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環境関連情報

放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料#3

放射線の基礎知識と健康影響 3

情報発信日:2014-1-24

はじめに

福島民友新聞の2014年1月5日版によると「トリチウム濃度が急上昇、漏えいタンク付近井戸」との見出しで「東京電力福島第一原発の地上タンクから汚染水約300トンが漏れた問題で、漏えいタンクから約20メートル北側にある井戸の放射性トリチウム(三重水素)濃度が、2013年12月28日には1リットル当たり3万4千Bqであったものが、翌12月29日に約10倍の33万Bqに、12月30日には42万Bqと急上昇した」と報じています。

福島民報の2014年1月1日版では「汚染水対策が急務 原発事故から丸3年 トリチウムの分離課題」との見出しで「東京電力福島第一原発事故の発生から丸3年となる平成26年がスタートしたが、原発事故は汚染水問題を中心に依然として収束と言える状況にはない。1日約400トンの地下水が原子炉建屋に流れ込み、汚染水は日々増え続けており、政府と東電の対策が急務である」と報じています。

福島第一原発の汚染水問題は、上記のように一日当たり約400トンの地下水が原子炉建屋に流入することにより生じ、高濃度放射性物質が含まれた汚染水を汲み上げて敷地内のタンクに貯蔵しているだけで、抜本的な対策にはなっていないため、敷地内に汚染水貯蔵タンクの建設余地がなくなれば破綻してしまうものです。ただし、トリチウムは水と性質が似ているため、技術的に分離が難しいことや半減期が12年と長めである点が問題ですが、放出エネルギーは相当に低く、人体に対する影響は少ないと言われています。

福島第一原子力発電所の汚染水問題や廃炉へ向けた対応などにおいては、まだまだ楽観できる状況にはないのが実情ですので、当月も引き続き環境省の資料を基に放射線の基礎知識と健康影響について、解説して行きます。

 

放射線の基礎知識と健康影響 3

(1)原子力災害の影響

1) 国際原子力事象評価

原子力の異常事象や事故は、その深刻度に応じて7つのカテゴリーに分類されます。福島第一原発の事故はその放射性物質の放出量から最も深刻な事故であることを示すレベル7と判断されます。

図1 国際原子力事象評価(出典:環境省)

注) 福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射性物質は、ヨウ素131が広島原爆2.5個分、ストロンチウム90が2.4個分、セシウム137については何と168.5個分に相当することになります。放射能、放射性物質と放射線について(その3) 放射線被曝量と健康被害について (日本バルブ工業会、2011年12月22日)参照。

 

2)放射能汚染の拡散

東京電力福島第一原子力発電所の原子炉建屋が水素爆発を起こしたような原子力施設で緊急事態が発生し、気体状の放射性物質が漏れると、「放射性雲(プルーム)」と呼ばれる状態で大気中を流れて行きます。 放射性雲には「放射性希ガス」、「放射性ヨウ素、放射性セシウム137、放射性プルトニウムなどの粒子状物質」が含まれることがあります。

「放射性希ガス」は地面に沈着せず、呼吸により体内に取り込まれても体内に留まることはありません。

しかし、「放射性雲」が上空を通過中に、この中に含まれる放射性物質からなる粒子から出される放射線をヒトが受けた場合は、「外部被ばく」となります。同時に、放射性希ガスと異なり、放射性物質からなる粒子は「放射性雲」が移動する間に地表に沈着しますので、通過後も沈着した放射性物質により「外部被ばく」する可能性が残ります。

また、「放射性雲」が通過中に降下してくる粒子状放射性物質を直接吸入する、もしくは沈着により汚染された飲料水や食物を摂取することにより放射性物質を体内に取り込んだ場合は、継続的に「内部被ばく」を受けることになります。

 

3) 原子炉内の生成物

福島第一原子力発電所の原子炉は「軽水炉」と呼ばれる型式で、ウラン235に中性子を当てて核分裂を起こさせエネルギーを得ます。この核分裂によりヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などが生成されます。正常に運転されていれば、このような生成物は原子炉から外へは飛び出しませんが、穴などが開けば、当然外部に漏れ出します。

