象物質、化学物質による健康障害防止のための濃度の基準（濃度基準値設定物質）（4）水質汚濁防止法：対象物質（5）食品衛生法：食品用器具・容器包装の改正ポジティブリスト、規格基準告示別表第１第２表　添加剤（6）TSCA（米国有害物質規制法）：インベントリ収載物質、Flg：T; TP、active 出典：NITE-CHRIP（独法　製品評価技術基盤機構/化学物質総合情報提供システム）

3.　解説

（1）高懸念物質（SVHC）候補リストには現在、人や環境に害を及ぼす可能性のある化学物質247種類（群）が収載されています。企業はこれらの化学物質のリスクを管理し、顧客や消費者に安全使用に関する情報を提供する責任があります。
（2）新たに追加された2つの物質（オクタメチルトリシロキサンとパーフルアミン）は、非常に難分解性で生物蓄積性が高い。これらは洗濯・洗浄製品の製造や電気・電子・光学機器の製造に使用されています。
（3）また同時に追加された2つの物質には難分解性、生物蓄積性、毒性が有ります。O,O,O-トリフェニルホスホロチオエートは潤滑油やグリースに使用されます。O,O,O-トリフェニルホスホロチオエートは潤滑油やグリースに使用されています。トリフェニルチオホスフェートと第三級ブチル化フェニル誘導体の反応質量はREACHに登録されていませんが残念な代替を防ぐためにSVHCとして特定されました。
（4）6-[(C10-C13)-アルキル-(分岐、不飽和)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル]ヘキサン酸は生殖毒性があり、潤滑油、グリース、金属加工油に使用されています。
（5）今回更新されたトリス（4-ノニルフェニル、分岐および直鎖）ホスファイトは、環境に影響を与える内分泌かく乱特性を有し、ポリマー、接着剤、シーリング剤、コーティング剤に使用されています。この物質の項目は、その固有の特性と、4-ノニルフェノール、分岐および直鎖（4-NP）を0.1w/w以上含む場合の両方により、環境に対する内分泌かく乱物質であることを反映するために更新されました。

4.　SVHCへの収載要求リストからの撤回

SVHC候補物質リストに収載を求める申請を行った場合は“Registry of SVHC intentions until outcome”に収載され、審査を待ちますが、何らかの理由によって取り下げられる場合があります（2025年１月末現在、審査待ち物質は278物質）。
今回、2025年2月3日付けで審査書類提出予定だった以下の2物質の申請が取り下げられました。
・クロム酸バリウム（CAS 10294-40-3）
・1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン（CAS 1873-88-7）

5.　まとめ

（1）ECHAは定期収載分として2025年1月21日付けで5物質をSVHC候補物質リストに追加収載しました。また、これに先立ち2024年11月7日付で1物質に内分泌かく乱毒性が判明し、更新されました。
（2）これにより、2025年1月21日現在、SVHC候補物質は247物質（群）となりました。
（3）今回の新規5物質を用途で見ると、金属加工油、潤滑油、難燃剤、可塑剤などの油剤や添加物が多いので、上流の購入先に確認しておくことが必要と思われます。

引用・参考資料

Candidate List of substances of very high concern for Authorisation　（ECHA）
新規に高懸念物質（SVHC）として6物質が提案～2024年10月14日まで意見募集～　（日本バルブ工業会、2024年9月12日）

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