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環境関連情報

今後のエネルギー問題を考える #1

シェールガス及びシェールオイルと環境問題

情報発信日:2013-2-25

はじめに

家庭や工場へ電気を供給し、また車や電車を動かし、さらにはゴム・プラスチックなど様々な化学品を作ってきた石炭や石油は、18世紀末のイギリスにおける産業革命以来、今日までの現代文明の全てを作り上げ、そして現在地球上の70億人の文化的な生活を支えていると言っても過言ではないと思われます。しかし、これら石炭や石油を使うことは地球温暖化を促進していると言われる二酸化炭素を排出することや、遠くない将来において、その枯渇が危惧されるために、原子力や再生可能エネルギーなどの代替エネルギーの開発が進められてきました。そのような状況において、代替エネルギーとして大きな期待を寄せられていた原子力は東日本大震災による福島第一原子力発電所の被災により、止むを得ず「将来のエネルギーとしては不適切」と言う烙印を押されてしまいました。

そのため、温室効果ガスの排出がなく、半永久的に使用が可能であることから理想的と考えられる太陽光・太陽熱、風力などの自然現象によって発生するエネルギー、いわゆる再生可能エネルギーがますます大きな期待を集めてきていますが、反面では自然現象ゆえに季節や天候などに左右されるため、人為的に作られるエネルギーに比べて安定供給が難しいことや、エネルギー密度が低いために化石エネルギーに比べて5~8倍とも言われる現状の製造コストでは経済面で普及が進まないと言う問題点があります。さらに、再生可能エネルギーを大幅に普及させようとした場合には、太陽電池や風力発電機などを大量に作る必要がありますが、そのためには莫大な化石エネルギーが消費されることになります。

そのため、「化石エネルギー使用量の削減、脱原発、早期再生可能エネルギーへの切り替え!」と言うのは、実際には極めて難しい課題と言われています。そこで、このような状況を念頭に置いて今後のエネルギーをどうやって確保することが可能なのかについて、少し考えてみたいと思います。

 

石炭や石油は太陽エネルギーの蓄積

今後のエネルギーとして考えられているエネルギーの一つに「バイオマスエネルギー」があります。バイオマスエネルギーとは、太陽光と二酸化炭素によって光合成が起きた結果物であるトウモロコシなどの農作物や木材屑などから、アルコールやメタンガスなどを取り出してエネルギーとして使うと言う考え方で、「生産される量以上に消費しなければ再生可能エネルギーと言える」と言う理論です。

ところで、石炭や石油はどこから来たのでしょうか? 何となく「石炭は植物が枯れて、腐って…」、「石油は、動物系かなぁ…」と言う程度には想像できるかと思います。

数億年前、原始の地球は今よりもかなり気温が高く、大気は水蒸気と高濃度の二酸化炭素によって構成されていたと考えられています。その後、気温が少し下がったところで水蒸気は雨となり、その雨は何百年、何千年と降り続き今の海を作ったと考えられています。その海に溶け込んだ二酸化炭素と太陽光によって、植物性プランクトンが大量に発生し、次にその植物性プランクトンを餌とする動物性プランクトンが大量に発生し、その死骸が海の底に沈みヘドロになり極めて長い年月を経て醸成して石油や天然ガスとなったと考えられています。

すなわち、石炭や石油はある意味で、サイクルの極めて長いバイオマスエネルギーであり、太陽エネルギーによって作られたと言えます。したがって、これら何億年もの時間を経て太陽エネルギーを封じ込めて作られた石炭や石油を急激に消費して二酸化炭素を放出してしまうことは、太古の地球に逆戻りすることであり、当然気温が高くなると考えられますので、「地球温暖化の原因が二酸化炭素である」とする説の大きな根拠になっていると言えます。

 

第四の化石エネルギーシェールガス・オイルとは

最近、新聞やテレビによって、石炭・石油及び天然ガスに続く第四の化石エネルギーと言われる「シェールガス及びシェールオイル」の話題が時々報じられています。シェールガス及びシェールオイルとは従来の石炭、石油や天然ガスが産出される地層よりもさらに深いところに存在し、しかもシェール(日本名:頁岩、動物性プランクトンの死骸が海底に堆積して長い年月において醸成された一種の堆積岩であり、有機物を沢山含んだ岩石)と呼ばれる、薄い岩が雲母か本のように積層し、その岩一枚一枚の隙間に存在している石油や天然ガスです。そのため、従来は「埋蔵量は非常に多いものの採掘して取り出すのが極めて難しい」と考えられてきました。

出所:National Energy Board, CANADA

シェールガス及びシェールオイルは元々、北米、欧州、中国などに存在していることはわかっていたようですが、米国がこのシェールガス及びシェールオイルを安価に取り出す技術を開発し、実用化に向けて試掘を進めていることから、にわかに第四のエネルギーとして注目され始めました。米国の予測では北米におけるシェールガス及びシェールオイルの埋蔵量は米国で消費される石油の100年分とも言われ、近い将来において米国は中東産油国を超える産油国になるとさえ言われています(2012年が産出のピークであり、埋蔵量はさほどでないとする説もあります)。

なお、産出地層が異なるだけでシェールガスは従来の天然ガスと、シェールオイルは従来の石油とは、成分的にはほぼ同様と考えてよいと思われます。

出所:アメリカエネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)及び小見野晃

 

シェールガス及びシェールオイルと環境問題

さて、そのシェールガス及びシェールオイルですが、「その採掘が環境に大きな悪影響を及ぼす」とも言われています。米国の採掘者達は「そんなことはない、安全である」と反論していますが、実際のところはどうでしょう?

