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環境関連情報

動物由来感染症について #4

最近流行のウイルス・細菌感染症など

情報発信日:2016-2-26

はじめに

2016年2月2日付けの朝日新聞デジタルは、「世界保健機関(WHO)は1日、南米と北米の両大陸で感染症『ジカ熱』が急拡大しているとして、『国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態』を宣言した」と報じました。

本コラムではこれまで、中国での鳥インフルエンザ、アフリカのエボラ出血熱などの人獣共通感染症について、食の安全などと共に最も身近な環境問題として取り上げて来ました。

その後、2014年には我国においてデング熱が、2015年には、隣国韓国においてコロナウイルス感染による中東呼吸器症候群MERS(マーズ)が流行し、今回はジカ熱が南米及び北米、さらにはオセアニアにも拡大しつつあると報道されています。

ジカ熱は、マラリアやデング熱などと同じく、主に蚊を媒介とする感染症ですが、地球温暖化とも関連し、今後このような蚊やダニなどの昆虫を介した感染症は増加する傾向にあると思われます。このような感染症に対して正しい知識を持って、正しく怖がり、正しい感染予防を行うことが大切だと思われますので、今回は最近流行の感染症について解説したいと思います。

ジカ熱 (ジカウイルス感染症) とは(出典:国立感染症研究所)

国立感染症研究所によると、「ジカウイルス感染症(ジカ熱)とは、ヤブカ(Aedes)属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症である。ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属し、症状はデング熱に類似するが、それより軽い」と記されており、一昨年、我国で流行したデングウイルス感染症(デング熱)と同ように、主にやぶ蚊に刺されることにより感染する疾患と言えます。

感染した場合、潜伏期間は3~12日程度ですが、感染しても症状が出ない不顕性感染率が約80%とされています。症状が現れる場合、斑條丘疹性発疹、間接痛・関節炎、結膜充血、発熱(38.5℃以上は稀)、筋肉痛・頭痛など半数に風邪に似た症状が見られ、その他、めまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振などを来す場合もあると記されており、一般的な場合においては、重篤な症状は出ないようです。

しかし、過去の一部の症例報告において、ギラン・バレー症候群(感染や医薬品の副作用などによる神経性の疾患)や妊婦がジカウイルスに感染した場合に、ブラジルでは小頭症児が多発して脅威となっています。

通常は症状も軽く一週間程度で症状が消えるようですが、妊娠中の女性が感染すると小頭症の子供が生まれる可能性があり、注意が必要のようです。

図1 ネッタイシマカ(出典:国立感染症研究所) 図2 ヒトスジシマカ (出典:国立感染症研究所)

 

デング熱について(出典:国立感染症研究所)

国立感染症研究所によりますと、デング熱は「ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスの感染症である」として、感染しても「約50~80%が不顕性感染」ですが、「感染3 ~7 日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある」。

一部に、重症化してデング出血熱と言われる「重篤な血漿漏出、重篤な出血、重症臓器障害」を起こすことがありますが、大半の場合には輸液や解熱鎮痛剤程度により軽度の症状で終わるようです。

ジカ熱及びデング熱など蚊を媒介とする感染症は、一般的には軽度な症状で、短期間に回復する場合が多いようですが、一部の場合に重症化する可能性もありますので、予防に関しては、日中に蚊に刺されない工夫が重要です。

具体的には、長袖・長ズボンの着用、昆虫忌避剤の使用などを行うことが必要です。

MERS(中東呼吸器症候群)とは(出典:国立感染症研究所)

2015年に、隣国韓国において流行したMERS(中東呼吸器症候群)とは、国立感染症研究所や厚生労働省によりますと、「中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)は、2012年に初めて確認されたウイルス性の感染症です。主な症状は、発熱、せき、息切れなどです。下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。MERSに感染しても、症状が現われない人や、軽症の人もいますが、特に高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があります。中東地域からMERSの確定症例としてWHOに報告された者のうち、症状が悪化して死亡する割合は、約40%とされています。また、死亡例の約90%は、基礎疾患のある人との報告があります」と説明されています。

宿主はヒトツコブラクダと言われ、主に、飛沫感染(咳やくしゃみなどによる)又は接触感染によりヒトからヒトへ感染すると考えられています。

感染した人の近くで咳やクシャミなどの飛沫によって感染し、感染して症状が悪化した場合には、死亡する割合は40%と高いため、流行地域には近づかない、丁寧な手指洗い、医療用マスクや眼鏡・ゴーグル等の着用をするなど慎重な感染予防行動が必須です。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について

国立感染症研究所によりますと、「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症である」とされ、「感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす」とされ、「重症化した場合、致死率は6.3〜30%と報告されている」と言われています。

