EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報　#3

～2024年9月開催RAC及びSEAC開催概要～

2024年11月12日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

欧州化学品庁（ECHA）は2024年9月26日付けで、「9月に開催されたリスク評価委員会（RAC）と社会経済分析委員会（SEAC）において、石油・鉱業部門におけるPFASの規制案について暫定的な結論を出した」と発表しました。概要は以下のとおりです。

【ECHA発表内容の概要】

RACとSEACはパーフルオロおよびポリフルオロアルキル物質（PFAS）の規制に関するEU全体の提案から、以下のセクターについて協議した：

（1）石油と鉱業
（2）繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット
（3）食品接触材料と包装用途

石油・鉱業セクターの評価を暫定的に終了した。他の2つのセクター（繊維製品、椅子張り、皮革、衣料品、カーペット及び食品接触材料、包装材）については、次回の会合で議論を継続する。

RACについては今回の議事録が公開されていますので、以下にPFAS関連部分について紹介します。SEACについては、前回20024年6月分の議事録が公開されていますので、関連部分を紹介します。

2.　ハイライト

（1）RACは、廃棄物段階、例えば廃棄物処理と焼却からの排出に焦点を当て、異なるセクター間でのPFAS排出量の計算方法を改訂することに合意しました。改訂されたアプローチでは、PFAS粒子の排出（固体）と材料から溶出するものを区別する必要性が強調されています。フッ素樹脂粒子に関連する懸念は、非重合体PFASに関連する懸念とは異なるため、この区別は重要である。」とフッ素樹脂に関する懸念点を提示しました。
（2）次回以降の協議予定は、11月に建築関連製品、以降、フッ素ガス、輸送、エネルギー関連について協議。
（3）PFAS関連以外では、CLP規則、クロム酸塩の認可申請などが協議対象になった。

