EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報　#2

～2024年6月にRAC及びSEAC会合が開催～

2024年7月10日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

ECHAは2024年6月19日付けECHA Weeklyにおいて、「予定どおりにRAC（リスクアセスメント委員会）およびSEAC（社会経済分析委員会）が開催され、EUにおけるパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質（PFAS）の規制提案によって影響を受ける可能性のある4分野について、暫定的な結論を下した。また、次の評価対象分野も発表された」と発表しました。

RACおよびSEACはPFAS規制関連だけではなく、非常に多くの事項について審議していますが、本コラムではPFASに関する審議事項だけに絞って記します。

以下、ECHAの資料を基に概要をお伝えします。

2.　6月のRACおよびSEAC会合のハイライト

（※以下、“Highlights from June RAC and SEAC meetings”より）

RAC（リスクアセスメント委員会）およびSEAC （社会経済分析委員会）は、EUにおけるパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質（PFAS）の規制提案によって影響を受ける可能性のある4分野について暫定的な結論を出した。また、次の評価対象セクターも発表された。

2024年6月13日 – 6月の会合で、RACとSEACは、EU全体のPFAS規制提案から以下のセクターについて暫定的な結論に達した。

1) 消費者用混合物、化粧品、スキーワックス（3月のプレナリーで議論済み）。
2) 金属メッキと金属製品の製造（6月に議論）。

さらにRACは、提案の範囲とPFASの危険性について暫定的な結論を出した。委員会によれば、PFASの最大の懸念はその残留性であり、これはPFASが非常に長い間環境中に残留する可能性があることを意味する。さらに、PFASの中には、環境と人間の健康にさらなる懸念をもたらすものもある。RACはまた、環境中での劣化の可能性に基づいて特定のPFASを制限の範囲から除外することは、十分に正当化されないと考えた。

RACとSEACの会合で合意された結論は、各委員会が規制案全体（すべての使用分野を含む）の評価を最終決定し、意見を採択するまでは暫定的なものである。これらの意見はその後、一般に公表される。

各委員会は、今後の会議で評価するセクターも発表した。9月には、以下の分野に焦点を当てる予定である：
1) 繊維、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）；
2) 食品接触材料と包装
3) 石油・鉱業

9月以降、次に議論されるセクターは以下の通り：
1) フッ素系ガスの用途；
2) 輸送
3) 建設製品である。

ECHAは、5つの国家当局による提案の更新を受け、意見書作成の進展に全力を尽くしている。意見はできるだけ早く欧州委員会に提出される予定である。

3.　両委員会の公開議事録

※RACは6月会合の議事録を公開していますが、SEACは2024年6月20日現在、3月までの議事録しか公開していないため、SEAC分は3月分の議事録を紹介します。

3-1.　RACの議事録（2024年6月会合）

タイトル：ユニバーサル・パーフルオロアルキル物質（UPFAS） – 今回は消費者混合物、化粧品、スキーワックスに焦点を当てた本会議での議論と意見書草案に関する概要
＜内容＞
参加者：議長、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの書類提出者代表、ステークホルダー、オブザーバー、および、業界団体CEWEP、COCIR、CONCAWE、CropLife Europe、EECA、EuChemS、EPEE、EuPC、EurEau、FIPRA、FEC、Orgalim、Plastics Recyclers Europeの各代表と、Cefic、CropLife Europe、Eurometaux、PlasticsEuropeの各代表など。
＜資料＞
提案書類は2023年1月に提出され、PFASの製造、上市、使用を制限すること、すなわちユニバーサルPFAS（UPFAS）を提案している。PFASのすべての用途がこの制限提案の対象となる。ただし、別途制限が決定している消火用発泡体におけるPFASを除くすべての用途がこの制限提案の対象となる。

結論/合意事項/採択

会議後に要請された措置（誰がいつまでに）

RACは、3月4日に開催された制限作業部会からの物質範囲、危険性、消費者混合物、化粧品、スキーワックスに関するセクター別要素に関する勧告を支持し、暫定的に同意しました。

