食品衛生法改正とバルブなど構成素材への影響

～ネガティブリスト制度からポジティブリスト制度へ～

2024年9月12日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

2018年6月13日に公布された改正食品衛生法に従い、食品用器具・容器包装に使用される材料は、2026年5月31日をもって「ネガティブリスト制度」が廃止され、2026年6月1日より「ポジティブリスト制度」に移行されます。

これは、食品製造ラインなどにおいて食品と直接接触する「バルブ、接手、管など」の構成部材にも影響を与えますので、概要についてお知らせします。

2.　ネガティブリスト制度とポジティブリスト制度

2-1.　改正の背景

従来、食品用器具・容器包装に使用される合成樹脂、紙、ゴム、金属、ガラスなどについては、「ネガティブリスト（使用不可な材料リスト）」により管理されてきました。しかし、新規の材料が次々に開発され使用されている状況においては、ネガティブリストに収載されていない材料であっても、有害な材質が存在する可能性があります。

諸外国では、このような状況を踏まえて、「ポジティブリスト（使用可能な材料リスト）」で管理する方式にシフトしており、我国においても、同様の制度を導入することとなりました。

2-2.　ポジティブリストの対象範囲

次の理由から、ポジティブリスト制度の対象となる材質は、まずは合成樹脂（熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂）とします。

（1）様々な器具及び容器包装に幅広く使用され公衆衛生に与える影響を考慮すべきこと。
※金属、紙、印刷インキ、接着剤等の合成樹脂以外の材質については、引き続き、必要性や優先度の検討を行うべき。
※器具・容器包装の食品に直接接触する部分に使用される合成樹脂は、その用途に関わらずポジティブリスト制度の対象とする。
※食品に接触しない部分に使用される合成樹脂であっても、その成分が食品に移行する場合はポジティブリスト制度の対象とする。
（2）欧米等の諸外国においてポジティブリスト制度の対象とされていること。
（3）事業者団体による自主管理の取組の実績があること。

図1　合成樹脂の分類（出典：厚生労働省）

※着色料は、最終製品に残存することを意図して用いられる物質であるため、合成樹脂のポジティブリスト制度の対象とする。
図2　ポジティブリスト制度で管理する物質（出典：厚生労働省）

図3　ポジティブリスト制度の対象物質（添加剤）について（出典：厚生労働省）

図4　我が国と欧米諸国の規制の比較（出典：厚生労働省）

3.　まとめ

（1）食品衛生法の改正により、食品に直接接触する食品用器具（製造工程などに使用される機材、例えば、バルブ、管、管接手など）に用いられる材料について、2026年6月１日より従来のネガティブリスト制度（使用してはならない材料リスト）を廃止し、ポジティブリスト制度（使用してよい材料リスト）に改正される。
（2）改正の目的は、新しい材料が種々開発されてきており、ネガティブリストに収載されていないが、有害な材料が存在する可能性があり、ポジティブリストで管理する方が合理的であり、欧米などと歩調を合わせる。
（3）今回の改正で、ポジティブリストの対象は合成樹脂（熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂）に限定し、金属、ガラス、紙、ゴムは対象としない。※別途検討する。
（4）最終的なポジティブリストは未だ変更の可能性があるが、ポジティブリスト案について（厚生労働省）に最終案が示されているので、参照されたい。

引用・参考資料

食品衛生法の改正について　（厚生労働省）
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について（2025年5月31日まで）　（厚生労働省）
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について（2025年6月1日以降）　（厚生労働省）
改正食品衛生法における器具・容器包装に関する政省令等の策定状況について　（厚生労働省）
ポジティブリスト制度の対象となる材質　（厚生労働省）
ポジティブリストで管理すべき物質の対象範囲について　（厚生労働省）
ポジティブリスト案について・The draft of the Positive List　（厚生労働省）
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度に対応した「健康食品事業者向け対応マニュアル」について　（一般社団法人健康食品産業協議会、2022年1月13日）
【コラム】食品容器に関するポジティブリストとは？内容について詳しく解説します　（SITO WARE、2021年10月1日）

注意

無断で本情報を二次使用すること及び転載することを禁じます。
本情報は不確実な情報が含まれる可能性がありますので、本情報を利用される場合は参考文献及び引用先の情報も合わせてご覧のうえ、自己の責任において判断をお願いします。
英文による引用・参考資料部分においては、英語の専門家でない筆者が仮和訳していますので、本情報を重要な場面で利用される場合は、引用先の原文を参考に自己責任にて判断願います。

前の記事へ