COP29気象変動枠組み条約第29回会議

～現状とCOP29で決まったこと～

2024年12月12日

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1.　はじめに

COP29（第29回国連の気候変動枠組み条約国会議）が予定を2日間延長し、2024年11月11日から11月24日まで14日間に渡り、アゼルバイジャンのバクーで開催されました。

今回は、リオデジャネイロで11月18日から19日までG20が開催されたため、米国のバイデン大統領、中国の習近平国家主席、日本の石破首相など主要国の首脳が不参加だったこと、及び、開催国が石油とガスの輸出を基盤としている独裁国であるアゼルバイジャンであることなどにより、2週間に渡るにもかかわらず、事前からあまり期待がもてない会議でしたが、何が決まったのでしょうか。

COP29開催前の2024年10月28日に国連気候変動枠組み条約事務局が発表した報告書によると、現在世界各国が提示しているCO2削減計画が100％達成されたとしても、2030年には2019年比で▲2.6％にしかならず、必要な水準から大きく乖離しているとのことです。

気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は、温室効果ガス排出量を2030年までに2019年比で43%削減する必要があり、2035年までに、世界の温室効果ガス純排出量を2019年比で60%削減する必要があると指摘しています。

そして、2024年の世界の平均気温は過去最高を更新することが確実になり、エルニーニョ現象も相まって、産業革命以前に比べパリ協定の目標の1.5℃を越えることがほぼ確実になったとしています。

実際に、日本を含む世界各地で1年分の雨量がわずか1日で降ることがあるなど、明らかに雨の降り方が大きく変化してきており、各国のCO2削減目標を野心的なものにしない限り、地球の気温は後戻りできない領域に足を踏み込みつつあると言えます。

2.　2024年現在の気候変動の現状

国連の広報センターはCOP29の開催前、2024年10月24日に「温室効果ガスの年間排出量が過去最高を記録する中で、気温の破滅的な上昇を防ぎ気候変動による最悪の影響を回避するためには、緊急行動を起こさなければならない」とし、国連環境計画（UNEP）が発表した新たな報告書では以下のように述べられています。

Emissions Gap Report 2024（国連環境計画）の報告書の概要

「気候への影響が世界的に強まる中、『排出ギャップ報告書 2024』では、各国が次回の自国決定貢献（NDC）で大幅に強い野心と行動を示さなければ、パリ協定の1.5°C目標は数年以内に達成できなくなると指摘しています。この報告書は、世界トップクラスの気候科学者を集めて温室効果ガス排出の将来的な傾向を検討し、地球温暖化の課題に対する潜在的な解決策を提示するシリーズの第15 版です。

報告書は、COP30に先立つ2025年初めに提出が予定されている次回のNDCで、各国がどの程度の温室効果ガス削減を約束し、実行しなければならないかを検討しています。1.5℃の目標達成に向けて軌道に乗るには、2030年までに42％、2035年までに57％の削減が必要です。
各国が共に温室効果ガスの年間排出量を全体で2030年までに42%、2035年までに57%削減することを約束し、それを迅速な行動で支えない限り、1.5℃の目標は数年以内に達成不可能になるでしょう。

これらの新しいNDCの野心を高め、ただちに実行を開始しなければ、今世紀中に世界は気温上昇2.6～3.1°Cに向かって、地球の未来が危機に瀕することになります。私たちは気候緊急事態の真っ只中にあり、行動を起こす機会は急速に閉ざされつつあります。これは、人々、地球、そして経済に壊滅的な影響を及ぼすでしょう」と危機感を強めています。

※各国が自主的に決定した貢献（NDC）は、排出量を削減するための措置や干ばつ、洪水、異常気象など気候変動による影響に適応するための措置を提示し、必要な資金を確保するものであり、5年ごとに計画が更新されます。計画の次回の更新は、ブラジルで開催される国連気候変動枠組条約第30回締約国会議（COP30）に先立って2025年前半に行われる予定です。

3.　2024年における世界の豪雨・洪水による気象災害

ここ数年、我が国においても線状降水帯や猛烈な台風によって短期間に猛烈な雨が降り続き、「百年に一度、数十年に一度級」の土砂災害や洪水などの災害が複数発生しており、昔と比べ明らかに雨の降り方が変化してきていると思えます。

