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環境関連情報

第四次エネルギー基本計画を閣議決定

原発を重要なベースロード電源と位置づけ

情報発信日:2014-06-25

はじめに

経済産業省資源エネルギー庁は2014年4月11日付けで「新しいエネルギー基本計画が閣議決定されました」と発表しました。エネルギー基本計画とは、中長期的に原子力、火力、水力、再生可能エネルギーなどによる発電の割合をどのようにするかなどを定めたエネルギー供給の基本的な計画です。これは、エネルギー政策基本法に基づき、概ね3年ごとに見直しが行われます。定められた計画は閣議決定され、地方自治体や電力会社は計画の実現に向けて協力する「責務」を追うことになります。

過去のエネルギー基本計画では、2010年に総電力に占める原子力発電の割合を2030年までに50 %にまで高めるとする計画が見直されました。しかし、2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故を受けて2011年5月にこの計画が白紙に戻され、当時の野田政権は2012年9月に「2030年代に原発ゼロを目指す新たなエネルギー戦略」をまとめましたが、経済界の反発を受けて閣議決定は見送られてきました。

その間、原発問題は総選挙や東京都知事選などでも「原発即時全停止」から「新しい安全基準で審査し、合格すれば再稼働」とする案まで議論されてきましたが、この度、安倍政権下で、新たなエネルギー基本計画が閣議決定されましたので、概略を伝えたいと思います。

 

2014年度版エネルギー基本計画の概要

エネルギー基本計画は2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、政府が策定するもので、「安全性」「安定供給」「経済効率性の向上」「環境への適合」というエネルギー政策の基本方針に則り、我国のエネルギー政策の基本的な方向性が示されるものです。

最初の計画は2003年10月に策定され、その後2007年3月に第二次計画、2010年6月に第三次計画が策定され、今回の計画は第四次計画となるもので、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故以降、最初の計画として位置付けられ、注目を集めています。

前回、第三次計画においては、2030年に向けた目標として、エネルギー自給率と化石燃料の自主開発比率を倍増して自主エネルギー比率を約70%とすること、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%とすることなどが記載されていました。

今回の計画では、福島第一原子力発電所の事故を反省して、前回の計画を白紙に戻して大幅な見直しが行われています。

以下、要点を列記します。

 

<序章>

(1) 我が国は、エネルギー源の中心となっている化石燃料に乏しく、その大宗を海外からの輸入に頼るという根本的な脆弱性を抱えており、エネルギーを巡る国内外の状況の変化に大きな影響を受けやすい構造を有している。
(2) 第三次計画では、2030年に向けた目標として、エネルギー自給率と化石燃料の自主開発比率を倍増して自主エネルギー比率を約70%とすること、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%とすることなどを記載していた。
(3) しかし、第三次計画の策定後、エネルギーを巡る環境は、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を始めとして、国内外で大きく変化し、我が国のエネルギー政策は、大規模な調整を求められる事態に直面することとなった。
(4) 東京電力福島第一原子力発電所事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興・再生を全力で成し遂げる。震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する。ここが、エネルギー政策を再構築するための出発点であることは言を俟たない。
(5) 政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、このような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。
(6) 福島第一原子力発電所の事故発生から約3年が経過する現在も約14万人の人々が困難な避難生活を強いられている。原子力賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・汚染水対策や風評被害対策などへの対応を進めていくことが必要である。また、使用済燃料問題、最終処分問題など、原子力発電に関わる課題は山積している。
(7) これらの課題を解決していくためには、事業者任せにするのではなく、国が前面に出て果たすべき役割を果たし、国内外の叡智を結集して廃炉・汚染水問題の解決に向けた予防的かつ重層的な取組を実施しなければならない。
(8) 一方、原子力発電所が停止した結果、震災前と比べて化石燃料の輸入が増加することなどにより、日本の貿易収支は赤字幅を拡大してきている。こうした化石燃料への依存度の高まりは、電気料金を始めとしたエネルギーコストの増大となって、経済活動や家計に負担をかけており、雇用や可処分所得へも影響が及ぶ構造となっている。
(9) あらゆる国民生活・社会活動の基盤となる安定的かつ低コストエネルギー需給構造である。
(10) しかし、原発が全停止した現状は、電力供給構造における海外からの化石燃料への依存度は第一次石油ショック当時よりも高い状況にあり、エネルギーコストの上昇と温室効果ガスの排出量の増大の原因となり、我が国の経済・産業活動や地球温暖化対策への取組に深刻な影響を与えている。
(11) 我が国が目指すべきエネルギー政策は、徹底した省エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの導入加速化、石炭火力や天然ガス火力の発電効率の向上、蓄電池・燃料電池技術等による分散型エネルギーシステムの普及拡大、メタンハイドレート等非在来型資源の開発、放射性廃棄物の減容化・有害度低減など、具体的な開発成果を導き出せるような政策でなければならない。

