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環境関連情報

環境マネジメントシステム国際規格ISO14001改定

情報発信日:2015-09-24

はじめに

1996年に制定された環境マネジメントに関する国際規格ISO14001に関して2004年の改正後、10年を経過しましたが、今回”A major change(大幅改正)”を目指して、2014年6月28日にDIS (Draft International Standard);ISO14001(DIS):2014」が公開されました。翌年の本年2015年7月2日にはDISを修正したFDIS(Final Draft International Standard)が発行され、現在賛否の投票が行われています。最終的にISO化され順調に推移すれば、日本語版であるJIS Q14001も2015年10月頃には発行される予定となっています。

環境マネジメントは企業活動において、益々重要な要因となってきていますが、前回の改正から10年が経過し環境問題も大きく変化してきている昨今、今回の改正は”A major change(大幅改正)”といわれており、この改正で何が変わるのか大いに興味のあるところだと思われます。

本稿では、最新のFDISの英語版の入手及び和訳が難しいため、現在公開されているDIS「ISO14001(DIS):2014 日本規格協会」、及び、FDISに関する間接情報をもとに今回の改正の要点をまとめてみました。

 

そもそも、環境マネジメントシステムISO14001とは

本コラムでは、過去においても環境経営を進めるにあたっては環境マネジメントシステムに則り行うことが重要であることを述べてきたつもりですが、振り返ってみるとISO14001環境マネジメントシステムについては、説明したことがありませんでしたので、この機会に簡単に整理します。

1992年の地球サミットをきっかけに持続可能な開発を進めるための環境マネジメントシステムに関する国際規格策定が進められ、約15の規格からなる環境マネジメントシステムが作られ、ISO14000ファミリーまたは環境マネジメントシステムに関する国際規格群と呼ばれています。

このうち、環境ISOまたはISO14000ファミリーと呼ぶ場合は、代表として「要求事項」を定めたISO14001を指します。

「要求事項」とは、ISO14000ファミリーが支援する環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management Systems)が満たさなければならない事項の事であり、具体的には「組織(企業や各種団体など)の活動、製品やサービスによって生じる環境への影響を持続的に改善するための仕組み(システム)を構築し、その仕組み(システム)を継続的に改善して行くPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを構築することが要求されています。この中で、有害な環境影響(環境への負荷)の低減、有益な環境影響の増大、組織の経営改善及び環境経営が期待されています。

但し、環境負荷低減や有益な環境影響の増大などの「基準値」や「評価に関する具体的な取り決め」はありませんので、組織として自主的に目標を決めて継続的に改善を行う仕組みを構築するものといえます。

このISO14001は1996年に初めて制定され、その後2004年11月に規定の明確化とISO9001との両立性という原則により規格改正が行われ、現在のISO14001として運用されてきています。

ISO14001は上述の通り、環境マネジメントシステムを行うときの「要求事項」を定めており、詳細はISO14000ファミリーの規格、例えばISO14004では、環境マネジメントシステムを行うに当たっての組織の在り方などの一般指針が定められています。また、ISO14050では環境マネジメントシステムに関する用語についての解説を行っています。

 

ISO14001の審査登録制度

組織や団体などがISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築したことを一般社会に伝える方法には「自己宣言」と「第三者審査機関による審査登録」の二つがありますが、一般的には費用はかかりますが、信頼性の問題で後者の「第三者認証」を選択する方が多いようです。この第三者審査機関による認証機関は概ね3年間で、継続するには「維持審査」が必要です。

これは、「環境マネジメントシステムがISO14001に適合しているかどうか」の適否の審査を行い適合している場合に登録することを審査登録または認証といいます。

第三者審査機関は「国際標準化機構内の政策開発委員会のひとつである適合性評価委員会(CASCO)が作成した規格(ISO/IEC 17011)に適合した『認定機関』」であって、「適合性評価機関、すなわち『審査登録機関(認証機関)』、審査員の資格を与える『審査員評価登録機関』、審査員になるための研修を行う『審査員研修機関』の審査・認定・登録を統括しています」。さらに、認定機関は他の認定機関と相互に承認し合うことにより、審査レベルの標準化や適合性を維持するシステムが構築されています。

 

2015年のISO14001の主な改訂点

本題のISO14001(DFS):2014における主なポイントは以下のとおりです。

【全体として3つの大きな基本方針での改正】

(1) 3つのISOマネジメントシステム規格間の整合性を高める
EMS(環境マネジメントシステム:ISO14000)、QMS(品質マネジメントシステム:ISO9000)、ISMS(情報セキュリティシステム:ISO27000)に関して上位構造・共通テキストなどが適用されて、3つの規格の整合性が図られた。

(2) 新しい考え方の取り入れによる時代に即した規格へ
「ISO14001の将来像」報告書における「改定推奨事項」が考慮された。
・持続可能な発展・CSRの観点を重視した環境マネジメントシステムとして、ISO26000(社会的責任に関する手引き)の環境原則を考慮
・環境マネジメントシステムと戦略的ビジネスマネジメントとのリンクの強化
・環境パフォーマンスの改善を重視
・ライフサイクル思考及びバリューチェーンの観点の拡充
・法令順守の徹底
・コミュニケーションの拡充

