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環境関連情報

「ディマンドリスポンス(ネガワット取引)」とは

~スマートな節電を行うために~

情報発信日:2017-01-20

はじめに

経済産業省は2016年12月28日付けで「『ディマンドリスポンス(ネガワット取引)ハンドブック』を作成しました~スマートな節電を行うための入門書を公開いたします~」と題して、ニュースリリースを行いました。

経済産業省によると、ディマンドリスポンス(DR: Demand Response)とは「市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させること」であり、「電力の需要側(消費側)で需給調整に貢献できる仕組み」と定義しています。

(株)西原エネルギー代表取締役・高橋洋平氏は、新電力ネットのホームページの2015年12月1日付けコラム「デマンドレスポンスとは:その仕組みとビジネスチャンス」において、「従来、(電力の)需要供給は一部の例外を除き、ほぼ供給側(電力会社)によって行われてきました。これが昨今の技術進歩により需要側(消費側)でも電力消費量を抑制・調整できる仕組みが整いつつあります」と述べています。今回は種々の資料からこの「ディマンドリスポンス」を読み解き、わかりやすく解説したいと思います。

ディマンドリスポンス(ネガワット取引)とは

電力の需要は一日で見ると工場やオフィスビル、商業施設などが稼働している昼間に多く、夜間に少なくなります。また、年間を通じて見ると、1960年代ではあまり変化が見られませんが、1970年代に入るとエアコンデショナーの普及により、夏季と冬季に需要のピークが現れるようになります(図1、図2)。冬季における暖房は灯油やガスによる手段がありますが、特に夏季における冷房は電気によるエアコンデショナーが主流となるため、年間を通じて夏季に最大ピークが見られ、昨今の都市化や気候変動などの影響もあり、年々その変動が顕著になってきています。

このような電力需要の変動に対して従来は、電力の需要(電力消費側)に合わせて電力の供給側(電力会社)が供給量(発電量)を調整して対応してきました。一般的に電力の需要は電力の供給側(電力会社)が、これら最大需要時に供給不足とならないように発電設備を確保して発電量を調整しています。しかし、この需要ピーク時間は全体の時間からすると1%程度しかありませんが、これに対応するために99%稼働しない過剰な設備を保有せざるを得ないと言うのが現状です。この事は、電力のコストを引き上げる原因となるばかりか、エネルギーを無駄に消費することを意味します。

また、近年、温室効果ガス排出量削減のため再生可能エネルギーの導入が進んできていますが、太陽光発電は昼間しか発電できないことや、風力発電では風の吹き方により刻々と発電量が変化すること、さらには電力自由化などにより、多種多様な電力が供給されるようになってきたため、供給側による調整だけで需給バランスを取ることが難しくなってきています。

このような状況において、従来とは逆に需要側が電力の供給側に合わせて需要量を変動させて電力の受給バランスを取るディマンドリスポンスが欧米で試行され始めています。

我国においては、2015年3月31日に経済産業省が主導する形でディマンドリスポンス(ネガワット取引)実証事業が開始されました。現在、この実証事業は、電力供給者と需要者の間に入って受給バランスを調整するアグリゲーターと呼ばれる役割を持つ企業17社(2016年3月31日現在)によって行われています。

以下、この実証事業を推進している「デマンドレスポンス推進協議会(構成は上記アグリゲーター17社)」のホームページの説明と図を使用してもう少しわかりやすく説明します。

デマンドレスポンス推進協議会によると「一般的に電力システムのコストのうち約10%が、時間割合では1%に満たないピーク需要のために費やされています。 デマンドレスポンスは電力需給が逼迫した際、電力会社からの要請に基づき需要削減するモデルであり、1年のうち99%は稼動しないピーク用の発電所を建設・運用することに比べて、経済効率が良く、且つ、環境に優しいソリューションです。つまり、デマンドレスポンスが電力システムに導入されることにより、電力システム安定化への貢献、電力料金低下効果が期待されます」と説明しています。

図1 年間を通じての電力需要変化(1) (デマンドレスポンス推進協議会)

図2 年間を通しての電力需要変化(2) (電力事業連合会)

図3 ディマンドリスポンス(ネガワット取引)のイメージ(出典:資源エネルギー庁)

簡単に言うと、電力会社と需要家の間にアグリゲーターと呼ぶ調整者が入り、電力需要のピークが発生しそうなタイミングでユーザーの削減可能な余力電力を束ねて電力会社に売る(消費量削減によりインセンティブを受け取る)システムと言えます。なおディマンドリスポンス(DR)には、上記の「下げDR」とは逆に、需要が下がり発電所の稼働を一時停止させなければならない逆ピークにおいて、ユーザーに需要を高めることを要請する「上げDR」もあります。

ディマンドリスポンスのメリットと課題

図4 下げDRのメリットと課題 (出典:経済産業省)

図5 下げDRに活用しやすい設備の特徴と注意点(出典:経済産業省)

まとめ

ディマンドリスポンス (DR: Demand Response)とは、従来、(電力の)需要供給は一部の例外を除き、ほぼ供給側(電力会社)によって行われてきましたが、電力の受給バランスを保つ為に需要側(消費側)でも電力消費量を抑制・調整するシステムです。

電力の需要は1日では昼間に多く、夜間に少なくなり、1年を通じては冷暖房の需要が高くなる夏冬に多くなり、春秋には少なくなります。これらの変化に対応するため、供給側(電力会社)では最大需要に合わせて発電設備を備えていますが、実際の稼働時間は全体の1%程度と言われ、この事が電力料金を10%程度高めていると言われています。

このような状況を改善する目的及び電力の自由化により多くの不安定な再生可能エネルギーによる電力事業者が参入してきたことなどにより、供給側だけでは受給バランスを取ることが段々難しくなってきたことなどから、このディマンドリスポンスが欧米で先駆的な実証試験が行われ実用化されつつあります。

経済産業省によると、我国においても「2017年4月には下げDRの取引が行われる『ネガワット取引市場』(注1)が創設されるのを始めとして、一般配電事業者による『容量メカニズム』(注2)や『調整力の公募』を発展させた『リアルタイム市場』(注3)と言った新しい電力システムの在り方が検討されており、それぞれの市場においてDRの活用が期待されています」としており、本年より運用が開始されるようです。

経済産業省としては、安定的な電力システム構築にDRの健全な発展が必要であり、需要家に対して是非積極的に参加するように呼びかけています。

注1) ネガワット取引:事前に需要家とアリゲーター(調整者)との事前契約に基づく取引

注2) 容量メカニズム:日本全体で充分な供給力を確保するための取組。電源等の容量に価値を認め、容量を提供した事業者に対価を支払うことにより、投資を促進させ、効率的な供給力確保を目指すもの。

注3) リアルタイム市場:「調整力の公募」では、個社毎に条件を設定し調整力を募集しているが、将来的には取引市場が創設され、市場取引が行われる ことが想定されている。

引用・参考資料

注意

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