 

<第1章 我が国のエネルギー需給構造が抱える課題>

(1) 我が国は、国民生活や産業活動の高度化、産業構造のサービス化を進めていく中で、1973年の第一次石油ショック後も様々な省エネルギーの努力などを通じてエネルギー消費の抑制を図り、2012年の最終エネルギー消費は1973年の1.3倍の増加に留めた。
(2) 原子力発電所が停止した結果、2012年時点におけるエネルギー自給率は、6.0%まで落ち込み(原発事故
発生以前はエネルギー自給率19.0%)、国際的に見ても自給率の非常に低い脆弱なエネルギー供給構造となっている。
(3) 震災後の原発停止によって、化石燃料に依存する割合は震災前の6割から9割に急増した。これにより、
日本の貿易収支は、化石燃料の輸入増加の影響等から、2011年に31年ぶりに赤字に転落した後、2012年は赤字幅を拡大し、さらに2013年には過去最大となる約11.5兆円の貿易赤字を記録した。ベースロード電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算される。
(4) 将来のエネルギーとして期待の大きな再生可能エネルギーは、導入加速のため、固定買取制度を設けたが、需要者への負担も増加し、電気料金値上げの一因になっている。
(5) シェールガスの発掘により、米国内の天然ガス価格は欧州の4分の1以下、日本の6分の1となっており
(2012年平均)、この地域間のエネルギー価格差が継続した場合、世界で産業部門のエネルギー使用量の7割を占めるエネルギー集約型産業(化学、アルミ、セメント、鉄鋼、製紙、ガラス、石油精製)については、日、米、EUを比べた場合、米国のみが拡大し、日、EU合わせて現在の輸出シェアの3分の1を失うとの試算が示されている。
(6) 温室効果ガスに関して、原子力発電を火力発電に代替したことにより、2010年度の二酸化炭素排出量と比べて、2012年度の一般電気事業者以外の排出量が29百万トン減少しているにも関わらず、一般電気事業者の排出量が112百万トン増加した結果、全体として二酸化炭素排出量は83百万トンの大幅な増加となった。
(7) 東日本大震災後、我が国の最終エネルギー消費は、2010年から2012年にかけて4.2%減少したが、そのうち電力消費については、8.0%の減少となり、エネルギー全体の消費減少を上回る減少幅となった。

 

<第2章 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針>

(1) 我が国のエネルギー需給構造は脆弱性を抱えており、特に、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故後に直面している課題を克服していくためには、エネルギー需給構造の改革を大胆に進めていくことが不可避となっている。
(2) エネルギー政策の基本は、 i)安全性(Safety)を前提とした上で、ii)エネルギーの安定供給(Energy
Security)を第一とし、iii)経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、iv)環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである。
(3) 安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しないので、
“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の構築と政策の方向が重要。
(4) 海外の情勢変化の影響を最小化するための国産エネルギー等の開発・導入の促進による自給率の改善が必要であり、国産エネルギーとして活用していくことができる再生可能エネルギー、準国産エネルギーに位置付けられる原子力、さらにメタンハイドレートなど我が国の排他的経済水域内に眠る資源などを戦略的に活用していくための中長期的な取組を継続し、自給率の改善を実現する政策体系を整備していくことが重要である。加えて、省エネルギーや環境負荷のより低いエネルギー源の利用用途の拡大も重要。
(5) エネルギー供給計画の基本は
i)発電(運転)コストが、低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源となる「ベースロード電源」として、地熱、一般水力(流れ込み式)、原子力、石炭
ii)発電(運転)コストがベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ミドル電源」として、天然ガスなど。
iii)発電(運転)コストは高いが、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ピーク電源」として、石油、揚水式水力など。
(6) 各エネルギーに対する政策の方向性は
i)再生可能エネルギー:2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを進める。 ・太陽光発電:非常用電源と位置づけ。コスト低減、安定供給が課題。 ・風力発電:経済性も確保できる可能性 ・地熱発電:資源も十分であり、将来的に発電コストも低く、安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源と期待。 ・一般水力(流れ込み式)発電:運転コストが低く、ベースロード電源として、また、揚水式については、発電量の調整が容易であり、ピーク電源としての役割を担っている。
ii)原子力発電:燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。但し、福島第一原発事故を深く反省し、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、再稼働は原子力規制委員会の判断を優先させる。なお将来的には原発依存度について、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。
iii)火力発電
・石炭火力発電:安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源の燃料。今後は、より高効率、温室効果ガス排出量削減に取り組む。
・天然ガス火力発電:石油と比べて地政学的リスクも相対的に低く、化石燃料の中で温室効果ガスの排出も最も少なく、水素エネルギーへ発展することも期待。
・石油火力発電:安定供給に対する不安は有るが、重要なエネルギー源であり、災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」になる。
(7) 現在、東京電力福島第一原子力発電所事故後の原子力発電所の停止を受け、それまで原子力が3割前後の比率を占めていた電源構成は、原子力発電の割合が急激に低下し、海外からの化石燃料への依存度が上昇して88%を超え、電力供給構造における海外からの化石燃料への依存度は、第一次石油ショック当時(76%の依存度を記録。その後、石油代替や原子力の利用などにより60%強まで改善)よりも高くなっている。最近の電気料金上昇の最大の要因が発電用化石燃料費の大幅増大であることを踏まえ、化石燃料調達コストの低減を官民挙げて実現していくことも極めて重要である。