今回の事故では、原子炉周りの冷却水供給システムなどのサブシステム及び原子炉本体にも穴が開いてしまった結果、大量の放射性物質が外部に漏えいしてしまいました。

 

4)原発事故由来の放射性物質

図2 原子炉事故由来の放射性物質(出典:環境省)

注) 図中、「実効半減期」とは、体内に取り込まれた放射性物質の量が、生物学的排泄作用(生物学的半減期)および放射性物質の物理的壊変(物理学的半減期)の両者によって減少し半分になるまでの時間。

東京電力福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性物質で、健康や環境影響上に問題となる放射性物質は図2のうち、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90の4種類です。

その他にも、様々な放射性物質が放出されましたが、いずれもこの4種と比べると半減期が短いか、放射能量が少ないことがわかっています。ヨウ素131も半減期が8日と短いですが、体内に入ると10~30 %が甲状腺に蓄積されるため、甲状腺がしばらくの間β線とγ線による被ばくを受けることになります。

セシウムの場合は、セシウム137の半減期が30年と長いため、環境汚染が長く続く上、カリウムと化学的な性質が似ているため、体内に入り込むと全身に分布してしまいます。

ストロンチウム90も半減期が長く、化学的性質がカルシウムに似ているため、骨に蓄積しますので、厄介です。

 

(2)放射線の単位

1) ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)

放射線の単位のうち、最もよく見聞きする単位がベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)です。

ベクレル(Bq)は放射能の単位で、放射線を出す側に着目したものです。土や食品、水や大気などに含まれる放射性物質の量を表す時に使われます。1ベクレルは1秒間に1個の原子核が壊れること、10ベクレルでは1秒間に10個の原子核が壊れることを意味します。従って、数値が大きいほど、多くの放射線が出ていることを示します。

一方、シーベルト(Sv)は放射線を受ける側に着目したもので、ヒトが受ける被ばく線量を示します。

放射線を受けた人体にどのような影響が表れるかは、「外部被ばくか、内部被ばくか」「全身被ばくか、局所被ばくか」といった被ばく様態の違いや、放射線の種類によって異なります。そこで、いかなる被ばくも同じシーベルト(Sv)という単位で表すことで、影響の大きさの比較ができるように考えられています。

なお、Sv/時やSv/日など分母に時間が標記されている場合は、1時間当たりや1日当たりを表し、単にSvと記載されている場合は、総被ばく量または1年当たりを示します。

 

2) 二つの線量概念 防護量と実用量

図3 放射線の単位と意味(出典:環境省)

放射線に関する単位は、放射線を出す側の単位と受ける側の単位に大別されます。

放射線の強さの単位であるベクレル(Bq)は放射線を出す側の単位です。

一方、放射線を受ける側の単位にはグレイ(Gy)シーベルト(Sv)があります。放射線が透過した場所では放射線のエネルギーが吸収されます。この吸収線量の単位がグレイ(Gy)です。しかし、吸収線量が同じでも、放射線の種類によって人体への影響が異なります。そこで、放射線の種類ごとに人体の臓器や組織に対する影響を考慮した係数を設けて変換をします。これを「等価線量(単位はシーベルト(Sv)」と言い、用いる係数を「放射線加重係数」と言います。

放射線の人体影響を「個人単位」で考える場合、複数の箇所に受けた放射線の影響を足したり、過去に受けた放射線による影響を足したりして考える必要がありますが、このために考えられたのが「実効線量(単位はシーベルト(Sv))」です。「実効線量」は、組織が受けた影響を全身分に換算しますが、臓器ごとに受けた等価線量の単純平均ではなく、臓器ごとの放射線の感受性の違いで重みづけをしています。個々の臓器への影響の大きさを重みづけする係数を「組織加重係数」と言います。

サーベイメータの読み値にもシーベルト(Sv)が使われていますが、これは「防護量」のシーベルト(Sv)の近似値として使われる「実用量」です。上の説明でもわかるとおり、防護量は人体の臓器や組織の線量から計算される量ですから、測定器を使って容易に直接測定できるものではありません。そこで、線量測定のために定義されたもう一つの量が「実用量」で、実際に遭遇する多くの外部被ばく形態において、防護量の保守的な(安全側の)評価を与えるように、防護量より少し大きな数値が出るようになっています。

