新規に高懸念物質（SVHC）として6物質が提案

～2024年10月14日まで意見募集～

2024年9月12日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は2024年9月4日付けのECHA Weeklyにおいて、新規に6種類の物質が高懸念物質（SVHC）として提案されたこと、及び、これに関する意見募集の締切が2024年10月14日であることを報じました。

通常、本コラムではSVHCと認定され候補リスト“Candidate List of substances of very high concern for Authorisation”に収載された時点で報告を行っていますが、今回提案された物質は潤滑油、グリース、離型剤、金属加工油、非金属表面処理、シーラント、接着剤など、当工業会会員の製品と関係の深そうな物質が複数あること、また、意見募集期間が迫っていることから、今回は提案段階でのお知らせと致します。

また、この機会に、これら新規にSVHC物質として提案された物質は、どのようなプロセスで審議・決定され、“Candidate List of substances of very high concern for Authorisation”に収載されるのかについても解説したいと思います。

2.　SVHC物質の決定プロセス

2-1.　提案と公開協議

（1）SVHCとして特定する物質の提案が行われます。この提案は、ECHAや加盟国の当局から行われます。
（2）提案された物質について、一般公開協議が行われ、関係者からの意見やコメントが募集されます。

2-2.　専門家委員会の検証

（1）公開協議で寄せられた意見やコメントを基に、ECHAの加盟国専門家委員会が検証を行います。
（2）意見やコメントがない場合、そのままSVHCとして決定され、Candidate List of substances of very high concern for Authorisationに収載されます。

2-3.　最終決定

（1）専門家委員会で全会一致となった場合、ECHAがウェブサイト上で公表します。
（2）全会一致とならない場合、欧州理事会および議会で検証が行われ、最終的に法令文書として公布されます。

SVHCに特定されると、届出要件やSDSへの記載要件、成形品の供給者に対する情報伝達要件など、様々な規制が適用されます。
※本規制はEUのREACH規則によるものですので、日本国内のみで製造、上市、使用する場合には制限を受けません。ただし、EU域内への輸出の可能性がある場合には、注意が必要です。

3.　今回提案の6物質に関する情報

物質名

英名

6-[(C10-C13)-alkyl-(branched, unsaturated)-2,5-dioxopyrrolidin-1-yl]hexanoic acid

和名

6-[(C10-C13)-アルキル-（分岐, 不飽和）-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル]ヘキサン酸

CAS RN

2156592-54-8

物質の詳細

ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

生殖毒性（第57条c）

主な用途など

潤滑油、グリース、離型剤、金属加工油、油圧作動油

備　考

製品評価技術基盤機構NITE 化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）には情報なし

物質名

英名

O,O,O-triphenyl phosphorothioate

和名

トリフェニルホスホロチオエート

CAS RN

597-82-0

物質の詳細

ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

PBT（第57条d）難分解性、高蓄積性、毒性

主な用途など

潤滑油やグリースに使用される。

備　考

出典：製品評価技術基盤機構NITE 化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）
化審法：既存化学物質
米国：有害物質規制法（TSCA）インベントリ収載（active、Flagなし）

物質名

英名

Octamethyltrisiloxane

和名

オクタメチルトリシロキサン

CAS RN

107-51-7

物質の詳細

ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

vPvB （第57条e）極めて難分解性で、極めて高蓄積性

主な用途など

化粧品原料（髪・肌の保護，保湿効果）、パーソナルケアおよびヘルスケア製品、医薬品、洗濯および洗浄製品、コーティングおよび非金属表面処理、シーラントおよび接着剤。

備　考

出典：製品評価技術基盤機構NITE 化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）
化審法：既存化学物質
米国：有害物質規制法（TSCA）インベントリ収載（active、Flagなし）
韓国：化評法（K-REACH）：既存化学物質
台湾：TCCSCA/OSHA：既存化学物質

物質名

英名

Perfluamine

和名

トリス（ペルフルオロプロピル）アミン

CAS RN

338-83-0

物質の詳細

（1）話題のPFASの一種
（2）ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

vPvB（第57条e）極めて難分解性で、極めて高蓄積性

主な用途など

電気、電子、光学機器、機械、車両の製造、人工血漿の主成分の1つ、作動媒体、絶縁液、熱伝達液、計器やメーターの防食絶縁、トランスミッション液、酸化防止潤滑剤、精密洗浄剤など

備　考

出典：製品評価技術基盤機構NITE 化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）
化審法：新規公示化学物質
安衛法：新規名称公表化学物質
米国：有害物質規制法（TSCA）インベントリ収載（active、Flagなし）
台湾：TCCSCA/OSHA：既存化学物質

物質名

英名

Reaction mass of: triphenylthiophosphate and tertiary butylated phenyl derivatives

和名

トリフェニルチオホスフェートとそのtert-ブチル化フェニル誘導体の反応生成物

CAS RN

192268-65-8

物質の詳細

（1）2,O,O,O-トリフェニルホスホロチオエート」のフェニル基をtert-ブチル化したもの
（2）構造式は5種類が示されている。
明瞭な構造式はhttps://www.chemical-substance.com/reach/svhc32kouho.html
（3）ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

PBT（第57条d）難分解性、高蓄積性、毒性

主な用途など

金属加工油剤、油圧作動油、潤滑油、グリース

備　考

出典：製品評価技術基盤機構NITE 化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）
米国：有害物質規制法（TSCA）：Active、Flag：PMN、
韓国：化評法（K-REACH）：既存化学物質
台湾：TCCSCA/OSHA：既存化学物質

物質名

英名

Tris(4-nonylphenyl, branched and linear) phosphite

和名

トリス（4-ノニルフェニル、分岐）ホスファイト

CAS RN

なし

物質の詳細

（1）構造式は異性体の1例
（2）ECHA資料

構造式

出典：ECHA

提案理由

内分泌かく乱作用（第57条f） – 環境

主な用途など

プラスチック添加用酸化防止剤、有機ゴム薬品（老化防止剤）、ポリマー、接着剤、シーリング剤、コーティング剤など

備　考

（1）本物質Tris(4-nonylphenyl, branched and linear) phosphite (TNPP) with ≥ 0.1% w/w of 4-nonylphenol, branched and linear (4-NP) の混合物は2019年7月にSVHCとしてCandidate Listに収載されている。
（2）製品評価技術基盤機構NITE化学物質総合情報提供システム（NITE-CHRIP）にはCAS RNがないため、情報なし

4.　まとめ

（1）ECHA（欧州化学品庁）は2024年9月4日付けのECHA Weeklyにおいて、新規に6種類の物質が高懸念物質（SVHC）として提案されたと報じた。
（2）これらの提案された物質について、一般公開協議が行われ、関係者からの意見やコメントが募集される。意見募集は2024年10月14日まで。
（3）公開協議で寄せられた意見やコメントを基に、ECHAの加盟国専門家委員会が検証を行う。意見やコメントがない場合、そのままSVHCとして決定され、候補リスト（Candidate List of substances of very high concern for Authorisation）に収載される。
（4）専門家委員会で全会一致となった場合、ECHAがウェブサイト上で公表される。全会一致とならない場合、欧州理事会および議会で検証が行われ、最終的に法令文書として公布される。
（5）SVHCに特定されると、届出要件やSDSへの記載要件、成形品の供給者に対する情報伝達要件など、様々な規制が適用される。
（6）今回提案された物質は潤滑油、グリース、離型剤、金属加工油、非金属表面処理、シーラントおよび接着剤など当工業会と関係のありそうな物質が複数あるため、現状使用の有無確認と審議結果の成り行きを見守る事が必要。

引用・参考資料

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