後半は、今後の各エネルギーの課題や解決へ向けた取り組みとして、水素エネルギーや再生可能エネルギーの開発計画や、我国の独自エネルギーであるメタンハイドレードなどの開発、福島第一原子力発電所事故を反省し、原発事故防止に対する具体的な取組計画、国際的な協調、電力供給網の改革、強靭化などについて述べていますが、割愛します。

 

まとめ

(1) 我国のエネルギー政策の基本はS+3E(安全性、安定供給、経済性、環境性)である。
(2) 我国のエネルギーは海外への依存度が大きく自給率が低い。国際情勢の変化などで、エネルギー供給が不安定に成り易い脆弱性がある。このため、自給率を高め、エネルギー供給の安定化の為に、原子力エネルギーと再生可能エネルギーの比率を高める方向で進んで来た。
(3) しかし、福島第1原発の事故により、前回のエネルギー基本計画を根本的に見直す必要性に迫られて来た。
(4) 一方、国内の原発が全て停止している現状は、エネルギー面で経済的に大きな負担があり、ここ数年の貿易収支は大幅な赤字となり、また温室効果ガスの排出も増加して来ている。
(5) この様な現状を踏まえ、海外に多くのエネルギー供給を依存している以上は、エネルギーの安全保障という観点からは「多様・多層なエネルギー源を持つ」という事が基本となる。
(6) 従って、種々の検討を行った結果、
i)発電(運転)コストが、低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源となる「ベースロード電源」として、地熱、一般水力(流れ込み式)、原子力、石炭
ii)発電(運転)コストがベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ミドル電源」として、天然ガスなど。
iii)発電(運転)コストは高いが、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ピーク電源」として、石油、揚水式水力など。 を基本とする。
(7) 但し、原子力発電については、福島第一原発の事故を猛省して二度と同じ過ちを犯さないため、世界最高水準の安全規制を実施し、個々の原発の再稼働に対しては原子力規制委員会の判断と国民の理解を優先して、行う。また、核廃棄物の再処理や最終処分についても、開発を急ぐ。
(8) 再生可能エネルギーについては、個々の特性を見極めて課題解決を目指すが、我国特有の地熱発電開発に力を注ぐ。地熱発電は、資源が豊富で発電コストも低廉で安定供給可能。
(9) 水素エネルギー開発、メタンハイドレード開発なども力点を置く。また、コジェネや省エネも更に進める。

 

最近の朝日新聞に掲載されている福島第一原子力発電所の当時の所長であった吉田さんの調書によると、事故は、一歩間違っていたら日本の半分が高濃度放射性物質で覆われかねない寸前にあったことが述べられていますが、千年に一度とも言われる大地震による想定外の大津波に襲われたにも拘わらず不幸中の幸いであり、「原発再稼働反対」「原発即時全廃止」を言う人々の気持ちもわかりますが、安定供給、経済性や温室効果ガスの問題を考えると、出来るだけ早期に他のエネルギーに切り替えることを目指すが、当面は原発を再稼働させるということが、現実的なように思えます。但し、福島第一原発の事故の原因となった、外部電源喪失時の対策、原子炉異常圧力を低下させるためのベント法、日頃から種々の事故を想定したシミュレーション・操作訓練などを再発防止対策は徹底して欲しいと強く要望します。

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