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環境関連情報

脱原発・原発ゼロ社会に向けて #2

再生可能エネルギー固定価格買取制度の是非

情報発信日:2013-1-23

はじめに

経済産業省・資源エネルギー庁は2012年11月16日付けで「再生可能エネルギー発電設備の導入状況」を公表しました。これによると、2012年4月から10月までの7ヶ月間において再生可能エネルギー発電設備の導入量は前月比24.3万kW増の115.5万kWとなり、原子力発電1基分(約100万kW)に相当する再生可能エネルギー発電装置が新たに導入されたことになりますが、そのうちの90%は太陽光発電によるものであると報じています。

脱原発・原発ゼロに向けて、また温室効果ガス排出量削減に向けて再生可能エネルギー固定価格買取制度もスタートし再生可能エネルギー発電が順調に増加している様子が報じられています。

昨年末の総選挙でもこの今後のエネルギー政策は大きな争点の一つになり、「全ての原発の即時停止・再稼働反対とする案」から「段階的に原発を停止し再生可能エネルギーへと、ゆるやかに転換する案」まで様々な意見が出されました。

最終的には脱原発・原発ゼロとし再生可能エネルギーへの転換を目指す方向としては違いがないようですが、そこへ至るまでのシナリオについて大きな意見の違いがあるようです。

クリーンで無尽蔵と言われる再生エネルギーの普及を目的とした再生エネルギーの固定価格買取制度が2012年7月1日にスタートしていますが、この制度に対して賛否両論が出ていますので、その辺を中心に脱原発・原発ゼロ社会に向けてどのようなシナリオを描くべきかについて、今回は私見も含めて述べて行きたいと思います。

 

我国の過去のエネルギー政策について

我国は国土も狭く、石炭・石油や天然ガスなどの化石燃料をほとんど有していないため、電気エネルギー源のほとんどを輸入に頼ってきました。しかし過去何度かにおいて、これらエネルギーの安定供給を脅かされる局面に晒されたため、経済産業省が主体となり一つのエネルギーに偏ることなく時代に合わせた最適なエネルギーミックスとして原子力発電25%、石炭火力25%、LNG火力25%、石油火力・水力・再生可能エネルギー等25%と言う構成を維持してきました。

このような背景がありましたが、世界的な温室効果ガスの排出量削減の方向性が出てきたため、温室効果ガス排出量が多く、価格も高い石油火力の比率を下げ、天然ガス火力と原子力及び再生可能エネルギーの比率を高める方向へ転換を始めた矢先に東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生してしまいました。

このため、我国の発電量の25%を担っていた原子力発電のほぼ全てが現在停止状況に追い込まれてしまいました。この原子力発電による電力喪失分は現在、停止中だった効率の悪い旧式の火力発電所などを応急的に再稼働さることなどによって凌ぐと言う不安定な状況にあります。

 

再生可能エネルギーの固定価格・全量買取制度

2012年10月19日付け本コラム「今後のエネルギー・環境政策 #1」において、エネルギー環境会議が試算した最新の各種発電コストを紹介しましたが、原子力発電コスト8.9円/kWh、石炭火力9.5~9.7円/kWh、LNG火力10.7~11.9円/kWhであるのに対して、再生可能エネルギーとして、前述のように我国で急速に拡大している太陽光(住宅用)が33.4~38.3円/kWh、太陽光(メガソーラー)30.1~45.8円/kWhは大幅な高コストエネルギーである事がわかると思います。このため、このままでは誰もこの高いエネルギーを使いたがらないため、その普及促進のために製造コストよりも高い固定価格で一定期間電力会社に全量を買取ってもらおうとする再生可能エネルギー固定価格買取制度が、2012年7月1日よりスタートしました。この高い電力を購入させられた電力会社は、そのコストを消費者に転嫁できることになっており、政府の試算では一般家庭における負担は100円/月程度と予想しています。しかし、一方では事業規模にもよるとは思われますが電気を多く使う事業者にとっては決して少ない負担とは言えないものであり、間接的にそのコストは一般消費者に転換されてくるものと予想されます。

この再生可能エネルギーの全量を固定価格で一定期間買取る制度は、福島第一原子力発電所の事故以前から温室効果ガス排出量の削減を目的として、火力発電を少しずつ減らして再生可能エネルギーを増やして行くために考えられた制度ですが、温室効果ガスの排出量削減のために火力発電を減らす目的から原子力発電をなくす目的までを背負わされてしまうと、色々な歪が出て来てしまうように思われます。

環境問題と言うのは、どの問題においても「誰が考えても、これが正解」と言うのがなかなか見つからない場合が多いようですが、このエネルギー問題については「使用済燃料の扱いを含めた放射性物質の安全性」と「地球温暖化防止」それと「経済性」と3つの大きな問題が絡み合っているように思います。

