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環境関連情報

「環境適合(配慮)設計」の多面性について

EUのErP指令から米国EPAにおけるDfEまで

情報発信日:2014-12-24

はじめに

米国環境保護庁(EPA: United States Environment Protection Agency)は、人間や環境に配慮して設計された一般消費者向けの製品に対して「環境適合(配慮)設計(DfE: Design for Environment)が施されていることを示すラベル」の表示を認めるプログラムを実施しており、その製品数はこの15年間ほどで2,500品目を越えたと伝えています。

これは、米国環境保護庁(EPA)が示している厳しい基準を満たした製品に対して、より安全な製品であることを一般の消費者や企業、その他の団体の購買担当者が認識できるように、今回ラベルを表示することにしたようです。

さて、この米国環境保護庁(EPA)が実施している環境に配慮設計した製品の内容ですが、「製品に含まれている化学物質が可能な限り安全であること」と述べており、EUにおけるエコデザイン指令として知られているErP指令(エネルギーに関係する製品に対して省エネを求める)や、日本における3R(リユース、リサイクル、リデュース)を中心としたグリーン製品の定義とかなり異なる内容になっており、同じ環境適合(配慮)設計でも地域や国の特性によって、その多面性が見てとれます。

当工業会においても、現在バルブ製品の環境適合(配慮)設計を行うための「バルブ製品アセスメントガイドライン」を発行するとともに、環境に配慮して設計された製品に対して「環境表示」を行うための評価方法などの検討を続けておりますが、今回は「環境配慮設計の多面性」に注目し、種々の考え方を紹介したいと思います。

 

「環境適合(配慮)設計」に対する色々な考え方

現在、環境問題にはエネルギーや資源の枯渇問題、温室効果ガス排出による気候変動問題、有害化学物質による人や生態系への影響、砂漠化、乱開発などによる生物多様性など多くのものがありますが、どの問題の対処に重きを置くかは、国や地域によって、それぞれ差異があります。また、「これらの問題を一括して対処する」のか、「個別に対応して行く方が良い」のか、考え方の違いもあります。

1. EUにおける環境適合(配慮)設計に対する考え方

環境問題に関して先進国・地域と言われるEUにおいてこの点を見てみると、「欧州はエネルギー資源が少ないので、他の地域や国との経済競争に勝つためには、『極力エネルギーを使わない』」という考え方が根底にあります。

このため、EUにおけるエコデザイン設計とはエネルギーを極力使わない製品と定義されているものと思われます。

しかし、一方では有害化学物質に対する対応はRoHS指令やREACH規則などで実施するという方向性を見せています。

2. 米国における環境適合(配慮)設計に対する考え方

Look for the Design for the Environment label

環境保護庁は 1992 年に、有害化学物質による汚染と、それによる人や生態系などの環境に対するリスクを低減させることを目的とした、環境適合(配慮)設計(DfE)プログラムの運用を開始しています。このプログラムは、製品に含まれる化学物質が「健康と環境にとってより安全であると判断できるか否か」を評価し、適合品にラベル表示を認めるもので、また一般消費者向け製品と工業/商業用製品との識別行うものとなっています。 適合品には左記の表示が認められます。


3. 日本における環境適合(配慮)設計に対する考え方

我国は「資源にもエネルギーにも恵まれない国」という観点から、「一度使ったらなくなってしまうエネルギーは極力使わない、一度使っても再利用可能な資源は繰り返し使う」といった「循環型社会形成推進基本法」をベースとした「3R政策(リユース、リサイクル、リデュース)」を推進することに重点が置かれているため、環境適応(配慮)設計にも、3Rに関する項目が多く盛り込まれるケースが多いように思われます。 そういう意味では、日本における環境適応(配慮)設計は偏りがなくバランスが取れたものといえると思います。

4. その他の環境適合(配慮)設計に対する考え方

1) 易分解性設計(DfD: Design for Disassembly)

Active Disassembly Research Ltd. や米国のワシントン州シアトル市が作成したガイドラインが知られています。これは、製品が(ワシントン州の場合は建築構造物)寿命に達した時に、構成部品、材料などが簡単に分解・分別できて容易に回収することを可能にするもので、これにより可能な限り回収した部品や材料を廃棄物とすることなく、再利用や再使用できるようにすることを可能にするものであり、日本における環境適合(配慮)設計にも、この考え方は取り入れられています。

2) 完全循環型設計 (C to C, Cradle to Cradle 揺りかごから揺りかごまで)

2012年2月16日付けの本コラム「もう一つのC to Cとは ~究極のリサイクルへ」に詳細を記載してありますが、完全循環型設計(C to C)とは、1990年代末から2000年代初期頃にアメリカ人の建築家ウィリアム・マクダナー(William McDonough)とドイツ人の化学者マイケル・ブラウンガード(Michael Braungart)博士によって提唱された考え方で、揺りかご(地球)から得た貴重な資源で作ったモノを使い終えたら、ゴミとして処分場(墓場)に捨ててしまうのではなく、「ゴミ=資源」という考え方に立って、ゴミを出さない完全循環を目指す全く新しいモノ作りの考え方を指します。

