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環境関連情報

有害物質プロセスマネジメントシステム IEC QC 080000とは

RoHS指令やREACH規則に対応するために

情報発信日:2014-3-25

はじめに

2003年2月13日にEUにおいて冷蔵庫やテレビなどの電気製品及びコンピュータや携帯電話などの電子機器に対して有害な化学物質の使用を禁止するRoHS指令が発効して以来、自動車に使用される部品に対する有害化学物質規制を盛り込んだELV指令が発効し、さらには全ての製品に対する総合的な化学物質使用規制であるREACH規則も運用されるに至り、このような有害化学物質の使用規制は全世界的に急速に広がってきています。

しかし、これらの化学物質規制の多くは、従来のような「公的機関による認可」や「第三者による認証」などの形態を取るものでは無く、自社の責任により管理を行い「適合宣言」することが求められており、「もし違反が発覚した場合には重い罰則が科せられる」という仕組みが取られています。

このような化学物質規制に対応する場合において、自社の製品に規制物質が含まれている否かについて、全ての部品や素材に含まれる化学物質をいちいち分析して管理することは経済面及び時間面で不可能なため、必然的にサプライチェーンを含めた有害化学物質の非含有管理を行う事が必要となります。

さて、ではこの自社の上流にあるサプライチェーンから自社が調達する素材や部品、副資材、包装材料など、製品を構成する全ての物質に規制の対象となる有害化学物質が混入してこないように管理するプロセスマネジメントはどのようにしたら良いのでしょうか。

残念ながら、RoHS指令やREACH規則には、規制化学物質の管理に対する手法、いわゆるプロセスマネジメントに関しては何ら記載がありません。

そこで今回は、各国、各企業がどのように対応しているのか調査する過程で、最近「IEC QC 080000 有害物質プロセスマネジメントシステム」と呼ばれる規格が話題になることがありましたので、この件も含めて解説したいと思います。

 

我国における有害物質プロセスマネジメントシステムについて

(1) JEITAとJGPSSI及びIEC/TC111とVT62474

我国においては、EUに多くの電気・電子製品を輸出しているため、RoHS指令の発効に際しては、いち早く JEITA (一般社団法人電子情報技術産業協会)が中心となって、サプライチェーンの上流から下流に対して、有害物質含有情報をどのように迅速かつ正確に伝達するかについての検討が行われ、情報伝達のためのフォーマットや管理手順などについても統一された書式や手法が定められました。

その成果は、JEITA以外の周辺産業にも利用できるようにJGPSSI(調達調査共通化協議会)へと引き継がれました。その後、このJGPSSIは2012年5月をもって発展的に解消し、その活動の多くをIEC/TC111の国内組織(国内VT62474)へ移行し、JGPSSIのホームページも2014年3月までの継続となるようです。

IECとは国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)の事で、電気・電子・通信・原子力などの分野で各国の規格や標準の調整を行う国際機関です。1906年に設立され、本部はスイスのジュネーブにあります。そして、IEC/TC111とは電気・電子機器に共通な環境に関わる規格を策定するプロジェクト(Environmental Standardization for Electrical and Electronic products and systems)で、2004年10月に設立されました。設立以来、日本がTC111の議長国を務め、国際標準化の作業を進めています。

 

(2) JAMP

もう一つの有害物質管理の流れとしてJAMP(Joint Article Management Promotion-consortium, アーティクルマネジメント推進協議会)があります。

こちらは、原材料メーカーが中心になって設立されたグループですが、電気・電子機器メーカーとユーザー共同で「化学物質のリスク管理」の実現のために、産業界全体でのサプライチェーンにおける適切な情報伝達を国際的に推進することを目的として運営されています。なお、アーティクルとはRoHS指令で「部品や成形品の別称」と定義されています。

主な活動としては、以下の事項がホームページに記載されています。

1) 製品含有化学物質管理ガイドラインの作成・検証・普及

2) アーティクル情報記述シートの作成・検証・普及

3) 自己宣言に基づく製品含有化学物質情報の基盤整備の推進

4) 製品含有化学物質の情報管理の標準化の推進

5) その他上記の普及に向けた広報、中小企業支援

6) 関連する国内外の工業会・団体・企業等との相互連携及び調整

JAMPの考え方として、従来から(単品の)化学物質(RoHS指令で言うサブスタンス)や複数の化学物質の混合物である調剤(プレパレーション)においては、これらを販売する際にユーザーへの付帯情報としてMSDSやMSDSplusを提供する仕組みが確立していますが、サブスタンスやプレパレーションを用いて製造されるアーティクルに含有する化学物質等の情報を開示・伝達する仕組みがないため、これを確立することで種々の化学物質使用規制に対応できるとしています。特にREACH規則に対応するためには、サプライチェーンの川上と川下の双方の情報共有が必要不可欠であるとし、企業単独または業界単位で対処するには問題が大き過ぎるため、全ての産業・業種が連携して種々の検討を行っています。

