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環境省、ESG検討会報告書「ESG投資に関する基礎的な考え方」を公表

~金融市場を通じた環境配慮の織り込み~

情報発信日:2017-02-27

はじめに

環境省は2017年1月12日、「ESG投資に関する基礎的な理解の向上に資することを目指した解説書『ESG投資に関する基礎的な考え方』」を公開しました。

ここ数年、長期的に企業価値を高める新しい判断基準として「ESG」が注目され、同時に投資対象としての適格判断にもESGが使われるようになってきました。2016年8月30日付け「東洋経済オンライン」では、ESG企業ランキングトップ100が紹介されています。

今回は、長期的に企業価値を高め、また投資の適格判断にも使われ始めたとされ、環境省が「解説書」を公開したESGとは何かを解説して行きたいと思います。

 

ESGとは、ESG投資とは

環境省が公開した「ESG投資に関する基礎的な考え方」には、ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス:企業統治(Governance)の頭文字を取った言葉と記されています。

従来、個人投資家や機関投資家が企業に投資する場合には、財務諸表を参考に投資判断を行ってきましたが、2016年1月付け三菱UFJ信託銀行の公開資料によると、「近年、運用の際に環境・社会・ガバナンス(企業統治)と言った非財務情報を考慮する『ESG投資』がグローバルに拡大している。現在、全世界の資産運用残高のうち約3割がESG要素を考慮しているといわれており、特に欧州では約6割を占めている」とのことです。

この動きは世界最大の年金積立基金「GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)」が国連の「PRI(責任投資原則)」に署名したことによっても、ESGが企業の長期的な評価指標として重要性を増していることがわかります。

注)「PRI(責任投資原則)」とは、2006年に国連が提唱した「長期に渡って継続的に収益を得るための投資行動」のための原則。投資を行うに当たりESGの配慮を求めたもので、2012年3月末時点で、この責任投資原則に署名した機関は全世界で1,000を越えるといわれ、その資産運用額は約30兆ドルにも及ぶといわれています。

さて、ESGとは、「Environmental(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治:ガバナンス)」の3つの頭文字をとったものであることはわかりますが、企業にとって具体的にはどのようなことが求められるのでしょう。

「百年の計実行委員会」による百計ONLINE2015年12月26日付けの記事「経営者なら知っておきたいESGの視点長期的に企業価値を高める新しい判断基準」によると、「企業にとって、それぞれの分野の課題にきちんと対応していくことが健全な企業の発展や成長の原動力となり、最終的には社会全体の持続可能な形成に役立つことを示した『投資の判断基準』のひとつと考えていい。極端な言い方をすると、ESGへの取り組みを評価された企業の株価は上昇し、回り回って地球環境問題や社会が抱える様々な課題の解決や改善に役立つという考え方だ」と述べています。

すなわち、従来の株式投資や金融機関による融資等においては企業の財務諸表や株価の割安感、チャートの動きなどを判断基準として行われてきましたが、近年では企業が環境問題に対してどのように取り組んでいるか、従業員や株主、地域住民などのステークホルダーに対して「企業の社会的責任(CSR)」を果たしているのか、また企業統治がしっかり出来ているかなど、企業をトータルで評価する方向がトレンドになってきています。

いくら企業業績が良く、急成長している企業であっても、マスコミを騒がせるような不正・不祥事、近隣住民からの訴訟、あるいは、最近社会問題となっているサービス残業問題や過労死問題などを起こすような企業は長期的に見て、安定した成長が見込めない企業として投資対象から除外される傾向が強くなってきています。

 

ESG投資判断基準

それでは、個々の企業のESGはどのような基準・項目で評価されているのでしょうか。
現在、公的な基準は制定されておらず、例えば東京証券取引所は具体的には示していませんが「ESGのスコアリング基準等」によりESG銘柄を決定したと述べ、東洋経済新報社ではESG企業ランキング100社を公表し、基準としては「ESG評価を長年にわたり行ってきた。独自の調査票で集めた日本最大のCSRデータベースを基に環境(E)、社会性(S)、企業統治(G)に加えて人材活用(H)の4つの評価軸で「東洋経済CSR評価」を作成している。また、「会社の基盤は人」という基本的な考えのもと、ESGのベースとして人材活用(H)を重視し、「ESG-H」という枠組みで企業を判断するやり方を2006年から行ってきた。今回はこのCSR評価データを使い、われわれの考えるESGに優れた銘柄選びを行ってみた。対象は『CSR企業総覧』2016年版掲載の1325社で環境(26項目)、社会性(27項目)、企業統治(37項目)、人材活用(40項目)の4分野で評価。それぞれ100点満点で、合計400点満点のランキングを作成した」と独自のデータベースを使い評価したと述べています。

