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環境関連情報

2030年温室効果ガス排出量26%削減への道 #3

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正

情報発信日:2016-11-25

はじめに

本コラムにおいて既に何度もお伝えしていますが、2015年12月にパリで開催されたCOP21において採択された「パリ協定」は、従来の先進国と途上国の対立問題や京都議定書で離脱した温室効果ガス排出量第1位と第2位の中国とアメリカの不参加問題など多くの障害を乗り越え、世界の190ヶ国以上が一致して、地球温暖化防止に取り組むことを決めた点において、また、採択から発効まで7年も要した京都議定書と比して1年も経ない2016年11月4日に発効した点においても歴史的に大きな一歩を踏み出したといえます。

パリ協定では、長期目標を「産業革命以前よりの気温上昇を2℃以下(可能な限り1.5℃以下を目指す)に抑える」とし、各国行動目標について「削減目標の5年ごとの提出・更新、適応計画プロセスや行動の実施等を内容の公表」などを義務づけています。

これに対応し、我国は「温室効果ガス排出量を14年後の2030年には2013年度比で26%、34年後の2050年には80%という異次元の削減する計画」を国連に提示していますので、先般閣議決定された「地球温暖化対策計画」に従いこれを具体的に達成する施策を展開して行く必要があります。

一方、現在我国では福島第一原発事故の影響で多くの原発が停止状態にあり、これを補うために新たに40基もの新規火力発電所の建設計画があり、温室効果ガス削減の道筋が全く見えない状況にあります。

また2016年11月7日からモロッコで開催されるCOP22 (第22回気候変動枠組条約締約国会議)前にパリ協定が発効し、同時にパリ協定の第1回締約国会合が開かれることになりましたが、前回のコラムでも述べた通り、我国は国内手続きが間に合わず正式に参加出来ない状況になってしまいました。

しかし、環境省は今回の法改正の背景について、上述した内容と重複しますが、「我が国は、2015年7月に、温室効果ガスを2030年度に2013年度比で26%削減するとの目標を柱とする約束草案を国連に提出しています。この目標の達成のため、特に家庭・業務部門においては約4割という大幅な排出削減が必要です。そのため、国として、地球温暖化の現状や対策への理解と気運を高め、国民一人一人の自発的な行動を促進する普及啓発が極めて重要な施策となります。本法律案は、こうした状況を踏まえ、普及啓発を強化するという国の方針を明示し、所要の規定を整備するとともに、国際協力を通じた地球温暖化対策の推進、地域における地球温暖化対策の推進のために必要な措置を講じようとするものです」と説明しています。

地球温暖化対策の推進に関する法律とは

地球温暖化対策の推進に関する法律は、1997年12月に京都で開催されたCOP3において採択された京都議定書に対応することを目的として国内対策の枠組みを定めた法律で、1998年(平成10年)に制定されました。

この法律の目的は、同法の第1条に「地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、全ての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることに鑑み、地球温暖化対策に関し、地球温暖化対策計画を策定するとともに、社会経済活動その他の活動による温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置を講ずること等により、地球温暖化対策の推進を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする」と記載されています。

1998年の制定後、以下5回の改正を経て、今回は6回目の改正が行われました。

改正年 改正概要
2002年(平成14年) 京都議定書目標達成計画の策定、地球温暖化対策推進本部の法定化等を制定
2005年(平成17年) 温室効果ガス算定・報告・公表制度の創設等を制定
2006年(平成18年) 京都メカニズムに関する制度を制定
2008年(平成20年) 排出抑制等指針の策定、地方公共団体実行計画の策定事項の追加等を制定
2013年(平成25年) 京都議定書目標達成計画に代わる地球温暖化対策計画の策定や、三フッ化窒素(NF3)の追加等を制定

今回の改正概要

(引用:環境省地球環境局総務課地球温暖化対策制度企画室)

(1)内容

①地球温暖化対策計画に定める事項の追加

イ) 地球温暖化対策に関する計画(以下「地球温暖化対策計画」という。)に定める事項として、温室効果ガスの排出の抑制等のための施策及び活動に関する普及啓発の推進(これに係る国と地方公共団体及び民間団体等との連携及び協働を含む。)に関する基本的事項を加えるものとする。

ロ) 地球温暖化対策計画に定める事項として、地球温暖化対策に関する国際協力を推進するために必要な措置に関する基本的事項を加えるものとする。

②地方公共団体実行計画の共同策定等

イ) 都道府県及び市町村が策定することとされている地球温暖化対策の計画(以下「地方公共団体実行計画」という。)について、単独で又は共同して策定するものとする。

ロ) 地方公共団体実行計画において、その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策に関する事項として定めるものとして、その利用に伴って排出される温室効果ガスの量がより少ない製品及び役務の利用及び都市機能の集約の促進を例示として加えるものとする。

③その他

イ)気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書に基づく約束の履行に係る規定の整理等の措置を講ずる。

今回の改正の具体的な内容

(引用:環境省、EICネット<一般財団法人環境イノベーション情報機構が運用する環境教育・環境保全活動を促進するための環境情報・交流ネットワークです>)

①概要

図1 改正する規定の内容(出典:環境省)

今回の改正のポイントは、パリ協定に対応し、まずは中期目標である2030年の温室効果ガス排出量26%削減を達成するに当たり、特に家庭・業務部門においては約4割という大幅な削減が必要だとし、そのためには国民1人1人が、家庭や所属する組織において自ら強い意志を持って「温室効果ガス排出量削減の為の行動」をするための普及啓発を強化するという国の方針を明示し、所定の規定を整備し、国際協力の推進、地域における地球温暖化対策の推進のために必要な措置を講じる事を柱とするもので、具体的には以下の通りです。

