EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報　#4

～ECHAと欧州5ヶ国がPFAS規制の進捗状況を発表～

2024年12月12日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は2024年11月20日付けECHA newsにおいて「欧州における広範囲なPFAS（パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質）の規制プロセスの提案国であるデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が、協議の進捗状況を発表した」と報告しました。報告では、「5ヶ国の当局（申請書提出者）とECHAのリスクアセスメント委員会（RAC）および社会経済分析科学委員会（SEAC）は、2023年の協議中に第三者から寄せられた5600件を超える科学的・技術的コメントの検討を続けているが、提案当初には想定していなかった用途がいくつかあることがわかり、今後の検討課題になる」と述べられています。

これらの想定外の用途としては、たとえば「シーリング用途、テクニカルテキスタイル、印刷用途、医薬品の包装や賦形剤などの医療用途などであり、必要に応じて新しいセクターに分類すべき」とあげられています。

また、全面禁止や期限付き免除を伴う禁止以外の制限オプションも検討されています。代替オプションには、PFASの製造、上市、使用の継続を認める条件が含まれる可能性があります。この検討は、禁止が不釣り合いな社会経済的影響をもたらす可能性があることを示す証拠がある用途や分野に特に関連します。これらの代替オプションは、以下のような用途について検討されていますが、これに限定されるものではありません。

それらは、電池、燃料電池、電解槽などで、それぞれの代替オプションの比例性が評価され、全面禁止または時限的緩和を伴う禁止という当初の2つの制限オプションと比較されます。これらの最新情報はすべて、ECHAの提案に対する継続的な評価に反映されます。

今回は、当該報告の詳細を示した文書につて、要点を解説します。

2.　2024年11月20日ECHA発表のPFAS規制提案5ヶ国による報告

以下、Progress update on the per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) restriction process（ECHA, 2024-11-20）の内容の概要を示します。

（1）PFASに関する規制の取組の一般的な目的

2023年、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局は、EUにおけるPFASの広範囲な規制提案に関するREACH書類をECHAに提出しています。PFASは、EUでさまざまな用途に使用されている、主に人工的に合成された数千種類に及ぶ化学物質のグループです。

提案された規制の根拠は、PFAS とその分解生成物が他の人工的な化学物質よりも長期間、環境中に残留する可能性があるという事実です。

さらに懸念されるのは、動植物への蓄積、移動性、長距離輸送能（LRTP）、地球温暖化の可能性、（生態）毒性影響などです。EU全体でリスクは、製造段階、使用段階、廃棄段階における PFAS の環境への継続的な排出によって生じます。

この制限文書は、PFAS が現在すでに代替手段が実行可能であるか、または近い将来に実行可能になる場合は代替されるという原則に基づいて作成されています。同時に、適切な代替物質や技術が利用できない場合など、特定の状況では、PFAS の継続的な使用を許可する可能性を提供し、環境への排出を最小限に抑えることを保証します。

REACHに基づくすべての制限書類と同様に、PFAS書類には、代替手段の可能性とその実行可能性および監視可能性を考慮しながら、提案された制限オプションのリスク削減能力とリスクに対する比例性の評価が含まれています。

これらの要素は、ECHA のリスクアセスメント委員会（RAC）および社会経済分析科学委員会（SEAC）の評価における重要な考慮事項であり、欧州委員会に送付される最終的な統合意見に反映されます。

（2）現在何が行われているか？

一般的なプロセス
RACとSEACは、PFASに関するREACH制限書類の証拠に基づく科学的評価を実施しています。その目的は、委員会による徹底した科学的レビューと第三者からの意見提供の機会を確保しながら、透明性があり、独立した、商品質の意見をできるだけ早く提供することです。
制限文書の範囲が広いこと（14 以上のセクターで使用される1万種類を超える物質をカバー）を考慮して、委員会は評価においてセクターベースのアプローチを採用することを決定しました。