いろいろな意見がありますが、2012年4月23日付けの日経ビジネスオンラインにおいて、株式会社テクノバ(エネルギー・環境、交通、先端技術分野の調査研究を行う技術系シンクタンク)の研究員である大場紀章さんは、シェールガスの開発に伴う環境への問題点について以下の5つを挙げています。

(1) 掘削に用いられる化学物質(潤滑剤、ポリマー、放射性物質など)およびメタンガス(天然ガス)などによる地下水の汚染
(2) 採掘現場から空気中に漏洩するメタンガスによる健康・爆発・温暖化リスク
(3) 温暖化問題に対する総合的な影響(メタンガス漏洩・開発に伴う森林伐採・再生可能エネルギーの導入抑制効果・安価なガスによる消費拡大)
(4) 大量の水を使うことによる地域の水不足リスク
(5) 排水の地下圧入による地震発生リスク

まず、第一にシェールガスやシェールオイルを採掘するためには、現在は水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)と言う方法が取られています。この方法は、シェールの隙間に化学物質を含んだ大量の水を高圧で圧入し、シェール層を破砕して、層の間にあるシェールガスやシェールオイルを取り出しやすくします。一部の水は、回収され処理されて再利用されるようですが、大部分の化学物質を含んだままの水は地下に留まったり、河川などに放流されたりします。このため、地下水が化学物質やシェールガス及びシェールオイルに汚染される危険性があります。さらに、大量の水を使用するため地域の水不足や高圧による地下への大量注水は地層が滑りやすくなるため地震の誘発なども危惧されます。

次に、シェールガス及びシェールオイルの1つ1つのガス田や油田は従来型のガス田や油田と比較すると埋蔵量が少ないために、より多くの井戸を掘ることになるため、採掘井戸から漏えいするガス量が増加することにより健康被害・爆発事故などのリスクが高くなります。

第三には、この工法によるシェールガスの価格は現在の米国においては比較的安価であるとも言われ、そのため消費が増大し温暖化ガスの排出量が増えるのではとの危惧があります。実際、ここ数年において米国の風力発電の導入量は激減していると言われています。

中でも一番大きな環境問題として危惧されているのは、水圧破砕の際の水に混合された「化学物質」と言われています。この水圧破砕法は米国において60年前頃から研究が開始され、水に混合される化学物質については種々の試行錯誤が行われ現在の物質に至っているようですが、この化学物質の組成については「企業のノウハウ」として従来は開示されずにきました。不都合な物質が含まれていた場合でも、業界団体などの圧力によって揉み消されたとも言われていましたが、2011年にEPA(米国環境保護庁)が連邦政府として初めて、シェールガス採掘現場のあるワイオミング州で地下水汚染の状況調査を行った結果、ガソリン、軽油、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、イソプロパノール、グリコールなどが検出され、これらはシェールガス採掘による地下水汚染の疑いがあると言う調査結果を公表しました。これらの汚染は、高圧注入水に含有する化学物質によるものと言うよりは、水圧破砕によるシェールガスやシェールオイル自身の成分が地下に拡散した、あるいは回収した使用済み汚染水の漏えいや廃棄による可能性が高いと考えられ、水圧破砕時に混入させる化学物質がいかに安全であっても、このような問題の解決をどのようにするのかが大きな問題の一つと言えます。採掘企業は、「飲料用の地下水脈とシェール層の深さが違うために問題はない」としていますが、シェールバブルに対して中小のガス事業者が環境管理を十分に行わずに劣悪な環境下で採掘する可能性もあり、今後は因果関係も含めて大きな議論の一つになる可能性があると言えます。

 

まとめ

第四の化石燃料と言われ期待の大きなシェールガス及びオイルですが、環境対策としては、

(1) シェール層を破砕するために化学物質を含んだ大量の水が用いられることから、汚染水を処理浄化する対策を確実に実施すること。
(2) 二酸化炭素に比べて21~72倍の温室効果作用があるとされているメタンガス(シェールガスの主成分)の漏えいを確実に防止すること。

まずは、以上の2点を確実に実施することが求められますが、シェールガスやシェールオイル成分の地下水への拡散汚染問題と地震への影響懸念をどう解決するのかが、今後の課題になると思います。

また、安価なためにシェールガスやシェールオイルが安易に大量消費され、結果として温室効果ガスの発生量が増え再生可能エネルギー開発が停滞する危険性も指摘されております。

今後、ますます人口が増加すると予想される地球において、一度手にした文明を手放して不便な生活を送ることは難しいため、エネルギー問題をどうするのかは極めて難しい問題であり、多くの人々がより多くの議論を重ねて方向を定めて行く必要があると言えます。

引用・参考資料

注意

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