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EUにおける環境政策 #3

2010年から2050年に向けてのEUの目的・目標の概要

情報発信日:2013-11-25

はじめに

RoHS指令、ELV指令、REACH規則などの化学物質規制やEuP指令・ErP指令などの省エネ規制など世界の環境法規制を先導するEUですが、このような法規制は「制定されたから従う」「追随する」という守りの姿勢から、「次は多分こうなるから、こう備えよう」「これを上手く利用して自社の優位性を早く確立しよう」といった攻めの姿勢に転じないと、非常に苦しい道のりを歩くことになってしまいます。このような守りの姿勢から攻めの姿勢に転じるには、「EUでは何が問題で、何を解決しようとしているのか」というEUの基本的かつ中長期的な経済や環境に関する戦略や背景を知る必要があると思われます。

そこで、今回は欧州環境庁が掲げる「2010年から2050年に向けた目的・目標の概要」について、解説したいと思います。

 

欧州環境庁(緒言)

※以下欧州環境庁のホームページよりの仮和訳

EU法は、2010年から2050年までの間に対処すべき、環境に関する130以上の個別の目的と目標を定めた法で、欧州環境庁が出した報告書では、これらの目的・目標は、欧州の「グリーン経済」移行を支えるのに役立つマイルストーンをもたらすものとしている。

 

グリーン経済(Green Economy)

「グリーン経済(Green Economy)」は、近年政策論議の優先議題となった。しかし、実際問題として、この「グリーン経済」という概念は何を意味し、また、この戦略的ゴールへの進捗状況をどのように測ることができるのか? EEA(欧州環境庁)の新しい報告書「欧州におけるグリーン経済へ向けて」では、EU法が規定する2010年から2050年までの環境目標・目的の包括的な概観と、それらが達成されるまでの進捗の分析例を挙げ、その答えを提供している。

欧州環境庁長官のHans Bruyninckxは、「この報告書は、環境保護のための広範囲の政策合意に我々が成功している一方、これらの政策が依然として課題であることを示している。我々は、EUの目標であるグリーン経済構築に向け前進しているが、2020年とそれ以降に向け、圧力をかけ続ける必要がある」と述べている。

この報告書は、2010年から2050年までの期間にEUが目指す63の法的拘束力のある目的、68の法的拘束力のない目標を特定している。法的拘束力のある63目的のうち62目的は、2020年以前に最終期限を迎える。しかし、問題を根絶するためには2020年以降にも渡る長期間の努力が必要となるだろうケースがほとんどであるため、現状における目的と目標の大部分は、グリーン経済へ移行するための暫定的なステップと見なされている。

 

目的への前進

(1) 2020年までにエネルギー使用量の20 %を削減

EUは、通常のビジネスで使用されると予測されるエネルギーの20%を2020年までに削減しようとする法的拘束力のない目標を持っている。これが意味するのは、消費を1990年代半ばよりも若干少なくしなければいけないということであるが、傾向としては増加の方向にある。したがって、2020年までにこの目標を達成するためには、政策実行の強力な推進、場合によっては、追加の政策も必要になると思われる。

(2) 気象変動の低減とEU加盟国に対する包括的な支援

EUには、気候変動を軽減させるための政策と並んで、加盟国が気候変動に適応するのを助けるいくつかの政策があり、欧州委員会は全加盟国が包括的な適応戦略を採用することを奨励している。2013年半ばまでに、うち16か国がこれを達成した。

(3) 大気汚染の改善とPM2.5の改善

大気汚染に関しては、「大気汚染に関する課題別戦略」で設定された2010年の排出目標に向け、順調に進捗している。2020年目標を達成するためには継続的な努力が必要で、中でも微粒子(PM2.5)減少に向けた努力を加速しなければならない。目標達成の具現化は、PM2.5を除く汚染物質に関しては技術的には可能である。

(4) 廃棄物の削減

もう一つの拘束力のない目標は、一人当たりの廃棄物の絶対量を2020年までに低下させる必要性です。予測として2020年に僅かに未達となる傾向にあります。しかし、この傾向は曖昧で何らかの助長される因子により2007年以降において廃棄物の量は低下しています。

法的拘束力のない別の目標では、一人あたりの廃棄物量を2020年までに明らかに低下させるとしているが、予測では、2020年目標に僅かに達しないことを示す傾向が見られる。しかし、原因はよく分からないが、2007年以降の廃棄物量は減少している。

(5) 埋め立て廃棄物ゼロ

EU加盟国にはもう一つの廃棄物関係の目標があります。それは2020年までに廃棄物の埋め立て量をゼロに近づけなければならないことを示しています。2011年における廃棄物量が179kg/人であることから推定すると、2020年には114kg/人であり、埋め立て量をゼロにするという目標を達成するためには廃棄物管理において急進的な変革が必要に思えます。