これにより、使用、リスク、および、それぞれの制限オプションの特異性とさまざまな性質に適切な注意を払うことができます。
現在までに、RACはPFASの有害性評価について暫定的な結論に達しています。さらに、RACとSEACは、消費者向け混合物およびその他消費者向け製品、化粧品、スキーワックス、金属メッキおよび金属製品の製造、石油および鉱業の5つの分野について暫定的な結論に達しています。これらは暫定的なものです。なぜなら、両委員会ですべての分野が議論されて初めて、提案全体にわたって最終的な結論が得られるからです。これらの結論は、ECHAから欧州委員会に送られる、RACとSEACの両方からの最終的な統合意見に文書化されます。

第三者との協議
2023年に行われた制限文書に関する6ヶ月間の協議中に、関心のある第三者から5600件を超える科学的および技術的なコメントが提出されました。これらのコメントには、PFASの危険性とリスク、EUおよび欧州経済領域（EEA）全体でのPFASの使用に関する広範な情報、代替品の可能性と適合性、提案された制限の社会経済的影響に関する情報が含まれており、詳細に検討および評価されています。

協議から得た情報は、書類提出者が背景文書の形でPFASに関する情報を段階的に更新し、改善するのに役立ちます。また、初期の制限書類でまだ具体的に指定されていなかった用途を特定し、必要に応じて既存のセクター評価に組み込んだり、追加のセクターを作成したりするのに役立ち、この追加情報は委員会による制限書類の評価に反映されます。

新たに特定された用途の例は次のとおりです。

シーリング用途：シール、パイプライニング、ガスケット、バルブ部品など、消費者向け、プロフェッショナル向け、産業向けの幅広い用途でふっ素ポリマーが使用されています。

テクニカルテキスタイル：PFASは、たとえば高性能膜、医療機器でカバーされていない医療用途、屋外用テクニカルテキスタイル（防水シートなど）などに使用されています。

印刷アプリケーション：印刷アプリケーション用の永久部品および消耗品。その他の医療用と（例：医薬品の包装および賦形剤）。

ふっ素ポリマーは、利害関係者の関心が高いPFASグループの⼀例であり、協議により、これらのポリマーの特定の用途に対する代替品の利用可能性、環境への排出を最小限に抑えるための技術的および組織的対策、および製造、上市、使用の禁止による潜在的な社会経済的影響について、さらなる洞察が得られました。意見形成プロセスのすべての関係者は、このグループに特別な注意を払っています。

（3）さらなる制限の選択肢の検討

書類提出者（提案5か国の当局）の意図は、PFASの排出を最小限に抑え、環境中のPFASのさらなる蓄積と、それに伴う人間と環境への曝露回避であることに留意することが重要です。初期のPFAS制限書類には、完全な禁止と、代替品がまだ利用できない場合に期間限定の例外を伴う禁止の2つの制限オプションが含まれています。書類提出者は、代替品が利用可能になったときに、グリーンエネルギーへの移行の達成など、用途の可能性を危険にさらすことなく、秩序ある代替プロセスを可能にするために、後者のオプションを提案しています。

2023年の協議で提示された追加情報により、適切な例外措置の必要性に加えて、禁止以外の制限オプションによって、ライフサイクル全体を通じてPFAS排出量を大幅に削減するという規制⽬的を達成できるかどうかも検討されることになります。この評価は、禁止の社会経済的影響が不均衡になる可能性が高いことを示す情報が提供された用途やセクターに特に関連しています（たとえば、技術的な代替が現時点では予見できないため）。また、特定の用途に対する制限提案の実用性を向上させるのにも役立ちます。

すでに提案されている2つの制限オプションと比較すると、いくつかの用途については禁止に代わる選択肢が提案される可能性があります。

これらは、禁止の代わりにPFASの継続的な製造、市場投入、または使用を許可するために満たすべき条件、または代替品が利用可能になるまでPFASの製造、市場投入、または使用のために満たさなければならない条件である可能性があります。