RACはハザード評価についてさらに議論を重ね、暫定的に合意しました：

非重合体PFASは、ヒトに対して生物学的に利用可能になる可能性が高い。高分子PFASの毒性に関する証拠は限られている。
RACは、フッ素系ガスの地球温暖化係数に関する書類提出者の分析に同意した。
フルオロポリマーは難分解性であるが、一般に移動性や蓄積性はない。RACは、マイクロサイズやナノサイズのフッ素樹脂粒子が生物学的に利用可能になり、（環境）毒性学的影響をもたらす可能性があることを指摘した。しかし、これらの影響に関するデータは限られている。フッ素樹脂の製造と廃棄段階を中心に、フッ素樹脂の全ライフサイクルを考慮してリスクを評価する必要がある。
フッ素系ガスの（環境）毒性はさまざまだが、フッ素系ガス（またはその分解生成物）は非常に難分解性で、移動性が高く、長距離輸送の可能性がある。一部の例外を除き、地球温暖化係数も高い。フッ素系ガスの大気中分解は、世界のトリフルオロ酢酸（TFA）濃度の上昇に寄与している。

さらにRACは、報告者たちのリスクの特徴づけに対するアプローチを支持した：

PFASの非常に高い難分解性、環境中濃度の上昇、偏在性、および、さまざまなPFASの悪影響に関する入手可能な（限定的ではあるが）証拠を考慮し、RACは、環境への放出をもたらすPFASの使用は適切に管理されておらず、対処が必要な潜在的な健康または環境リスクをもたらすと結論づけた。
RACは、（PTFEのような）高分子量フッ素樹脂に関する主な懸念は、製造・加工段階と使用済みサイクルにおけるフッ素系ガスを含む非重合体PFASの排出であることに同意した。さらに、フッ素樹脂は環境中で微粒子やナノ粒子を形成する可能性がある。そのため、RACは、ライフサイクル全体を考慮して、そのリスクを評価する必要があると考えた。

報告者は、書類提出者から提供された情報を引き続き検討する。
報告者は、背景文書の更新において、提出者から提供された情報を引き続き検討し、適宜、意見書草案を更新する。

書類提出者が提出した情報を取り上げる報告者
提出者から提出された情報を、更新された背景文書で取り上げる。
RAC-68（および RAC-68 REST WG）での議論結果、および RAC 協議中に提出された RAC メンバーの書面コメントに基づく。
SECRは、以下の通り、さらなる協議を行うことを決定した：
2024年6月のRAC-69会議：

金属めっきと金属製品の製造。
ハザードと適用範囲（関連する場合）に関する追加議論
化粧品、消費者用混合物、スキーワックスに関する意見の更新。

2024年9月にRAC-70を開催：

繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）；
食品接触材料と包装
石油および鉱業

各委員会の計画に関する詳細は、作業が進むにつれて発表される。この情報は、委員会の会合に合わせてお知らせします。

3-2.　SEACの議事録（2004年3月分）

※SEACでは、RACに比べ、具体的な議論があまり進んでいないこと、6月分の議事録が未だ公開されていないことから、要点のみ記します。
＜一般的な制限事項＞
なし
＜意見展開＞
ユニバーサル・パーフルオロアルキル物質（UPFAS）- 消費者混合物、化粧品、スキーワックス、一般的アプローチに焦点を当てた次回総会での議論と意見書草案に関する概要
＜参加者＞
議長は、ドイツ、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンからの書類提出者の代表者、および欧州航空宇宙・安全保障・防衛産業協会（ASD）、CropLife Europe、欧州技術産業協会（Orgalim）、欧州電気自動車協会（AVERE）、欧州化学会（EuChemS）、欧州表面処理委員会（CETS）、欧州水道サービス協会連合（EurEau）、医療用画像、放射線治療、健康ICT、電気医療産業を代表する欧州貿易協会（COCIR）、欧州調理器具・カトラリー・家庭用品協会連合（FEC）、プラスチックリサイクル業者欧州協会（PRE）、RECHARGE からの臨時の利害関係者オブザーバーと、その随伴専門家、および通常の利害関係者オブザーバー（Cefic、EEB、PlasticsEurope、Eurometaux、MedTech Europe、ChemSec、ClientEarth）と、その随伴専門家を歓迎しました。彼女は参加者に、ステークホルダーのオブザーバーの役割と行動規範に基づく義務を思い出させ、各会議で取り上げられるトピックを考慮して、関心のあるステークホルダ・オブザーバーの登録がすべて受領された時点で各会議への参加が決定されると説明した。

事務局は次回の全体会議についての情報を提供した。2024年6月にSEACは金属メッキと金属製品の製造に焦点を当てた次の意見草案、および関連する場合には一般的なアプローチ、消費者向け混合物、化粧品、スキーワックスに関する意見草案の更新について議論する予定であると説明された。2024年9月にSEACは繊維、室内装飾品、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）、食品接触材料および包装、石油および鉱業に焦点を当てた意見草案について議論する予定である。委員会の計画に関する詳細は作業が進むにつれて発表され、この情報は委員会会議と併せて伝えられる。

