EUにおけるPFAS規制の今後の協議予定　#1

～2024年3月13日ECHAが今後の予定を発表～

2024年4月15日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

EUにおける広範囲なPFAS規制提案に対するパブリックコメントが2023年9月25日に締め切られましたが、最終的に50ヶ国から5,642件のパブリックコメントが寄せられたことを欧州化学品庁（ECHA）が発表しました。

国別では提案国の1つであるドイツが1,228件、次いでEU圏外の日本が924件、ベルギーが285件と上位を占めています。

これらのパブリックコメントを精査し適用除外に対する十分な証拠が示されているか否かが協議される予定ですが、ECHAは2024年3月13日付けで、今後の協議予定を発表しました。

そこで、今回はこの今後の予定をお知らせするとともに、過去にECHAが公表した資料などをもとに、現在ECHAが考えているPFAS規制に関する情報をまとめてみました。

2.　「PFAS規制案の次のステップ」を発表

2-1.　過去の主なマイルストーン（出典：ECHA、2024年3月13日）

証拠の募集（2020年5月～7月）：この期間中、欧州経済領域（EEA）におけるPFAS使用に関連するリスクを評価するため、関連情報と証拠が収集された。
第2回利害関係者協議（2021年7月～2021年10月）：ECHAは、提案されたPFAS規制に関するフィードバックと見識を収集するため、利害関係者と協議した。
提案書の提出（2023年1月13日）：EU加盟5カ国（デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン）は、EUの化学物質規制であるREACHの下での広範なPFAS規制の包括的提案を提出した。
協議の進捗状況（2024年3月13日）：協議中に寄せられた相当数のコメントを精査した結果、ECHAは現在、PFAS規制の次のステップを明確にしている。

2-2.　今後の予定

3月13日付でECHAは次のように今後の予定を発表しました。
＜ECHAの発表内容＞
ECHAは、欧州におけるパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質（PFAS）規制提案の評価における2つの科学委員会の進捗状況を概説する。

ECHAは、コンサルテーション中に寄せられた多数のコメントを精査した結果、EUの化学物質規制であるREACHの下でのPFAS規制提案の次のステップを明確にした。

ECHAのリスクアセスメント科学委員会（RAC）および社会経済分析科学委員会（SEAC）は、影響を受ける可能性のあるさまざまな分野に焦点を当てながら、コンサルテーションで寄せられたコメントとともに規制案を一括して評価する。

同時に、提案書を作成した5つの国家当局は、協議のコメントに対応するため、最初の報告書を更新している。この更新された報告書は委員会によって評価され、委員会の意見の基礎となる。

今後3回の委員会で議論される分野と要素は以下の通り。

2024年3月の委員会
消費者用混合物、化粧品、スキーワックス；
PFASの危険性（RACのみ）。
一般的アプローチ（SEACのみ）
2024年6月の委員会
金属メッキおよび金属製品の製造。
ハザードに関する追加議論（RACのみ）。
2024年9月の委員会
繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット（TULAC：テキスタイル、室内装飾品、レザー、アパレル、カーペット）；
食品接触材料と包装
石油と鉱業。
残りのセクターを評価するための委員会の計画や、次の手続きステップに関する詳細は作業の進捗に伴い発表される。また、この情報は、委員会の会合に合わせて通知される。
ECHAは、5ヶ国の国家当局による提案の更新を受け、意見書作成の進展に全力を尽くしている。ECHAは、透明性、独立性、高品質を確保しつつ、可能な限り最短の期間で最終意見を欧州委員会に提出する。

3.　EUのPFAS類規制案の概要

以下は、ECHAによる”The PFAS Restriction Proposal”, 2023-2-7からの情報です。

「PFAS類は自然界で難分解性物質であり数十年から数百年環境中に残留するため「永遠の化学物質」と呼ばれる。」
全てのPFASは、それ自体が難分解性であるか、もし分解されても他の難分解性PFASになる。これは、炭素元素とフッ素元素の結合力が極めて強いことに由来する。
＜難分解性であることによる懸念される悪影響＞