3.　9月のRAC議事概要（PFAS関連部分のみ）

9月RAC議事録（開催：2024年9月16日～20日）から、PFAS関連部分を抜粋します。

結論／合意／採択	会議終了後に要請された措置（誰がいつまでに）
9.2　制限事項　附属書XVの書類
9.2.1　ユニバーサル・パーフルオロアルキル物質（UPFAS）に関する意見書作成 a) 現状と次のステップ b) UPFAS 制限提案のセクター／用途別側面の評価： (1) 廃棄物排出（続き）、(2) 繊維・椅子張り・皮革・アパレル・カーペット（TULAC）、(3) 食品接触材料及び包装材、(4) 石油および鉱業
※議長及び出席者（省略）書類は2023年1月に提出され、PFASの製造、上市、使用を制限すること、すなわちユニバーサルPFAS（UPFAS）を提案している。PFASのすべての用途は、消火用発泡体におけるPFASの使用を除き、この制限提案の対象となる。廃棄物の段階と排出 CEWEP、ClientEarth、CONCAWE、EEB、EurEAU、PlasticsEurope、PREのオブザーバーとその随行専門家は、排出と暴露に関する多くの問題についてコメントした。書類提出者（DS）の代表は、排出に関する説明とコメントを提供した。テキスタイル、椅子張り、皮革、アパレル、カーペックス（TULAC） ClientEarth、EEB、EURATEX、ESFのオブザーバーと同行した専門家は、セクター固有の要素に関連する多くの問題についてコメントした。さらに、書類提出者（DS）の代表と欧州委員会のオブザーバーが、対象範囲の明確化と排出量に関するコメントを提供した。食品接触材料と包装 APPLiA、ClientEarth、CropLife Europe、EEB、FEC、PlasticsEuropeのオブザーバーと同行した専門家は、セクター固有の要素に関連する多くの問題についてコメントした。さらに、書類提出者（DS）の代表が、放出係数と適用除外に関する説明を行った。石油と鉱業 ClientEarth、Concawe、EEB、Eurometaux、IOGPのオブザーバーと同行した専門家は、セクター固有の要素に関連する多くの問題についてコメントした。さらに、書類提出者（DS）の代表者が追加的な説明を行った。
排出と暴露に関して、RACはRAC-69（第69回会議）以降、以下の更新があったことを指摘した。 RAC-69以降、次のようなアップデートがあった：フッ素樹脂の排出係数（前回続き）（1）フッ素樹脂は、そのライフサイクルにおいて、微粒子の排出、ポリマーから溶出する溶出物（例えば、ポリマーと化学的に結合していないPFASベースの加工助剤からなる）の排出、および焼却時に発生するPFAAs (Perfluoroalkyl Acids）とPFAA前駆体の排出につながる可能性がある。RACは、粒子と溶出物の排出を区別することが重要であると考えた。（2）なぜなら、フッ素樹脂（微小）粒子に関連する懸念は、非重合体PFASとは異なるからである。（3）RACは、フッ素樹脂の排出量を推定する場合、ポリマーの総重量ではなく、フッ素樹脂に含まれる非ポリマーの溶出物の量に放出係数を適用することに同意した。（4）RACは、フッ素樹脂に含まれる溶出物（非重合体PFAS）の保守的な推定値として1,000 ppmを使用することを提案した。（5）RACは、ふっ素樹脂の使用による粒子の排出は、多くの用途で発生する可能性が高いと認識した。しかし、多くの場合、これらの放出に定量的に対処することは不可能であろう。廃棄物処理場（埋立地）（1）埋め立ては、環境（水、地下水、土壌、大気）へのPFASの関連供給源とみなされる。（2）PFAAsとPFAA前駆体の場合、書類提出者は放出係数0.0336（水と土壌の両方の排出を考慮）を使用。RACは、この放出係数の使用に同意したが、マトリックスに含まれないPFAAおよびPFAA前駆体については、放出係数1がより適切であると指摘した。（3）高分子PFAS の場合、書類提出者は0.0016の放出係数を提案した。しかし、RAC は、ECHA ガイドラインR.18 に基づき、0.0336の放出係数を使用することを検討した。フッ素樹脂の具体的な場合、0.0336の放出係数は、材料中に推定される溶出性PFASの量（1,000 ppm）に対して適用されるべきである。（4）RACは、埋立地においても微粒子の放出が可能であることを認識しているが、これらの放出を定量化することは実行可能でないと考えている。焼却（1）RACは、1100℃以上での有害廃棄物焼却炉（例：ロータリーキルン）での焼却が、完全な無機化には至らないかもしれないが、PFAS破壊の最も効果的な方法であると合意した。（2）より低い温度での燃焼（例えば、一般的に1100℃未満の自治体焼却施設）及び／又は不十分な酸素供給は、より長鎖のPFAS（フルオロポリマーを含む）から短鎖の、より熱的に安定なPFASへの変換をもたらす可能性があり、従ってRACは効果的であるとは考えていない。（3）RACは、有害廃棄物の焼却に0.01の排出係数を適用することを提案した（消火用発泡体中のPFASに関する前回のRAC意見に沿ったもの）。（4）RACは、非有害廃棄物の焼却に0.02の排出係数を提案し、より高い排出係数を強調した。廃水処理（1）RACは、RAC-69の廃水処理効果に関する先の結果を確認した。（2）さらに、RAC は、フッ素樹脂粒子の放出に 0.5 の放出係数を使用することが適切であるかもしれないとの文書提出者の意見に同意した。しかし RAC は、排水に流入するフッ素樹脂粒子の量に関する情報は限られているため、書類提出者は粒子排出量の計算にこの放出係数を適用していないと指摘した。繊維、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC） <省略＞食品接触材料と包装に関連する懸案事項に関するRAC-66からの最新情報：＜省略＞石油と鉱業 RACは、石油と鉱業に関するセクター固有の要素、すなわち、量、排出量、リスクの特徴づけ、特定されたリスク削減の有効性に関する報告者の評価を支持した。代替案のリスクについては、潜在的な特定セクター／用途固有の適用除外と不確実性がある：（1）RACは、いくつかの代替化学物質は、消泡剤として使用する場合、PFASよりも危険性が低いと考えられる（より安全な代替物質）と結論づけた。（2）RACは、書類提出者がPFAS油・ガストレーサー用にリストアップした代替物質のほとんどは、重篤な危険性を有するため、PFASのより安全な代替物質とはみなされないと結論づけた。（3）しかしRACは、可能性のある代替物質（d13Cとd18O）はより危険性が低いかもしれないと指摘した（RACは、背景文書で利用可能なデータが不十分であると指摘した）。（4）代替案の中には十分なデータがなく、RACによる評価を妨げているものもある。これは、フッ素化ベンゾフェノールに当てはまる。（5）水トレーサーの代替案として提案されているが、難分解性である可能性がある。しかし RAC は、フッ素化ベンゾフェノールには難分解性の点で違いがあるかもしれないと指摘した。（6）石油/ガストレーサーに対する適用除外は、ほとんどの代替物質のハザードプロファイルを考慮し、RACによって支持されるが、PFASよりハザードの低い代替物質があるかもしれないと指摘した。（7）RACは、PFASの排出を確実に最小化するために、追加のRMMを要求することを提案した。注）RMMはRemote Monitoring and Managementの略であり、リモートでのIT環境監視や管理を行うソフトウェアを指します。リモートからエンドポイントやネットワーク機器を管理するソフトウェアは、主にMSPやIT管理者向けに提供されています。	RAC-71 2024年11月（予定） → 繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）（続き）； → 食品接触材料（FCM）および包装（継続）。 → 建設製品プレナリーに続く（予定） → フッ素系ガスの用途 → 輸送 → エネルギー各委員会の計画については、作業が進むにつれて発表される。この情報は、委員会の開催に合わせてお知らせします。