再生可能エネルギー固定価格買取制度を例に、もう少し問題点をわかりやすくして見たいと思いますので、今後のエネルギー問題の在り方について、皆さんもこれを機会に一緒に議論して頂ければ幸いです。

(出所: 首相官邸

平成24年度(2012年7月~2013年3月)の買取価格は表1のとおりです。 買取価格は基本的には年度ごとに見直しが行われます(一度売電がスタートした方の買取価格・期間は当初の特定契約の内容で『固定』されます)。

この買取価格は毎年見直しが行われるとしていますが、本年認定を受けて買取りが開始された分は、表中の期間と価格で据置かれることになります。

 

再生可能エネルギーの固定価格・全量買取制度の是非

冒頭で2012年4月から10月までの7ヶ月間に新たに原発1基分の再生可能エネルギー発電施設が新たに稼働し、その90%は太陽光発電によることを述べましたが、上に示した再生可能エネルギーの買取価格からすると、これら原発1基分の再生可能エネルギーは原子力発電による発電コスト8.9円/kWに対して42円kWと言う約5倍もする価格で各電力会社は有無を言わせず20年間に渡って買い取らされることになります。

「でも、多少コストが上がっても、危険な原子力発電所がなくなり、しかもクリーンで温室効果ガスも排出しない再生可能エネルギー発電が普及して行くのは良いことです」と言う意見もありますが、一方では「コストの安い原子力発電所が稼働していても国際的に見て他国よりも高かった電気料金がさらに上がったら、日本でのモノ作りは出来なくなってしまう」と言う産業界からの悲鳴も聞こえてきます。現在、「原子力発電の稼働をゼロにしろ!」と叫んでいる人達は、おそらく良い意味でも悪い意味でも「社会に関心のある人達」で、中には、福島第一発電所の事故が起きるまでは「温室効果ガスの排出削減」を叫んでいた人達もいるのではないかと思います。原子力発電を全て止めて、その分の電力不足を当面補うために稼働している火力発電による温室効果ガス排出に対してはどう考えるのでしょうか。現在、全発電量のわずか1%しかない再生可能性エネルギーで原子力発電分を補うためには、どの位の面積の太陽光パネルの設置面積が必要か計算したのでしょうか? 自然現象任せの再生可能エネルギーですから「今日は曇りで発電量は半分になったから半日停電します」、「ここのところ、風が吹きませんので発電出来ません」このような現象をどう克服して行けば良いのでしょうか。

表2で、少し話を整理してみたいと思います。

この他にも、長所短所はあるかと思いますが、主なところを書き出してみましたが、極論すると
(1) 経済性と温室効果ガス問題を捨てて安全・安心を優先するのか(再生可能エネルギー発電を優先)
(2) 温室効果ガス問題を捨てて経済性を優先するのか(火力発電優先)
(3) 安心・安全を捨てても温室効果ガス問題と経済性を優先するのか(原子力発電優先)

以上3つの案から選択しなければならないと言うことになります。

筆者は、あらゆるケースを想定した安全性を確認した上で、必要最小限の原子力発電を継続しながら、再生可能エネルギー発電のコストダウンと普及を進め、火力発電は温室効果ガスの排出量削減や回収などの技術の向上といった、一つの方法に偏ることなく、従来のような時代に合わせた発電のベストミックスを維持するのが現実的な方向性と思いますが、皆様はどのようにお考えになられるでしょうか。大いに議論して頂きたいと思います。

 

まとめ

このコラムを書いていて、毎度思うことは環境問題と言うのは、「これが正解」「誰もが賛成」と言う解決のシナリオが必ずしも見つからないと言うことです。特に、環境問題を解決しようとした場合に対立するのは経済性、生活の利便性、快適性など我々の日常生活を犠牲にしなければならない場合が多々見受けられます。

人間は、一度手に入れた快適な生活や利便性とエゴを捨てる勇気をなかなか持ち合わせていません。特に、地球の人口が急激に増えてくると、生存競争はさらに強くなりますので、わがままで、欲張りで、自己中心的と言った人間の嫌な部分が露骨に表面に現れて問題の解決をさらに難しくしていると言えるのではないでしょうか。

今回のまとめは、筆者の雑感になってしまい申し訳ありませんが、総選挙の各候補者の演説においても「脱原発・原発ゼロ」を叫ぶ人は沢山いますが、どのようなプロセスでどのようなエネルギーミックスにするのか時間の経過も含めた具体策については、ほとんど触れられていないのが現実です。今後のエネルギー政策については、日本の将来を決める重要な選択だと思いますので、出来るだけ多くの方々が、「まずは事実を知った上で」「将来どうするかの議論を活発に行って行く必要がある」と思います。

引用・参考資料

注意

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