この評価は現在、バッテリー、燃料電池、電解装置などの特定の産業用途におけるPFASの使用について進行中です。同様の評価は、協議で情報が提示されていれば、医療機器や半導体などの他の分野についても実施されます。さらに、環境への排出を最小限に抑えるという提案の目的を守りながら、製造、耐用年数、耐用年数終了時のふっ素ポリマーなどの代替制限オプションの基礎となる可能性のある情報が協議で提出されています。

すべての検討事項は、RACとSEACによる精査の対象であり、その後、加盟国とともに欧州委員会による意思決定段階で精査されます。

（4）結論

意見策定作業は 2025 年中にさらに進展し、RACの意見とSEACの意見草案が作成されます。その後、SEAC の意見草案に関する協議が行われます。これにより、関心のあるすべての第三者が、SEACの最終意見で考慮される社会経済的側面に関する関連情報を提供する機会が提供されます。

PFAS制限に関するこれまでの進展は、RACとSEACからの統合意見の作成を支援することに注力しているECHAと書類提出者の共同の熱心な取り組みによって可能になりました。このプロセスのさらなる結果として、PFASの使用についてより多くのことが知られるようになり、すべての関係者が関連する懸念についてより認識するようになりました。

ECHAは、書類提出者と協⼒し、透明性があり、独立した、髙品質のRACおよびSEACの意見をできるだけ早く欧州委員会に提供することを目指しています。欧州委員会は、EU 加盟国と協議して最終的に制限を決定します。詳細情報と進捗状況は以下のリンクに掲載します。
https://echa.europa.eu/hot-topics/perfluoroalkyl-chemicals-pfas

3.　まとめ

（1）ECHA（欧州化学品庁）は2024年11月20日付けで「欧州におけるPFAS（パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質）の広範な規制プロセスの提案国であるデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が協議の進捗状況を発表した」と報告した。
（2）2023年に行われた制限文書に関する6ヶ月間の協議中に、関心のある第三者から5600件を超える科学的および技術的なコメントが提出された。これにより初期の提案では予想しなかった用途が多くあることがわかったので、新たなセクターを設定することを考えている。
（3）新たに次の用途が特定された。
シーリング用途：シール、パイプライニング、ガスケット、バルブ部品など、消費者向け、プロフェッショナル向け、産業向けの幅広い⽤途でふっ素ポリマーが使用されている。
テクニカルテキスタイル：PFAS は、例えば高性能膜、医療機器でカバーされていない医療用途、屋外用テクニカルテキスタイル（防水シートなど）などに使用されている。
印刷アプリケーション：印刷アプリケーション用の永久部品および消耗品。その他の医療⽤途（例：医薬品の包装および賦形剤）。
バッテリー、燃料電池、電解装置などの特定の産業用途
（4）ふっ素ポリマーは、利害関係者の関心が高いPFASグループの⼀例であり、協議により、これらのポリマーの特定の用途に対する代替品の利用可能性、環境への排出を最小限に抑えるための技術的および組織的対策、および製造、上市、使用の禁⽌による潜在的な社会経済的影響について、さらなる洞察が得られた。意見形成プロセスのすべての関係者は、このグループに特別な注意を払っている。
（5）初期のPFAS制限書類には、完全な禁止と、代替品がまだ利用できない場合に期間限定の例外を伴う禁止の 2つの制限オプションが選択肢であったが、これらは、禁止の代わりに PFASの継続的な製造、市場投入、または使用を許可するために満たすべき条件、または代替品が利用可能になるまでPFASの製造、市場投入、または使用のために満たさなければならない条件の検討が必要。

引用・参考資料

ECHA and five European countries issue progress update on PFAS restriction　（ECHA, 2024-11-20）
Progress update on the per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) restriction process　（ECHA, 2024-11-20）
Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)　（ECHA）

注意

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EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報 #4

～ECHAと欧州5ヶ国がPFAS規制の進捗状況を発表～

EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報　#4