4.　6月のSEAC議事概要（PFAS関連部分のみ）

SEAC議事録はRAC議事録と比較して、議論の一般論に終始し、具体的な協議結果は示されていません。6月SEAC議事録からPFAS関連部分を抜粋します。

5）制限

ユニバーサル・パーフルオロアルキル物質（UPFAS）一般的アプローチ（続き）
金属メッキと金属製品の製造、SEAC-62 本会議での懸案事項（消費者混合物および雑多な消費者成形品、化粧品、スキーワックス）に焦点を当てた意見書案

＜議長、出席者、会議規約など省略＞

（1）事務局は、次回の本会議での討議に関する情報を提供した。現在の暫定計画では、2024年9月にSEACが繊維、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）、食品接触材料と包装、石油・鉱業に焦点を当てた意見書案を議論し、2024年12月にSEACがフッ素系ガスの用途、輸送、建設製品に焦点を当てた意見書案を議論する予定であることが説明された。委員会の計画に関する詳細情報は、作業が進むにつれて発表され、この情報は委員会の会合に合わせて通知される。次のステップの詳細については、以下も参照されたい。
https://echa.europa.eu/-/next-steps-for-pfas-restriction-proposal
（2）SEACはPFAS制限に関して、代替可能性と、コスト、便益、比例性に関連する結果に関する報告者の更新に集中して協議した。
（3）代替物の入手可能性、技術的・経済的実現可能性、コスト、便益、比例性、および用途別適用除外の正当化に関する報告者の暫定的結論を支持した。

※次回RAC会議予定は2024年11月25日～28日、SEACは2024年11月26～28日

5.　まとめ

（1）PFAS規制に関する協議が2024年9月にリスク評価委員会（RAC）と社会経済分析委員会（SEAC）に行われた。
（2）協議は用途分野ごとに行われており、今回は石油と鉱業、繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット及び食品接触材料と包装用途に関して行われ、石油と鉱業に関しては暫定的な結論を出したが、その他は次回に持ち越した。
（3）注目点は高分子PFASのライフサイクルにおいて、高分子PFASと化学的に結合していない加工助剤などの溶出物や、使用時及び廃棄段階での焼却などによって発生する可能性がある微粒子などに懸念があり、その定量化が困難だとしたが、係数の提案があった。
（4）次回は11月末に予定されており、今回の持ち越しテーマ及びフッ素系ガスの用途、輸送、建設製品に関する協議が予定されている。

引用・参考資料

Scientific evaluation of the proposal to restrict per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) – Current status　（ECHA, 2020/9）
Highlights from September RAC and SEAC meetings　（ECHA, 2024/9/26）
Minutes of the 70th Meeting of the Committee for Risk Assessment /RAC70　（ECHA, 2024/9/16-20）
ECHA Weekly　（ECA, 2024/10/2）
Minutes of the 63rd meeting of the Committee for Socio-economic Analysis　（ECHA, 2024/6/4-7）

注意

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