これは海水温の上昇によって、大量の水蒸気が空に昇り、雨雲となって一挙に落ちてくるためと言われています。

表1　2024年における世界の記録的な豪雨災害例（種々資料より筆者が作成）

4.　COP29で何が決まったのか?

このような状況でCOP29（第29回気候変動枠組条約締約国会議）では何が議論され、何が採択されたのでしょう。

COP29は、アゼルバイジャンのバクーで開催されました。この会議では、気候変動対策に関する重要な決定がいくつか行われました。具体的には、以下のような内容が含まれています。

（1）温室効果ガス排出削減目標の強化
多くの国が2030年までに温室効果ガス排出を削減するための新しい目標を設定することとしました。しかし、各国からの具体的なCO2削減量の上積みはなく、次回COP30（ブラジルのベレンで開催）で国別貢献（NDC）が表明される予定となっています。
（2）再生可能エネルギーの普及促進
再生可能エネルギーの導入を加速させるための取り組みが決定されました。ただし、具立的な数値目標などは明示されず、方向性が示されただけと言えます。
（3）気候変動に対する財政支援
途上国への気候変動対策に対する財政支援が強化されました。COP29における最大の論点は「資金」に関するものであり、多くの時間は途上国がパリ協定を達成するための資金を先進国がどの程度提供するかに費やされたようです。途上国が先進国に対し、パリ協定を達成するために要求した資金額と提供する額に大きな乖離があり、調整が難航したようですが、「従来1000億US$／年だった提供資金を2035年までに少なくとも3倍の3000億US＄／年（日本円にして46兆円/年あまり）を途上国に対して支援する」などとする成果文書を採択し閉幕しました。

5.　まとめ

（1）COP29（第29回国連気候変動枠組み条約国会議）が予定を2日延長し、2024年11月11日から11月24日まで14日を費やし、アゼルバイジャンのバクーで開催された。
（2）今回のCOP29はG20の開催と会期が近く、アメリカのバイデン大統領、中国の習近平国家主席、日本の石破首相などが欠席したこと、開催国が石油やガスを主要な輸出産品とする独裁国家であることなどから、事前に会議の成り行きが心配されていた。
（3）事前に国連環境計画や国連気候変動枠組み条約事務局からは、「2024年の世界平均気温は過去最高を記録することが確実になった。現状の各国におけるCO2削減目標では2030年に2019年比で▲2.6％にしかならず、このままではパリ協定の1.5℃おろか2.0℃の達成も不可能であり、直ちに各国の削減目標を野心的なものにしない限り、地球は後戻りのできない破滅的な道へ足を踏み込みつつあり、残された時間は少ない」との警告があった。
（4）COP29では、CO2削減目標の上積みや再生可能エネルギーの利用促進などよりも、パリ協定達成に必要な資金について、先進国から途上国への援助金額の規模について議論のほとんどの時間が費やされ、従来の3倍となる3000億US$／年を2035年まで提供することで妥結した（途上国の要求額とはかなりの乖離が残った）。
（5）各国のCO2削減目標の上積みについては、2025年のブラジルでのCOP30にて行われる予定。
（6）事務局の危機感に対するCO2削減量の上積みや代替エネルギー源などの課題は次回以降に持ち越された。

引用・参考資料

国連の新たな気候変動報告書は、各国の気候計画が「必要な水準からかけ離れている」ことを示している　（国連気候変動枠組み条約事務局、2024年10月28日）
国連とメディア有志、 SNSムーブメント「何もしないともっと暑くなる」、本日スタート！　（国連広報センター、2024年8月1日）
「気候危機は正念場を迎えている」と国連の『排出ギャップ報告書2024』が警告（UN News 記事・日本語訳）　（国際連合広報センター、2024年11月8日）
UN Climate Change Conference Baku – November 2024　（国連気候変動枠組み条約事務局、2024年10月24日）
Emissions Gap Report 2024　（国連環境計画）
国連気候変動枠組条約第29回締約国会議（COP29）、京都議定書第19回締約国会合（CMP19）及びパリ協定第６回締約国会合（CMA6）が開催されました　（環境省、2024年11月25日）
国連気候変動枠組条約第29回締約国会議（COP29）結果概要　（環境省、2024年11月25日）
国連気候変動枠組条約第29回締約国会議（結果）　（外務省、2024年11月27日）

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