EU加盟国には、2020年までに廃棄物の埋め立て量をゼロに近づけなければならない、という目標もある。傾向からは、2011年に一人あたり179kgだった埋め立て量は2020年には114kgとなると推定される。埋め立て量ゼロという目標達成のためには、廃棄物管理における抜本的な変革が必要と思われる。

 

個別的な環境目標への対応

(1) EUの気候変動とエネルギー使用量

EUは、エネルギーと温室効果ガス発生の削減による気候変動防止とを連動させて考えており、2020年に向けて法的拘束力のある野心的な目標を持っている。この目標は「20-20-20」として知られており、3つの鍵となる目標を2020年に向けて設定している。
・温室効果ガスの排出量を1990年より20 %減らすこと
・EUにおけるエネルギー消費量のうち再生可能エネルギーの率を20% まで高めること
・EUにおけるエネルギー効率を20 %改善すること

(2) 低炭素経済への関与

この目標は2007年3月に欧州が高エネルギー効率で低炭素経済に変革することを義務づけ、2009年の「気候とエネルギーの統括政策」を通して実行に移された。

EUは世界の先進国及び発展途上国が温室効果ガスの放出量削減に関して、自分達の公正量を引き受けるならばEUは2020年の排出削減量を20 %から30 %に引き上げても良いと申し出ている。

EU委員会は2020年までに温室効果ガスの20 %の減少を超えて変動した場合の「炭素漏えい」のリスクアセスメントに関する分析結果について公表している。

(3) グリーン成長と雇用の促進

EUの「20-20-20目標」は気候とエネルギー政策を統合して挑み、気候変動と戦うことによって、EUのエネルギーに関する安全保障を高め、競争力を強化することにつながると述べています。

EUの「20-20-20目標」は、気候変動への対応、EUのエネルギーに関する安全性の向上、及び、その競争力の強化を狙いとする、気候とエネルギーに関する政策の統合への取組みを象徴するものである。

そのことは、賢く持続的可能な成長を含む「欧州2020戦略」の第一の目標です。それは、つまり気候とエネルギーへの挑戦に取組むことが新しい仕事の創出、緑の成長と生成及び欧州の競争力の強化に関する認識に反映されます。

この目標は、スマート且つ持続可能で包括的な成長を目指し立てられた「欧州2020戦略」の第一目標で、気候変動とエネルギーの課題への取り組みが仕事の創出やグリーン成長、欧州の競争力強化をもたらすとの認識を反映している。

20%の再生可能エネルギーの利用目標が正味417,000人の仕事を創出し、20%のエネルギー効率改善を順調に成し遂げることが正味約400,000人の就職をもたらすと推定されます。

推測では、再生可能エネルギーの率を20%にする目標の達成は417,000人の雇用を生み、20%のエネルギー効率改善は400,000人の雇用を後押しする。

(4) 4つの措置

「気候とエネルギーの統括政策」は、20-20-20目標をもたらすために4つの補完的な法律から成っている。
・EU排出権取引システム(EU ETS)の改革
・EU非加盟国に対する排出権取引システム(NEU ETS)目標
・再生可能エネルギー目標
・二酸化炭素回収・貯留

 

まとめ

欧州環境庁によると、EUが中長期的に目指すところは、欧州の経済再生と持続的な経済成長のために現状の経済をグリーン経済へ移行させることと言えます。グリーン経済においては、エネルギーの高効率化と温室効果ガス発生の削減による気象変動防止とを連動させて考えており、これを達成するための当面の目標として「20-20-20」を掲げ、(1)温室効果ガスの排出量を1990年より20 %減らす、(2)エネルギー消費量のうち再生可能エネルギーの率を20% まで高める、(3)エネルギー効率の20 %改善の3つを達成しようとしています。

一般的に、日本国内やEU以外の地域や国においては、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの率を高めることは産業の競争力を落とすものと考え、京都議定書の約定期間後の温室効果ガス削減交渉が難航していますが、EUにおいては、再生可能エネルギー使用率を高め温室効果ガスを削減することによって、新たな産業を作り出し、これによる雇用創出を考えていますし、エネルギー効率の向上も雇用の創出につながると考えています。

企業や国家などが環境問題に取り組む場合、往々にして多くの資金や時間を必要とする場合があるため、大きな負担を感じるとともに受け身で対応することが多いように思えますが、環境問題に対する取組は、研究開発と同ように競合相手に打ち勝つための、先行投資と捉えることが重要であり、積極的に取り組むことによって、有利な展開を図ることができるとの認識が必要だと思われます。そして、環境問題に積極的に取り組むことは品質管理と同ように、リスクを低減するために必要であるとも言えます。

すなわち環境経営とは受け身で取り組むのではなく、むしろ積極的に取り組むことにより、競合に打ち勝つことができるという認識を強く持つべきだと思います。

引用・参照情報

注意

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