 

有害物質プロセスマネジメントシステムとしてのIEC QC 080000とは

前述したように、我国においては電気・電子機器を製造する工業会であるJEITAを中心としたグループ及び化学品製造企業を中心としたJAMPが、EUにおけるRoHS指令やREACH規則などに対応するための統一的な管理シートやプロセスマネジメント方法を独自に構築し普及・運用しているため、現状では大きな問題は生じていないようです。

しかし、EUへの電気・電子機器や自動車、化学製品などの輸出が多いにも関わらず、日本と異なり有害物質に関する統一的なプロセスマネジメントシステムを有していない中国や台湾、韓国及び東南アジア諸国は従来個別にこれらに対応してきたようですが、顧客からの信頼性という点で問題があり、また実際にトラブルも発生しているようです。

そのような状況において、第三者認証を受ける事が出来る有害物質プロセスマネジメントシステムとして、上記の国々でIEC QC 080000 有害物質プロセスマネジメントシステムの取得が脚光を浴びています。

IEC QC 080000とは、IECが2005年に発行した「電子部品のためのIEC品質評価システム(IECQ) 電気・電子部品及び製品の有害物質プロセスマネジメントシステム要求事項(HSPM)」と呼ばれるもので、英語のほか日本語、フランス語、韓国語、中国語などの翻訳版も出版されています。

IEC QC 080000はISO 9001: 2000品質マネジメントシステム(QMS)の枠組みを補足し、それらと連携して有害物質を使用しない(HSF:Hazardous Substance Free)製品および生産プロセスを実現するためには不可欠な管理システムを提供するものであるとしています。そして、この規格はRoHS指令及びWEEE指令などの要求事項を盛り込み、HSF及び顧客要求事項を満たす際に製造業者の指針として機能するEIA/ECCB規格954「電気、電子部品及び製品の危険物質不使用に関する規格及び要求事項」に基づくものである」とも記述されています。

注) EIA(米国の電子産業同盟)、ECCB(米国電子部品認証理事会)でEIA/ECCB規格954は「電気・電子部品及び製品の危険物質不使用に関する規格及び要求事項」という標題で部品の試験を求めるものではなく、組織が規制適合を証明する手段を与えるシステムについて規定しています。

この規格(IEC QC 080000 有害物質プロセスマネジメントシステム)の目的は、以下の通りでISO9001に定められた要求事項に追加されるものとしています。

(1) 自身が製造または供給する製品に含有するHS(有害物質)量を識別、管理、定量化及び報告するためのプロセスを開発するため、製品の製造業者、供給業者、修理業者、及び保守管理業者によって使用される。

(2) 製品のHSF(有害物質非含有)状況を知るため、及びそれによって製品のHSF状況を明確にするプロセスを理解するために、製品の顧客及び使用者によって使用されること。

その他の内容としては、(経営者の責任:経営者のコミットメント、HSF方針、計画、責任・権限及びコミュニケーション、マネジメントレビュー)、(資源管理:人的資源、インフラストラクチャー)、(製品実現:HSFプロセス及び製品実現計画、顧客関連プロセス、設計・開発、HSF製品の購買、HSFプロセスで使用される監視機器及び測定機器の管理)、(測定、分析、及び改善:HSFプロセスの監視及び測定、不適合HSF製品の管理、HSFデータの分析、HSFプロセスマネジメントシステムの改善)などから構成されています。

 

まとめ(日本におけるIECQC 080000の位置づけ)

IEC QC 080000とはRoHS & WEEE指令やREACH規則などの有害化学物質規制に対応するためにIEC(国際電気標準会議)が定めた「電子部品のためのIEC品質評価システム(IECQ) 電気・電子部品及び製品の有害物質プロセスマネジメントシステム要求事項(HSPM)」と呼ばれISO 9001に補足される有害化学物質を管理するための品質マネジメント用のシステムと言えます。

IEC QC 080000規格は、和訳版がIECのホームページから直接購入できますし(80スイスフラン)、日本規格協会からも購入出来るようです。また、第三者認証についてもTÜVなどの日本法人が対応しているようです。

しかしながら、前述のように、日本においてはJGPSSIやJAMPが構築したマネジメントシステムが広く普及しかつ問題なく運営されていますので、あえて高額な投資をしてIEC QC 080000の第三者認証を取得する必要性は今のところ低いと思われ、国内でも数社が第三者認証を取得したに留まっているようであり、現状で顧客からの強い要求がない限り取得するメリットはないと思われます。

引用・参考資料

注意

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