EPAが管理するSCILとは

～2023年1月15日現在1,064物質が収載～

2023年2月24日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

1.　はじめに

EPA（米国環境保護庁）は、2023年1月1日付けのメールマガジンで「本日、米国環境保護庁（EPA）は、『より安全な化学物質リスト（SCIL：The Safer Chemical Ingredients List）』を更新して9物質を追加し、PFASの1物質削除します」と発表しました。

今回は、EPAが管理するSCILとDfE（環境配慮設計）について解説します。

※なお、今回SCILから削除されたPFASは3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8－トリデカフルオロオクタン－1－スルホン酸（CAS RN 27619-97-2）です。用途情報はありませんが、我が国では化審法、安衛法の対象物質です。

2.　米国EPAが行っているDfE認証とSCIL（出典：Safer Choice）

米国EPAが行っているDfE（環境配慮設計）認定ラベル表示制度とは発がん性、生殖毒性、発達毒性等の懸念のある化学物質を一切含まない製品に対して行われています。これには、香料や着色料などの微量成分も評価の対象となっています。ラベル表示認定に当たっては、EPAが評価した結果「より安全な化学成分」と認めた材料を使用したことの開示や、製品のライフサイクルを通じ持続可能な素材を用いた包装や、揮発性有機化合物の使用制限も求めています。対象とする製品は、汎用洗剤、食器用・洗濯用洗剤、殺菌剤などの家庭用製品から自動車、船舶などの製品も含まれています。

（参照）アメリカ環境保護庁、DfE（環境配慮設計）表示認定製品が2500品目を超えたと発表（出典：国立環境研究所）

これらDfE認定ラベル表示を受けるに当たり、EPAが「より安全な化学物」として認定した物質のリストがSCILと呼ばれています。

3.　EPAが管理するSCIL（The Safer Chemical Ingredients List：より安全な化学物質リスト）とは

※以下、EPAのウエブサイト“Safer Chemical Ingredients List”より引用して説明します。

SCILにリストされている化学物質は、より安全な代替品であり、機能・用途のクラスごとにグループ化されています。
リスト収載の化学物質は、緑の円、緑色の半円、黄色の三角形、または灰色の四角でマークされています。

緑の円
この化学物質は、実験およびモデル化されたデータに基づいて、（有害化学物質の）懸念が低いことが確認されています。
緑色の半円
この化学物質は実験およびモデル化されたデータに基づいて、有害な化学物質の懸念は低いと予想されます。さらなる追加データによって、安全であることが確定します。
黄色の三角形
この化学物質は、その機能性成分クラスの安全な選択基準を満たしていますが、いくつかのハザードプロファイル上の問題があります。具体的には、このコードを持つ化学物質は、すべての人間の健康および環境のエンドポイントについて、低レベルの危害懸念とは関連付けられていません（より安全な選択基準を参照してください）。それはクラス最高の化学物質であり、特定の機能に対して利用可能な最も安全な化学物質の 1 つですが、化学物質によって満たされる機能は、より安全な化学革新の領域と見なされるべきです。
灰色の四角
この化学物質は、安全な選択ラベルの候補である製品での使用が許容されない可能性があり、それを含む現在認定されている製品は、安全選択コンプライアンススケジュールに従って再構成する必要がある場合があります。製造業者は、この化学物質をSCILに継続的に掲載し、安全洗濯認定製品で使用することを正当化するための情報を提供するよう求められます。EPAに提供された情報がリストの継続を適切に正当化しない限り、この化学物質は灰色の四角の指定から12ケ月後に削除されます。

注）一部の機能用途クラスのリストには、緑の円と黄色の三角の両方が含まれている化学物質があります。これは、ある用途には安全ですが、別の用途には懸念が有ることを意味しています。

このリストには、「Safe Choice Program」を通じて評価された多くの化学物質が含まれています。企業機密で安全性が証明できない化学物質は含まれていません。このリストに含まれていない、より安全な化学物質もあるかも知れません。
これらの「機能用途クラス別リスト」に収載されている化学物質の一部は、TSCAインベントリには収載されていない可能性があります。従ってTSCAによる使用が認可/許可されていない可能性があります。さらに、これらの機能用途クラスにリストされている化学物質の一部は、FIFRA（連邦殺虫剤、殺菌剤、および殺鼠剤法）またはその他の規制用途で認可/許可されていない場合があります。これらの物質のTSCA、FIFRA、またはその他の規制された使用を検討している人は、それらの使用が許可されているかどうかを確認するために必要があります。
SCILにリストされている化学物質は「機能用途クラス別」に分類されています。

