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環境関連情報

大気汚染防止法施行規則の一部を改正する省令の公布

2013年3月6日付け施行分

情報発信日:2013-04-19

はじめに

2月25日付けの本コラムにおいて、中国における深刻で危機的な大気汚染の状況についてお知らせをしました。特に、PM2.5と呼ばれる2.5μm以下の微粒子による汚染は観測値が史上初の900μg/m3と、WHOの指針値の36倍にも達したと伝えられ、季節風に乗って日本にまで達すると危惧されるほどです。

我が国においても産業の発展による大気の汚染が大きな健康問題となり、1962(昭和37)年に日本で最初の大気汚染防止に関する法律「ばい煙の排出の規制等に関する法律(ばい煙規制法)」が制定されました。この法律は主に石炭の燃焼によるばい煙の排出抑制を主眼にしていましたが、その後石炭から石油への転換が進んだことや、自動車の排ガスが規制の対象になかったことなどから対応しきれなくなったため、1968(昭和43)年にばい煙規制法が根本的に見直され、「大気汚染防止法」が制定されました。しかし、高度成長時代に入ると、この初期の大気汚染防止法でも対応が難しくなり、四日市における工場からの排煙や東京の環状七号線大原交差点での自動車からの排気ガスによる健康被害など、全国で大気汚染による公害問題が多発しました。

このため、1970(昭和45)年に汚染の防止を徹底させ公害問題の早急な解決を図るため、公害関係法令の抜本的整備が行われ、大気汚染防止法も大幅に改定され、現在の大気汚防止法の原型がここに誕生しました。

その後も、都度一部改正が行われ、現状では世界でもトップクラスの厳しい法規制が作られ、東京都内からでも天気の良い日には100km以上も離れた富士山さえ見える状況にあります。

このような、素晴らしい日本の大気汚染防止法ですが、環境省は本年(2013年)3月6日付けで「大気汚染防止法施行規則の一部を改正する省令の公布及び『今後の揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策の在り方について』に係る中央環境審議会答申ついて(お知らせ)」と題する報道発表を行いましたので、改正内容などについて概説したいと思います。

 

揮発性有機化合物(VOC)について

揮発性有機化合物(VOC)については、本コラム2006年1月27日付け「有害物質規制最前線#6 VOCとシックハウス症候群」や2006年12月28日「VOCの排出抑制に係る自主行動計画」においても述べていますが、環境省及び経済産業省などの説明によりますと「VOCとは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称で、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが代表的な物質です。製品から見て直感的には、『有機溶剤』と考えておけば良いでしょう。大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の1つとされています。

環境省が実施したシミュレーションの結果、光化学オキシダントおよびSPMの目標を達成するためにはVOCについて平成22年度までに平成12年度比3割削減する必要があるとされました。VOC排出量の発生源として、塗料、洗浄剤、接着剤、インキからのVOC排出が全体の75%を占め、業種別に見ても、塗料等を多く扱う業種からの排出が多い結果となりました。」と解説しています。

この他、VOCは最近印刷業において管癌の原因物質として1、2ジクロロプロパンやジクロロメタンが問題になったり、シックハウスの原因物質として建材用接着材に含まれるホルムアルデヒドなどが問題になったりしていますが、今回の大気汚染防止法によるVOC規制の狙いは、大気中に排出されたVOCが太陽光によって化反応を起こして光化学オキシダント及びSPM(suspended particulate matter;浮遊粒子状物質)に変質して大気汚染(光化学スモッグ)を引き起こすため、その大気中への放出を制限しようと言うものです。

環境省によりますと、VOCの大気中への排出量は、例えば2000(平成12)年度では約146.5万トンに上り、内訳は以下の通りとしています。

排出量の約1/3は塗料に含まれるシンナーやトルエンなど、次いで約12%がガソリンや灯油などの燃料と言うことになります。

今回(2013年3月6日付け)大気汚染防止法(大防法)施行規則の一部改正内容

今回の大気汚染防止法(大防法)の改正は2012年4月20日付けで諮問機関である中央環境審議会から「今後の揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策の在り方」について環境大臣が答申を受けて公布されたもので、2013年3月6日付けで施行規則の一部が改正され、同日付で施行されました。

中央環境審議会よりの答申の概要は以下の通り。

(1)VOC排出抑制制度の在り方

新たな削減目標は設定せず、法規制と事業者による自主的取組を組み合わせた現行のVOC排出抑制制度は、このまま継続することが適当。

(2) 事業者の負担軽減

現在VOC排出者は年2回以上VOCの濃度測定を行うことになっているが、最も濃度負荷のかかる時に年1回以上測定する事等。

(3) VOC排出状況、対策効果等のフォローアップ

今後もVOC排出抑制効果について定期的にフォローアップするとともに、最新の知見に基づき適切に対策の効果を評価すること等。

(4) 総合的な対策検討のための新たな専門委員会の設置

揮発性有機化合物排出抑制専門委員会は発展解消し、今後はVOCのみならず、光化学オキシダントやPM2.5を含めて総合的な検討を行う等、専門委員会を新たに立ち上げ、今後必要な対策の検討等について幅広い議論を行う事が適当。

(5) 国際的な取組の推進

今後もより積極的に国際的な取組を推進していくことが重要。

中央環境審議会の答申による今回の大気汚染防止法の一部改正は以下の通り

事業者の負担軽減を図り、より効率的な体系作りを推進することが重要と中環審から答申されたことから、VOC排出濃度の測定回数を年2回以上から年1回以上に改正。(大気汚染防止法第 17 条の12)

(参考)

揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制に関する施策その他の措置は、この章に規定する揮発性有機化合物の排出の規制と事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組とを適切に組み合わせて、効果的な揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制を図ることを旨として、実施されなければならない。 (大気汚染防止法第 17 条の2)

 

まとめ

今回の中央環境審議会の答申から見ると、「VOCの排出抑制に対応するため、従来から業界及び事業者による自主的な目標による削減で進められて来ていましたが、計画が順調に推移しているため、これを尊重し継続する」という意味合いで、さらに、事業者の負担を軽減するために、従来は排出濃度の測定に対して年2回以上を義務づけてきましたが、今回の改正では年1回の測定に変更され、一見規制が緩和されたように思われますが、排出濃度には変動があり任意に何回も測定するよりは一番負荷の高い時期に1回測定する方が妥当と判断したようです。現在までのところ、VOCの大気中排出量の削減は順調に進んでいる様子ですが、答申の中に、今後はVOCのみならず、光化学オキシダントや最近中国で問題になっているPM2.5を含めた総合的な大気汚染防止を達成するための新しい専門員会の立ち上げを具申しています。

2013年2月25日付けの本コラムにおいて中国における深刻な大気汚染について述べましたが、隣国のモンゴルにおいても冬季は開放式の石炭ストーブによる暖房や旧式の自動車からの排煙・排気ガスによる大気汚染が広がっているようです。

大気に国境はありませんので風が吹けば汚染物質は隣国へ越境してきますので、今後は中央環境審議会が最終項で述べているように国際レベルでの連携が重要になってくるといえます。

引用・参照情報

注意

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