「従来の環境経営で用いられてきたリサイクルやリユースという意味は、使い捨てよりは、”less bad(多少はマシ)”ではあるが、どちらかというと消極的な考え方で、リサイクルやリユースされるごとに品質的には劣化していき、処分場に行くのを多少遅らせるだけである」とするのは、C to C(完全循環型設計)の提唱者の意見です。

20世紀の後半は大量生産と大量消費の時代でした。しかし、エネルギーや資源の枯渇が危惧され始め、大気や水の汚染が地球規模に拡大されてきた現在、資源のリサイクルやリユースを考える人々が増え、エネルギーも再生可能なエネルギーの利用率を高めようという動きが出てきています。 各国や各地域における環境に関する法規制や基本的な考え方をまとめると以下の表のようになります。


環境問題解決の方法は一つではない

現在我々が直面している大きな環境問題には、温室効果ガス排出量の増大による気象変動の問題、資源やエネルギーの枯渇問題、有害化学物質による汚染問題、乱開発による森林減少と砂漠化の問題及び生物多様性の崩壊などがあります。しかし、これらのどれ一つを取ってみても、容易に解決できる問題は少なく、また解決方法も「正解は一つしかない」というものではありません。場合によっては、今までの生活や経済に対する考え方や価値観を180度ひっくり返す必要があるものまであります。

例えば、何の対策も立てずにこのまま推移した場合には、人類や生態系に対して修復不可能なダメージを受ける危険性があるといわれている温室効果ガス排出量削減問題があります。温室効果ガス排出量を削減するには温室効果ガス排出量増大の主原因となっている、発電、自動車など交通機関の燃料、工場等における熱エネルギー利用のために使われている石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の燃焼量を削減しなくてはなりません。しかし、単純に削減した場合には現状の生活レベルを大幅に低下させたり、経済を縮小させたりしなければならないため、温室効果ガス発生量の少ない、または発生しない代替エネルギー源を開発しなくてはなりません。現在世界的に風力や太陽光などの再生可能エネルギーの開発が急速に進んでいますが、風が吹かなければ発電できない風力発電や、夜間は発電できない太陽光発電など、自然現象任せで、必要な時に必要なだけのエネルギーを作りだせない欠点があるために、現状ではどんなに頑張っても再生可能エネルギーの割合は20~30%程度が限度といわれています。

一方、将来は化石燃料を代替するといわれていた原子力ですが、日本における福島第1原子力発電所の事故以来、各国ともに「原子力発電」に対する積極的な導入は控える方向になってきていると言えます。このような状況において、現状の生活や経済を維持しながらどのように温室効果ガス排出量の削減を図る事ができるのでしょうか。排出量が削減できないのであれば、排出した温室効果ガスを回収し固定化して有効利用を図ろうという研究開発が一部で進み始めています。当該技術に関しては別の機会に述べるとして、上述したように、環境問題を解決する場合の対策は決して一つの道筋を辿るものではなく、事実を正確に知り多面的な見方をして行く中で対処法を探して行くしかないのではと思います。

現在日本では、全ての原子力発電所が停止していますが、「原発の再稼働反対」を唱えるならば、温室効果ガスの問題については、どう対応するのかを問われることになります。再生可能エネルギーの導入には、安定性と経済性が問題となります。今後、日本のエネルギー問題について、「反対、反対」ではなく、どうするのがベストなのか、皆で広く議論する必要があると思います。

 

まとめ

環境適合(配慮)設計の方向性一つとってみても、環境問題というのは、色々な要因があるため、解決方法が「唯一」ではなく、且つ「何かを得るために何かを捨てる」という選択を迫られる場合が、多いように思えます。

本稿を執筆している現在、ペルーのリマにおいて、第20回気候変動条約締約国会議が開催されています(内容については、次月に書きたいと思います)。現在のように、石炭や石油、天然ガスなど化石燃料をエネルギー源として燃やし続けて温室効果ガスを排出し続ければ、人類は不可逆的な大ダメージを受けるといわれています。これを避けるためには、(1)徹底的な省エネを行う、(2)温室効果ガスを排出しない代替エネルギーへ転換する、(3)二酸化炭素を吸収・固定化する、などの手段が考えられます。(1)については、誰も異議を唱えないとは思いますが、(2)は原子力の利用をどうするのか、再生可能エネルギーの不安定さ、送電網の整備、経済性をどう解決するのか、(3)はやはり経済性に課題があります。

先に述べたように環境問題にも色々あります。気候変動問題、資源とエネルギーの枯渇問題、有害化学物質によるヒトや生態系への影響、砂漠化など、環境適合(配慮)設計を行う場合にも、どの環境問題を優先するかを明確にして行くことも大切ではないかと思います。

引用・参照情報

注意

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