生体内濃縮
移動性
長距離輸送の可能性
植物への蓄積
人の健康および生態系への影響
内分泌活性
混合物の影響

＜過去、このような懸念のある物質が長期に使われてきた理由は技術的に優れた物質であったから＞

撥水性、撥油性、防汚性
過酷な条件下での耐久性
温度、圧力、放射線、化学薬品に対する耐性
絶縁性および断熱性

＜どんな場所に使われてきたのか＞

工業プロセス（泡消火剤、繊維製品、食品接触材料(包装を含む）、金属メッキ/金属
製品（消費者用混合物、スキーワックス、輸送）
フッ素系ガス
エレクトロニクス（半導体）
エネルギー分野
建設製品
潤滑油
石油・鉱業
医療機器
化粧品
その他の用途

＜PFASを規制する理由＞

環境と人体への悪影響が懸念
PFASは様々な用途で大量に使用されている
排出はPFASのライフサイクル（製造から廃棄まで）の全ての段階で起こる
モニタリングデータ：PFASは環境中およびヒトの体内に偏在している
PFASは非常に高い難分解性"永遠の化学物質"
PFASは一度環境中に放出されると除去が難しい
現在EEA（EU経済領域）におけるPFASの使用によるリスクは管理されていない
EU全体の規制措置の必要性

＜制限案の考え方＞

2つの制限案を検討（1. 全面禁止、2. 用途に応じた適用除外を伴う禁止）
用途に応じた適用除外を伴う禁止では（代替案の有無の分析と社会経済的影響の配慮）

＜制限条件案＞

製造、上市、使用の禁止
PFASは、成形品だけでなく、他の物質や混合物に含まれる成分としても存在
設定された濃度限度を超える場合
移行期間：発効後 18ヵ月
用途別（期限付き）適用除外

＜適用除外案＞

2つの標準的な免除期間例：
業務用食品および飼料製造用の食品接触材料（開発中だが発効時には利用できない代替案）：5年間
植込み型医療機器（必要な代替案の特定、開発、認証）：12年間

＜PFAS規制の概要＞

放出を最小限に抑えなければ、悪影響は避けられない
広範なPFAS類の制限案
特定の用途に対する（期間限定の）適用除外
産業界代替物質への切り替え努力が必要
環境 95％の排出削減
何も対策を講じない場合、社会的コストが使用制限に関連するコストを上回る。

但し、協議の際に利害関係者に意見を求めながら進める

4.　まとめ

（1）ECHAは2024年3月13日付けで、PFAS規制案の今後の協議予定を発表した。
（2）ECHAのリスクアセスメント科学委員会（RAC）および社会経済分析科学委員会（SEAC）の2つの委員会において、寄せられたパブリックコメントを精査し、産業・用途別に協議を2024年3月、6月、9月に実施する。明記されていない産業・用途については、追って発表する。
（3）適用除外の設定は、利害関係者の意見を求め、代替技術の有無や制限を実施した場合の経済的損失などを鑑み決定するとしており、強権的な制限は実施しないと思われるので、有力な情報提供が重要といえる。

引用・参考資料

ECHA News “Next steps for PFAS restriction proposal”　（ECHA, 2024-3-13）
ECHA News “ECHA receives more than 5 600 comments on PFAS restriction proposal”　（ECHA, 2023-9-26）
Consultation on a proposed restriction on the manufacture, placing on the market and use of per- andpolyfluoroalkyl substances (PFAS)　（ECHA）
Forum for Exchange of Information on Enforcement　（ECHA, 2023-10-23）
Registry of restriction intentions until outcome　（ECHA）
The PFAS Restriction Proposal　（ECHA, 2023-2-7）
欧州ＰＦＡＳ制限案　パブコメ5642件に　（化学工業日報、2023年11月22日）

注意

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