注) グレイ:人体1kg当たりに吸収された放射線エネルギーを吸収線量と言い、その単位がグレイ(Gy)です。1グレイ(Gy)は、人体1kg当たりに吸収された放射線エネルギーが1ジュール(=0.24カロリー)です。


3) 実効線量と空間線量率

「実効線量」は、放射線被ばくによる全身影響を表すものです。人体の各組織(臓器)の等価線量に加重係数を乗じたものを合計して算出するもので、直接測定することはできません。

「被ばく管理」のために、「実際に測定できる線量(実用量)」として、空間における放射線量を人体に対する影響を考慮して定めている「周辺線量当量(空間線量)」が用いられます。「個人線量計」や「放射線管理用のサーベイメータ」等にはこの量を表示するように調整されており、文部科学省が公表している線量マップは、この「周辺線量当量(空間線量)」を用いています。「周辺空間線量当量(空間線量)」は、具体的には「人体の代わりとなる直径30cmの球の表面から1cmより深い位置における線量(1cm線量当量)」で表されます。これは、ヒトの臓器の多くは人体表面から1cmより深く位置していることから、「周辺線量当量(空間線量)」は、γ線の場合は常に「実効線量」より少し高い値となり、安全側に被ばく管理ができるようになっています。

「実効線量」と「周辺線量当量(空間線量)」の比率は、核種の違い(放出されるγ線エネルギーの違い)や照射条件(一方向か全方位か等)により異なるが、成人の場合概ね0.55~0.85程度。また。体格の違いなどにより0歳児では成人の1.3倍になります。

 

4) 単位間の関係

グレイ(Gy)とベクレル(Bq)は物理的な量で測定することができる単位です。しかし、シーベルト(Sv)は放射線防護を目的とした特殊な単位で、計算から求める数字で直接測定することはできません。また、放射線を受けた対象が人間である場合にしか用いません。

シーベルト(Sv)は、ベクレル(Bq)やグレイ(Gy)と言った物理的な量に係数を掛けて計算します。外部被ばくによる実効線量も、内部ひばくによる実効線量も、各臓器・組織が吸収したグレイ(Gy)から二段階の計算をします。

まず、一つ目は放射線の種類を考慮するための計算です。人体に影響が大きい線種には大きな係数を、影響が小さい線種には小さな係数を掛けます。こうして計算された値を「等価線量」と言います。

二つ目は臓器の感受性の違いを考慮するための計算です。放射線の感受性が高い臓器には大きな係数を、感受性の低い臓器に当たった場合には小さな係数を各々掛けます。このように重みづけをして計算した結果を全身分の線量として「実効線量」が求められます。

 

5)グレイ(Gy)からシーベルト(Sv)への換算

人体の被ばく線量である実効線量(単位はSv)を計算するためには、被ばくした箇所の組織・臓器ごとの吸収線量(単位はGy)を知る必要があります。

次に、組織・臓器がどんな種類の放射線により被ばくしたかにより、吸収線量に「放射線加重係数(β線、γ線=1倍、中性子=2.5~21倍、α線=20倍)」を掛けて等価線量(単位はSv)を計算します。

放射線を受けた箇所の組織・臓器ごとの等価線量が計算されたら、次に「組織加重係数(組織・臓器の違いによる放射線感受性による重みづけ)」を掛け、全てを加算します(※組織加重係数の合計は1.0になるよう決められています)。

従って、実効線量は全身の臓器・組織の等価線量について、重みづけ平均を取ったものと言えます。

サーベイメータの目盛はシーベルト(Sv)で示されていますが、これは実測値ではなく、放射性物質の種類をある程度想定して、空気中で測定された吸収線量グレイ(Gy)から、シーベルト(Sv)に近似的に換算された値で、全身が均等に被ばくした場合の実効線量(単位はSv)の近似値と言えます。

 

6)さまざまな係数

図4 さまざまな係数(出典:環境省及び国際放射線防護委員会)

図4に示された「放射線加重係数」及び「組織加重係数」は、2007年に国際放射線防護委員会によって発表されたものです。これらの数字は、実際の被ばく者に対する調査の結果により決定されますが、被ばく者の二世、三世の遺伝的な調査にも基づき、新たな知見が認められた場合に改定されています。