感染は、山や野原を歩いている時や、ペットが持ち込んで来た「マダニ」によって、起こります。

図3 フタトゲチマダニ  Haemaphysalis longicornis (出典:国立感染症研究所)

 

感染し、重症化した場合の致死率が高いので、野原や山などの入る場合は、肌の露出を避けて長袖のシャツやズボンを身に着けること、ペットを無防備の野原などに置かないことなど、感染予防に努めることが重要です。

最近、我国でも毎年、感染者が出ていますので、注意が必要です。

劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)

国立感染症研究所によりますと「劇症型溶血性レンサ球菌感染症は突発的に発症し、急速に多臓器不全に進行するβ溶血を示すレンサ球菌による敗血症性ショック病態である。メディアなどで「人食いバクテリア」といった病名で、センセーショナルな取り上げ方をされることがある」としており、2015年9月3日付け産経デジタルは「劇症溶血性連鎖球菌感染症」の国内患者が(2015年)8月23日までに291人に上ったことが9月2日、国立感染症研究所のまとめによりわかった。昨年の273人を超え過去最多で、6月24日までの報告では71人が死亡している」と報じています。

原因となる菌は「A群溶血性連鎖球菌」と呼ばれる細菌で、扁桃腺炎や皮膚炎などを起こすことのある一般的な細菌であり、通常は抗生物質で治療することが出来ます。しかし、傷口などからこの細菌が侵入した場合に、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず、突然発病して劇症化することがあります。なぜ劇症化するのかは、未だ判っていないようです。

劇症化する場合には、「初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、 発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群 (ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い」とされています。

感染は接触によりますので、予防には傷口がある箇所が不潔なものに触れないようにすることが重要です。

ノロウイルス感染症

ノロウイルスにヒトが感染すると、嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こしますが、その多くは数日の経過で自然に回復します。ノロウイルスは冬型の胃腸炎、食中毒の原因となるウイルスで、感染の流行の季節は、秋口から春先にかけてその発症者が多くなる傾向にあります。

ヒトへの感染経路は、主に経口感染(食品、糞口経路)で、感染者の糞便・吐しゃ物及びこれらに直接または間接的に汚染された物品類、そして食中毒としての食品類(汚染されたカキあるいは他の二枚貝類の生、あるいは加熱不十分な調理での、喫食、感染者によって汚染された食品の喫食、その他)が感染源の代表的なものとしてあげられます。

※糞口経路感染:一般に中間段階があり(時として複数の中間段階が存在する)、糞便に接触しかつ飲水前の処理が不十分である場合や糞便に触れた食物、不十分な汚水処理、糞便接触後の不十分な洗浄などにより感染する経路。ノロウイルス感染の他、A型肝炎、赤痢、腸チフス、コレラなどがあります。

ヒトからヒトへの感染としては、ノロウイルスが飛沫感染、あるいは比較的狭い空間などでの空気感染によって感染した例もあります。この場合の空気感染とは、結核、麻疹、肺ペストのような広範な空気感染(飛沫核感染)とは異なり、埃とともに周辺に散らばるような塵埃感染と言う表現の方が適切と考えられ区別されます。

一般的な予防処置としては、感染者の糞便中のノロウイルスが下水処理場での殺菌をかいくぐり(塩素抵抗性がある)、海などでカキや二枚貝に取り込まれる場合があるため、流行期にはこれら貝類の加熱をしっかりする、手指の入念な洗いを励行することが重要です。

まとめ

ウイルスや細菌感染症はこれらの原因となるウイルスや細菌の宿主の多くが人間以外の動物であり、蚊やノミ、ダニなどの吸血昆虫を媒介することが多く知られていますので、これらの感染症が心配される地域では、長袖長ズボンなど出来るだけ肌の露出を少なくし、防虫スプレーなどを塗布して行動する必要があります。

また、ウイルスや細菌は種々の変化を繰り返して生き延びようとして、元来は鳥インフルエンザのように、動物からヒトへの感染しか起こらず、ヒトからヒトへの感染は起こらないと言われていても、やがてヒトからヒトへ感染するように変性する場合も多くありますので、傷のある場合や粘膜に対して「不潔なモノ」との接触を避けたり、流行地では手指の入念な洗浄、マスクや眼鏡などを行ったり、油断することなく出来着る限りの予防に努めることが必要です。

これらの感染症が増えて来ている原因は種々ありますが、地球の温暖化により、蚊やノミ・ダニ、特に気温や湿度の高い地域を好む蚊などの昆虫の生息域が拡大している。森林や草原などの開発により、行き場を失った動物が人間の居住地域に接近して来たことなど、環境破壊も要因の一つになっていると思われます。

引用・参考資料

注意

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