②普及啓発・国民運動の強化

図2 国民運動の強化について(COOL CHOICEを旗印とするムーブメントづくり)(出典:環境省)

2030年に温室効果ガス排出量を26%削減する目標達成のためには民生部門(家庭・業務)で4割の大幅削減が必要であり、規制・補助金・税が制優遇による誘導に加えて、国民1人1人が意識を変革しライフサタイルの転換を行うことが重要で、そのために国民各界各層へ温室効果ガス排出量削減に対する普及啓発を行い国民運動の根本強化を行う。また、そのためには「地球温暖化の危機意識」を共有し、低炭素な「製品、サービス、ライフスタイル等に対する賢い選択(Cool Choice)のメリットを伝え行動に繋げる、などが明記されました。

③国際協力を通じた地球温暖化対策の推進

図3 国際協力を通じた地球温暖化対策の推進(出典:環境省)

地球温暖化防止は我国での活動はもちろんですが、我国が目標を達成するだけでなく、地球全体での目標が達成出来なければ意味がないため、世界の各国と連携して対策を取ることが重要です。 パリ協定では、世界の平均気温上昇を2℃以下(出来れば1.5℃以下)に抑えることが世界共通の目標になっており、先進国から途上国への低炭素技術供与や2国間クレジットなど、諸外国との連携を積極的に進めることが重要と明記されました。

④地域における地球温暖化対策の推進

図4 地方自治体の地域レベルの温暖化対策の推進(出典:環境省)

地球温暖化防止計画・活動は一般家庭や民間企業などに期待するところが多いですが、民間企業は工業会単位で、一般家庭は地域の特性や実績などを踏まえ地方公共団体が主体となり、計画を策定し実行すること、及び都市機能の集約、低炭素な日常生活製品の利用促進が重要と認識し、これを明記しました。

イ)地方公共団体実行計画の共同策定について

通常地方公共団体の計画策定と実行は単独で行われることが多いが、地球温暖化防止に関する計画策定・実行は複数の地方公共団体が広域的に連携して推進することの効果が高いと判断し、これを明記しました。

ロ)都市機能の集約

都市における二酸化炭素の発生量は自動車の走行量や床面面積などとの関係が高いため(都市に比べて人口密度の低い地方では1人当たりの自動車による二酸化炭素排出量は格段に多い)、二酸化炭素排出量の大幅削減のためには都市構造そのものの変革が必要と認識し、都市機能の集約などを明記しました。これは、例えばエコ住宅の設置誘導、公共交通の積極的な活用、エネルギー利用の最適化によるスマートシティー化、居住・商業・業務などの都市機能の集約などが考えられます。

まとめ

本コラムで何度もお伝えしている通り、昨年(2015年)12月に開催されたCOP21において、パリ協定が採択されました。地球温暖化防止のための温室効果ガス排出量大幅削減は世界の全ての国々にとって、待ったなしの課題となっていますが、従来は先進国と途上国の利害不一致による対立や排出量世界第1位と2位の中国と米国が参加しないなど、多くの障壁がありました。パリ協定において、世界の190ヶ国以上が協力して、気温上昇を産業革命以前と比較して2℃以下(可能な限り1.5℃を目指す)に抑制する方向で一致したことは、歴史的に大きな1歩が踏み出されたことを意味します。

そして、2016年9月、中国杭州でのG20を前に、米中首脳会談においてパリ協定の批准が表明されたことにより、「本当にやる気?」と疑問視する声も多くあった中で、大方の予想よりも早く、採択から1年を経ずに2016年11月4日に発効しました。

我国は、国連に提出した目標を達成するために先般閣議決定された「地球温暖化対策計画」に従い、これを具体的に達成する施策を展開して行く必要があり今回の法改正が行われましたが、パリ協定への批准は発効日に間に合わず、また新規火力発電所建設計画が40基もあるなど、温室効果ガス排出量削減への道筋は全く見えて来ません。欧米やアジアの諸国の多くは温室効果ガス削減をビジネスチャンスと捉えており、積極的に温室効果ガス削減に舵を切りましたが、我国産業界はまだまだ「温室効果ガス排出量削減は経済発展にマイナスの影響が大きい」と考える経営者が多いといえます。

今回の改正の要点としては、規制・補助金・税が制優遇による誘導に加えて、国民1人1人が意識を変革しライフサタイルの転換を行うことが重要で、そのために国民各界各層へ温室効果ガス排出量削減に対する普及啓発を行い国民運動の根本強化を行うことに重点においています。その他、地球温暖化防止には世界の多くの国が脱落することなく、個々の目標を達成することが重要であり、低炭素技術の供与や2国間クレジットなどを通じて多くの諸外国と連携すること、地方公共団体が広範囲に連携して計画の策定・実施を行うことや、都市の構造を総合的に変革し都市機能の集約化を行うなどが明記されています。

最も重要なことは、国民全てが危機意識を共有し、1人1人が家庭や職場で低炭素活動を積極的に行うことではないでしょうか。筆者も「地球温暖化防止コミュニケーター(旧:IPCCリポートコミュニケーター)」として、普及啓蒙活動を展開して行きたいと思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。

引用・参考資料

注意

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