ホーム > 知ってなるほどバルブと水栓 > 環境関連情報 > マイクロプラスチックによる海洋汚染

環境関連情報

マイクロプラスチックによる海洋汚染

増え続ける見えないゴミの問題点とは

情報発信日:2016-6-17

はじめに

最近、「マイクロプラスチック」による海洋汚染問題がマスメデイアで取り上げられ始めています。「マイクロプラスチック」とは、一般的には大きさが5mm以下の微細なプラスチック粒子を指しますが、一部の海洋学者や環境の専門家の間では、1mm以下の顕微鏡サイズ、あるいは海洋での微細物質採取用ネットの目開きである0.333mmを意識する場合もあります。さらに微細な数10μm~数μmまであるといわれています。

今のところ、野生生物と人間の健康に及ぼす影響は科学的に十分に確立されてはいませんが、海洋においてマイクロプラスチックは確実に増加しており、海洋生物がこれを取り込み、さらに食物連鎖の頂点の人間に還流して来る事実は不気味に思えます。

アスベストやフロンの問題のように、何らかの被害や負の影響が明確になった時点で対策を打つというのではなく、このような違和感を覚える問題には先手を打つ必要があると思えますので、マイクロプラスチックはどこから来て、現在どのような問題が危惧されているかを述べてみたいと思います。

マイクロプラスチックの発生源

マイクロプラスチックの発生源は複数考えられますが、大抵は内陸部で使用されていたが川を流れ海洋に至ったと推定されます。

(1)もともと大きなプラスチックが海洋に流出し紫外線による劣化と研磨により微細化

もともとは大きな成形物であったが、河川を経由して海洋に流れ出た、あるいは海水浴客や漁業関係者・海運関係者などの故意、または過失により海洋に投棄されたプラスチックが紫外線によって劣化し、ボロボロになった後、砂浜の砂と波によって研磨され、岩が石にやがて砂になるように微細化して形成されます。

(2)もともと微細なプラスチックが海洋に流出

一般にプラスチックは成型される以前の原料の状態にあってはペレット、レジン、パウダーなどの形態で供給され数十μm~数mmの大きさであり、これらが成形されずに廃棄、あるいは流出して河川により運ばれて海洋に至ってしまった。

特に、最初から研磨剤、化粧品、洗顔剤、歯磨き粉等の添加剤、マイクロビーズなどの目的でμmオーダーの大きさで製造されたマイクロプラスチックは回収が難しく、下水処理をくぐり抜けて海洋へ流出してしまいます。

(3)衣類等の繊維の摩耗片が海洋に流出

衣類などの繊維製品の洗濯や摩耗による合成繊維片が、洗濯排水として下水に流れ、下水処理場では微細過ぎて処理されず海洋に流出します。

マイクロプラスチックの発生量

現在全世界の海洋を漂っているマイクロプラスチックの量は実に27万トンにのぼるといわれています。

しかし、この27万トンのマイクロプラスチックは世界の海に均一の濃度で漂っているわけではありません。海洋には海流があり、偏西風も吹いており、一定のところに留まる傾向があるようです。

図1でわかるように、世界の海には北太平洋、北大西洋、南太平洋、南大西洋、インド洋の5ヶ所の海域で高濃度に分布しています。いずれも人口の密集する陸地の近くですが、特に黒海や地中海などの閉鎖系水域や東南アジア、中国、日本などの近辺水域でも高濃度の分布が見られます。

これら地域における発生源の多くは、不法に投棄されたプラスチックごみと推定されています。特に廃棄物の収集や処理方法が確立していない途上国の河川より流出する場合が多いという研究結果が示されています。

図1 世界の海洋におけるマイクロプラスチックの濃度分布
(出典:東京農工大学農学部環境資源科学科・高田秀重教授)

マイクロプラスチック汚染により危惧される問題

マイクロプラスチックは魚類や貝類、甲殻類などの海洋生物がプランクトンなどのエサや海水と共に摂取される場合や海鳥がエサと間違えて食べてしまう場合などにより体内に取り込まれる現象が確認されています。

海洋生物がこれらマイクロプラスチックを体内に取り込むことによる問題はいくつか考えられます。

(1)小型の海洋生物にとってマイクロプラスチックは大きな存在であり、エサと間違えて食べた場合に摂食器官または消化管を閉塞させたり損傷したりする可能性がある。
(2)摂食後にプラスチック自身の成分や吸着成分が海洋生物の内臓に浸出する。
(3)摂取された化学物質成分の臓器への蓄積や濃縮
(4)エサと誤って摂食した場合、偽りの満腹感による摂食不足
(5)海洋生物の生息環境の阻害による生物多様性への負荷

現時点においてマイクロプラスチックによる海洋生物と人間に対する健康影響は科学的に証明されていませんが、このままマイクロプラスチックが増加を続けた場合、50年後、100年後に影響が出ない保証はありません。現在、最も危惧されている問題は、対象となるマイクロプラスチックが強い吸着性を持っている点にあります。

マイクロプラスチックを構成する身近なプラスチックとは、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンの5種類といえます。

ポリエチレンは比較的柔らかいプラスチックで、レジ袋などに使われています。ポリプロピレンはもう少し硬く、弁当箱や食器の容器に使われます。ペットボトルになるペットと、発泡スチロールになるポリスチレンはご存知のとおりです。塩化ビニルは、パイプなどの工業用の素材として使われるものです。

これらのプラスチックは、ある意味油と似た性質を有するため、化学物質に対して強い吸着作用または溶解性を有することが知られています。

プラスチックは一般に単一物質ではなく、紫外線吸収剤、可塑剤、重合開始剤、安定剤、酸化防止剤など多くの添加剤を含んでいます。

このことは、各種プラスチックは種々の化学物質に対して吸着性が高いことを示します。

例えば、環境ホルモンの疑いがあるノニルフェノールやPCBなどは吸着されやすく、あるマイクロプラスチックから高濃度検出されたことが報告されています。

まとめ

(1)マイクロプラスチックとは一般に大きさが5mm以下のプラスチックを指すが、顕微鏡視野下の数μm~数10μmの範囲でも存在する。
(2)マイクロプラスチックは海洋に広く分布しており、現在全世界に27万トンあると推定されている。
(3)分布は、特に南・北太平洋、南・北大西洋、インド洋の人口の密集する大陸の近く5ヶ所に高濃度で分布している。また、黒海、地中海、東南アジア及び中国、日本の近海にも高濃度で分布。
(4)マイクロプラスチックの発生源は複数あるが、多くは大きなプラスチック成形品が不法投棄などの故意または災害や自然現象により陸地から海洋に流出し、その後紫外線により劣化し、波と砂により岩が石に、石から砂に摩耗するのと同じように微細化する。または、衣類などの繊維が洗濯などにより細片化、または研磨剤、洗顔剤、歯磨き粉、化粧品などに含まれる微細粒子が下水に流出し、そのまま海洋へ至る場合も多い。
(5)海洋に流出したマイクロプラスチックは、魚介類や海鳥が摂食し食物連鎖の頂点である人間が最終的に摂取することになる。
(6)マイクロプラスチックによる海洋生物と人間への健康への影響について、未だ科学的な関連は見いだせていないが、マイクロプラスチックは環境ホルモンの疑いがあるノニルフェノールや毒物であるPCB等の有害化学物質を吸着する性質を持っており、このまま海洋におけるマイクロプラスチックの増加が続いた場合には、海洋における環境に変化が起こり、生態系に大きな影響を及ぼす可能性も指摘されている。

引用・参考資料

注意

情報一覧へ戻る