 

7)等価線量と実効線量

図5 等価線量と実効線量(出典:環境省)

図5に、全身に均等にγ線が1mSv当たった場合と、頭部だけに均等にγ線が1mSv当たった場合を想定して実効線量を計算すると、前者が1mSv、後者が0.07mSvとなることがわかります。

 

8)預託実効線量

「預託実効線量」とは「放射性物質を1回だけ摂取した場合に、それ以後の生涯にどれだけの放射線を被ばくすることになるかを推定した被ばく線量」と定義されます。

放射性物質は、体内に摂取された後、一定期間体内に留まります。その間、人体は放射線を受け続けることになります。そのため、内部被ばくによる線量は、1回に摂取した放射性物質の量から、将来に渡って受ける放射線の総量を考えます。これを「預託線量(単位はSv)と言います。

体内に取り込まれた放射性物質は、放射性物質の半減期や尿や便とともに排泄されるため、時間とともに減少します。

また、体内からの排泄速度は元素の種類や化学形態、年齢などにより異なりますが、預託線量はこのような違いを考慮して、内部被ばくした人体が受ける一生分の放射線量を計算します。特に実効線量に着目し、一生分を積算した線量を「預託実効線量」と呼び、一生分とは大人の場合50年、子供は70歳になるまでの年数です。

 

9)シーベルト(Sv)を単位とする線量

新聞やテレビで良く目や耳にするシーベルト(Sv)は、

(イ) 全身が受ける放射線の量(実効線量)

(ロ) 内部被ばくによって受ける放射線の量(預託実効線量)

(ハ) ある場所だけ放射線を受ける局所被ばくの量(等価線量) 以上の単位として用いられます。どれも、被ばくした個人や組織における「ガン」や「遺伝性影響」の発生リスクを考慮して表されている点は共通です。

(ニ) サーベイメータの読み取り値 にもシーベルト(Sv)が使われています。これは、空気の吸収線量:グレイ(Gy)にある係数を掛けてシーベルト(Sv)換算し、人間が受ける実効線量の近似値として表示されているものです。

 

10)シーベルト(Sv)の由来

人体の被ばくの程度を示す単位であるシーベルト(Sv)は、スウェーデンの放射線防護研究者であり、国際放射線防護委員会の創設者でもあるロルフ・シーベルトに由来しています。日常生活で受ける放射線の量は、シーベルトの1/1,000であるミリシーベルト(mSv)や1/1,000,000であるマイクロシーベルト(μSv)に表されることがほとんどです。

放射能の単位のベクレル(Bq)や吸収線量の単位グレイ(Gy)も放射線の研究で業績を残した研究者の名前に由来しています。

 

まとめ

1) 原子力の異常事象や事故は、その深刻度に応じて7つのカテゴリーに分類され、福島第一原発の事故はその放射性物質の放出量から最も深刻な事故であることを示すレベル7と判断されます。
2) 東京電力福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性物質で、健康や環境影響上に問題となる放射性物質はヨウ素131、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90の4種類です。
3) 放射線の単位のうち、最もよく見聞きする単位がベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)です。ベクレル(Bq)は放射能の単位で、放射線を出す側に着目したものです。一方、シーベルト(Sv)は放射線を受ける側に着目したもので、ヒトが受ける被ばく線量を示します
4) 放射線を受ける側の単位にはシーベルト(Sv)の他、グレイ(Gy)が使われます。グレイ(Gy)は吸収線量を示します。シーベルト(Sv)は防護線量(等価線量と実効線量)、実用線量を示す単位です。
5) ベクレル(Bq)は計測器で直接測定できますが、シーベルト(Sv)はベクレル(Bq)やグレイ(Gy)から計算によって求めるものです。サーベイメータにより計測される数値は近似値です。
6) 「被ばく管理」のために、「実際に測定できる線量(実用量)」として、空間における放射線量を人体に対する影響を考慮して定めている「周辺線量当量(空間線量)」が用いられます。

次回は、線量測定のための計測器や様々な計算に関して解説する予定です。

引用・参考資料

注意

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