(3) 2004年版との整合性、基本原則及び要求事項の維持と改善の確保 、

 

【個別の9つの改正ポイント】

 

(1) 経営戦略、事業戦略に活用できる規格へ

今回の改定の最大の意図はこの「ISO14001」をより経営戦略や事業戦略に即して活用できるようにする事であると思われ、「組織と事業」をにらみ、「社会の将来像の予測し先を見通した戦略的ビジネスの展開を行う」ために役立つ規格を目指している。

 

(2) 戦略的環境経営(環境マネジメントシステム(EMS)の適用範囲の決定~戦略的な環境管理)

ISO14001を組織のどの範囲に適用するかを決定する場合に、その根拠を明確にすることが求められ「組織を取り巻く内外の状況」を把握し、「EMSが意図した結果を達成するための能力」に関する課題を捉えることが要求される。 これらの課題には、「組織が環境に与える影響」と逆に「環境が組織に与える影響」も含まれ、この事は資源やエネルギー、気候変動などの環境変化要因が組織の活動に対して、現在及び未来にどのような影響を与えるのかEMSの成果と関連で考慮することが求められている。


(3) リーダーシップ(トップダウンによる意思決定)

トップマネジメント(最高位で組織を経営管理する人又は人々)による責任で推進することが求められている。

トップマネジメントが必ずしも全ての項目を行う必要はないが、トップダウンによる意思決定が強く求められ、「実施を確実にする」という意味では「最終的な責任を負う」ことを要求。


(4) リスク及び機会への取り組み

「リスク及び機会」という言葉が2015年版で新たに導入された。

「リスク及び機会」とは、「潜在的で有害な影響(脅威)と潜在的で有益な影響(機会)」と定義している。

組織がISO14001を事業に展開して行く上で、リスク分析(脅威と機会の両方)を行って計画立案することを要求。

「リスクと機会」は、環境側面、順守義務、組織の状況、利害関係者のニーズと期待などから発生する課題であり、これらの課題の中から「ISO14001が意図する成果の達成」、「望ましくない影響の防止または低減」、「継続的な改善の達成」のための「リスクと機会」を決定することが求められている。


(5) 環境の保全

ISO14001は「地球環境保全への取り組み」であり、また「対象とする環境影響が広範囲」であることを認識して、組織が自主的な取り組みとしてこれに当たることを要求。


(6) 環境業績(パフォーマンス)の重視

今回の改定では「パフォーマンス」が強調され、随所に「パフォーマンス」という事が用いられている。

これは、従来よりも「パフォーマンスをしっかり評価してコミットすること(成果を出すこと)」が要求される。

これはプロセスよりも成果を出すことが強く要求されている。「組織が『自分達が意図した成果』にどこまで到達するのかをはっきりさせ、これを戦略として、将来をも見据えたマネジメントに繋げて行くことが求められている。


(7) ライフサイクルの考え

製品やサービスの環境側面の特定に当たり「ライフサイクル」の考え方を行う。

 

(8) 情報の交換

「内部情報の交換」と「外部への情報発信」を同程度に重視する。

 

(9) 文書化と効率化

「文書化された情報」とは「文書」及び「記録」で、審査のためのドキュメント作成など、時代を経て陳腐化した作業は省く。文書管理はIT時代にふさわしく、文字だけでなく「図版、画像、映像、デジタル情報など」の幅広い情報を管理することが出くるようになった。

 

まとめ

(1) ISO14001は環境マネジメントを行う上での要求事項を定めた国際規格で1996年に制定されましたが、2004年の改正後、10年を経過した2014年から、大幅な改正に向けた作業が続けられています。

(2)2014年6月28日にDIS(Draft International Standard);ISO14001(DIS):2014」が公開されました。2015年7月2日にはDISを修正したFDIS(Final Draft International Standard)が発行され現在賛否の投票が行われています。最終的にISO化され、日本語版であるJIS Q14001も順調に行けば2015年10月頃には発行される予定となっています。新しい規格は3年の移行期間を経て適用になります。

(3) 現在までの情報では、DISとFDISの間での大きな違いはないようであり、今回の改定において文言上の大きな変更はない模様です。

(4)主な改定点は、

・EMS(環境マネジメントシステム:ISO14000)、QMS(品質マネジメントシステム:ISO9000)、ISMS(情報セキュリティシステム:ISO27000)に関して上位構造・共通テキストなどが適用されて、3つの規格の整合性が図られました。

・ISO14001の従来のどちらかというと形式的な運用から、実際の経営戦略、事業戦略など実務に即した運用を目的として、目標設定の根拠、組織の置かれた状況の把握、将来的な見通し、地球規模での環境の意識、ライフサイクルの意識、トップマネジメントの関与などが明確に示され、プロセスよりも結果を重視する方向性が強く打ち出されているように感じられます。

引用・参考資料

注意

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