また、三菱UFJ信託銀行は(株)QUICK ESG研究所の資料を引用し、ESGの各要素が示す項目(リンク先PDFの2頁目の図表1)を示しています。

 

環境省「ESG投資に関する基礎的な考え方」の概要

上述してきたように、投資家・投資機関にとっては企業の財務情報に加えてESGに対する取組が長期的な視点での投資判断を行う上で重要な指標となってきたことがわかると思います。しかし、一般の投資家にとっては公的な「評価基準」がない現状では、ESGの重要性は理解出来ても、どのように優劣を付けるか難しい状況にあるといえます。

このような状況において、環境省は学識経験者、投資・金融の専門家などによる「持続可能性を巡る課題を考慮した投資に関する検討会(ESG検討会)」に調査を委託し、その報告書としての「ESG投資に関する基礎的な考え方」を公表したものといえます。

ただし、当該報告書は、①ESG投資の意義、②ESG投資の実践に向けた課題、③ESG投資実践に向けた課題に対する取組の方向性についての理解を求めるものであり、公的な評価項目や評価方法・基準を定めたものではありません。

なぜならば、三菱UFJ信託銀行が示す通り、「企業のReputational Risk (企業に対する否定的な評価や評判が広まることによって、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被る危険度) などは定量化が困難であり、定性的な判断に頼らざるを得ない、また財務指標のように標準化もされていない」というESG投資の難しさが課題として挙げられているためです。

そのため、将来的には財務諸表のような公的に統一されたESG評価基準のようなものが出来る可能性はありますが、現状では上述したように定量化が難しいため、環境省としてはESG投資に関する種々の情報をまとめるに留めたと言えます。

まとめ

従来、企業の信頼性や投資適格性を判断する指標としては財務情報が全てに優先されてきました。しかし、過去を振り返ると、有害化学物質の垂れ流しによる公害、社内の偽装工作や不良原料使用による食中毒、粉飾決算、サービス残業や過労死などの労働基準法違反、データ捏造、産地偽装などにより、かつての超優良企業が一瞬にして悪徳企業のレッテルを張られ、その結果の株価暴落により投資家が予期せぬ損失を被ることがありました。

直近の例としては三菱自動車の燃費試験データやフォルクスワーゲンの排ガスデータ偽装問題があります。

ESG投資の考え方は、このような事態を出来るだけ回避し、持続可能性の高い企業を選別し、長期に安定的な投資を行うための判断材料として国連により提唱されたもので、現在多くの投資家が財務情報に加えてESGを投資の判断材料として着目しています。

企業経営において、日本では「環境対応は金がかかり、企業にとってはマイナス因子、パリ協定など困った問題」と考える経営者層も未だに多くいるようですが、環境問題を含むESG対策を積極的に行うことは長期的に見て企業価値を向上させることになるといえます。逆に言えば、ESG対策を怠る企業は投資の対象から外れ、株価が不安定になるばかりか金融機関からの融資を受けるのも難しくなるということを心得て置く必要があるといえます。

では、投資家からESGに関して優れた評価を得るための経営戦略としてどのようにすればよいのでしょうか。百年の計実行委員会による「百計ONLINE」2015年12月26日付けの記事「経営者なら知っておきたいESGの視点 長期的に企業価値を高める新しい判断基準」においては以下の3つの項目が重要だとしています。
・経営者自身がESGに対して深い理解をもち、意識改革をすること。
・ESG対応について、包括的に対処する専門部署を設けること。
・外部からESG評価を随時収集して情報を収集すること。
そして、「どんなにESGに力を入れても、短期的に見ると売上増とか収益アップなど業績面での貢献はほとんどないかも知れない。とはいえ、何もしなければ致命的なトラブルに対応出来ない可能性がある」、そして、「実際に、ブラック企業といった噂が立つだけで、現在ではSNSを通して世界中に拡散されてしまう。企業のブランドイメージは形成するのに何十年もかかるが、崩壊するときは一瞬で消滅するといわれる。ESGの重要性と必要性を経営者は認識すべきだろう」と結んでいます。

引用・参考資料

注意

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