「すべての機能使用クラス」で検索するか、または以下の「機能使用クラス」を選択して下さい。
（1）抗菌活性物質（Antimicrobial Actives）
（2）キレート剤（Chelating Agents）
（3）着色剤（Colorants）
（4）消泡剤（Defoamers）
（5）皮膚軟化剤（Emollients）
（6）酵素及び酵素安定剤（Enzymes and Enzyme Stabilizers）
（7）フレグランス（香料）（Fragrances）
（8）酸化剤及び酸化安定剤（Oxidants and Oxidant Stabilizers）
（9）ポリマー（polymers）
（10）防腐剤及び酸化防止剤（Preservatives and Antioxidants）
（11）加工助剤及び添加剤（Processing Aids and Additives）
（12）スキンコンデショニング剤（Skin Conditioning Agents）
（13）溶剤（Solvents）
（14）特殊工業薬品（Specialized Industrial Chemicals）
（15）界面活性剤（Surfactants）
（16）未分類（Uncategorized）

注）　「すべての機能使用クラス」で検索する場合はここから入り、Please Select: All Functional Use Classesをクリックしてください。上表の「機能使用クラス」を選んで検索する場合は、ここから入り、目的とする機能使用クラスを選択してください。
例えば溶剤（Solvents）を選択して検索すると、以下のように25物質ずつ表示されます。

Code	Common Name	CAS Registry Number	Functional Use
	（d）-Limonene	5989-27-5	Fragrances; Solvents
	（R）-（-）-1,3-Butanediol	6290-03-5	Solvents
	1,1′-Dimethyldiethylene glycol	110-98-5	Solvents
	1,2-Butanediol	584-03-2	Solvents
	1,2-Hexanediol	6920-22-5	Solvents
	1,2-Propanediol	57-55-6	Enzymes and Enzyme Stabilizers; Solvents
	1,3-Butanediol	107-88-0	Solvents
	1,3-Dioxolan-2-one, 4-ethyl-	4437-85-8	Solvents
	1,3-Propanediol	504-63-2	Enzymes and Enzyme Stabilizers; Solvents
	1,6-Hexanediol	629-11-8	Solvents
	1-（2-Methoxy-1-methylethoxy）-2-propanol	20324-32-7	Solvents
	1-Dodecanol	112-53-8	Fragrances; Solvents
	1-Methoxy-2-propanol	107-98-2	Solvents
	1-Propoxy-2-propanol	1569-01-3	Solvents
	1-Undecanol	112-42-5	Fragrances; Solvents
	2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol	144-19-4	Solvents
	2,2-dimethyl-1,3-Dioxolane-4-methanol	100-79-8	Solvents
	2-Methyl-2,4-pentanediol	107-41-5	Solvents
	3-Methoxybutyl acetate	4435-53-4	Solvents
	3-Methyl-3-methoxybutanol	56539-66-3	Solvents
	4-Hydroxymethyl-1,3-dioxolan-2-one	931-40-8	Solvents
	9-Dodecenoic acid, methyl ester *Yellow due to hazard concerns, but allowed to provide functionality while meeting Safer Choice VOC criteria. See section 4.2.7.1 of the Safer Choice Standard.	39202-17-0	Solvents
	9-Methyl decenoate	25601-41-6	Solvents
	Alcohols, C10-16	67762-41-8	Solvents
	Alcohols, C9-11	66455-17-2	Solvents

SCILが対象とする毒性

（1）発がん物質、変異原物質、生殖または発生毒性物質
（2）持続性、生物蓄積性および有毒な化学物質
（3）全身または内臓に対する毒物
（4）喘息患者に対する毒性
（5）増感剤
（6）権威あるリストにある懸念の有る化学物質
（7）内分泌活性を示す物質

4.　まとめ

（1）EPA（米国環境保護庁）は2011年より、人間や環境に配慮して設計された一般消費者向けの製品に対して「環境適合（配慮）設計（DfE: Design for Environment）が施されていることを示すラベル」の表示を認めるプログラムを実施しており、その製品数はこの約15年間で2,500品目を越えたと伝えている。
（2）EPAが実施しているDfEはEUや我が国が行っているものとは異なり、製品を構成する化学成分が全て安全な化学成分より構成されている場合と定義している。
（3）EPAが管理する「より安全な化学物質リスト：SCIL」があり、機能使用クラス別に分類されている。製品の機能使用クラスと照合し、安全な化学物質のみを使用した製品にはDfE認証マーク表示が許可される。
（4）対象は一般消費財が主であるが、拡大傾向にある。
（5）当工業会との関連は今のところ薄いと思われるが、参照する価値はあると思われる。

引用・参考資料

EPAメールマガジン　（2023-1-15）
Safer Chemical Ingredients List　（EPA）
Safer Choice Standard and Criteria　（EPA）
Search Products that Meet the Safer Choice Standard　（EPA）
Safer Choice　（EPA）
アメリカ環境保護庁、DfE（環境配慮設計）表示認定製品が2500品目を超えたと発表　（国立環境研究所、2011-4-21）
「環境適合（配慮）設計」の多面性について～EUのErP指令から米国EPAにおけるDfEまで～　（日本バルブ工業会、2014-12-24）

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