RAC 報告者は、この書類に関する RAC-68 制限作業部会および RAC-68 全体会議で行われた議論を要約しました。SEAC 報告者は、制限提案の一般的な側面に関連する意見草案で導入された変更点を提示し、SEAC はそれについて議論しました。これには、例外が提案されていない場合の一般的な18ヶ月の移行期間、サイト固有の管理計画（提案された例外を利用するフルオロポリマーおよびパーフルオロポリエーテルの製造業者、輸入業者、および下流ユーザー向け）、提案された制限文言の第9項（他の関連するEU法との重複に関するもの）、および社会経済分析への一般的なアプローチ（コスト、利益、および比例性を評価するための一般的なアプローチを含む）が含まれます。

＜中略＞

報告者は、スキーワックス、化粧品、消費者向け混合物、その他の消費者向け製品に関するセクター固有の側面の評価を、別々の会議時間中に発表しました。SEACは、3つのセクターすべてについて、代替品の入手可能性、技術的および経済的実現可能性、コスト、利点、比例性に関して報告者が達した評価と暫定的な結論を支持しました。

＜中略＞

結論として、SEACは、消費者向け混合物、その他の消費者向け製品、化粧品、スキーワックスに関する一般的なアプローチとセクター固有の要素に関する報告者の評価を支持し、暫定的に同意しました。
議長は議論を締めくくり、報告者に、更新された背景文書で書類提出者から提出された情報、SEAC-62での議論の結果、およびSEAC協議中に提出されたSEACメンバーの書面によるコメントを意見草案で取り上げるよう要請しました。次のステップの詳細については、
https://echa.europa.eu/-/next-steps-for-pfas-restriction-proposal
をご覧ください。
ChemSec、Cefic、EEB、EurEau、Eurometaux、EUChemS、FEC、RECHARGE、PlasticsEurope の定期的および臨時の利害関係者オブザーバー代表と同行する専門家は、一般的な側面、代替案、コスト、利点についてコメントしました。

4.　まとめ

（1）ECHAは2024年6月19日付けで、ECHA Weeklyにおいて、6月開催のRACとSEACのハイライトを発表した。
（2）PFASの規制提案によって影響を受ける可能性のある4分野について暫定的な結論を下した。また、次の評価対象セクターも発表された。
（3）提案の範囲とPFASの危険性について暫定的な結論を出した。
（4）委員会によれば、PFASの最大の懸念はその残留性であり、これはPFASが非常に長い間環境中に残留する可能性があることを意味する。
（5）さらに、PFASの中には、環境と人間の健康にさらなる懸念をもたらすものもある。RACはまた、環境中での劣化の可能性に基づいて特定のPFASを制限の範囲から除外することは、十分に正当化されないと考えた。現状では、高分子PFASを含む全てのPFASを規制する基本的な考えは変わっていない。但し、「RACは、（PTFEのような）高分子量フッ素樹脂に関する主な懸念は、製造・加工段階と使用済みサイクルにおけるフッ素系ガスを含む非重合体PFASの排出であることに同意した。さらに、フッ素樹脂は環境中で微粒子やナノ粒子を形成する可能性がある。そのため、RACは、ライフサイクル全体を考慮して、そのリスクを評価する必要があると考えた。」と含みを残している。
（6）RACとSEACの会合で合意された結論は、各委員会が規制案全体（すべての使用分野を含む）の評価を最終決定し、意見を採択するまでは暫定的なものである。これらの意見はその後、一般に公表される。
（7）各委員会は、9月には、以下の分野に焦点を当てる予定である。
・繊維、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC）
・食品接触材料と包装
・石油・鉱業
（8）9月以降の予定は以下の通り
・フッ素系ガスの用途
・輸送
・建設製品
（9）ECHAは、5つの国家当局による提案の更新を受け、意見書作成の進展に全力を尽くしている。意見はできるだけ早く欧州委員会に提出される予定である。

引用・参考資料

ECHA Weekly　（ECHA、2024年6月19日）
Highlights from June RAC and SEAC meetings　（ECHA、2024/6）
Minutes of the 69th Meeting of the Committee for Risk Assessment　（RAC、2024/6）
Minutes of the 62nd meeting of the Committee for Socio-economic Analysis　（SEAC、2024/3）

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EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報 #2

～2024年6月にRAC及びSEAC会合が開催～

EUにおける広範囲PFAS規制に関する情報　#2