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環境関連情報

放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 #2

放射線の基礎知識と健康影響 2

情報発信日:2013-12-24

はじめに

先月に引き続き、環境省が公表している「東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射線による健康影響等に関する国の統一的な基礎資料 平成24年度版 ver.2012001」を主な資料として、「放射線の基礎知識と健康影響編」より「放射線」「被ばく経路」などについて解説します。

放射線の基礎知識と健康影響 #2

放射線の基礎知識

1. 放射線はどこで生まれる?

放射線にはα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、X線、中性子線などがあります。放射線が発見された当時、放射線の正体がわからなかったため、α線、β線、γ線などの名前が付けられましたが、現在ではその正体がわかっています。

2. 放射線の種類

放射線には上表のように電離放射線と非電離放射線があるが、通常「放射線」といった場合は電離放射線を指すことが多い。

放射線と一般的にいった場合は、物質を構成する原子を電離(+電荷のイオンと-電荷の電子に分離)する能力を持つ粒子線と電磁波を指します。

 

3. 放射性物質から放出される放射線


図1 放射性物質から放出される放射線(出典:環境省)

 

4. γ線やX線は電磁波の仲間

電磁波とは電界(電場)と磁界(磁場)が相互に作用しながら空間を伝播する波のことで、電波や光(赤外線、可視光線、紫外線)などがあり、γ線やX線などの放射線もこの仲間といえます。一般に電磁波は波長が短くなる(周波数が高くなる)ほど、電磁波としてのエネルギーは高くなります。電波のエネルギーは10-3~10-12eV、紫外線、可視光線、赤外線が102~10-3eVなのに対して、X線やγ線は104~1010eVと言った極めて高いエネルギーを有しています。

 

5. 放射線のエネルギーの強さ


α線は、皮膚の角質層(皮膚表面の死んだ細胞層)を透過出来ないため、外部被ばくは問題になりません。
しかし、内部被ばくの場合は、組織内で高密度な電離を起こし。狭い範囲に集中的にエネルギーを与えます。このため、DNAに大きな損傷を与え、強い生物効果を引き起こします。

β線はα線同様、通ったところの物質に直接電離を起こしますが、電離の密度は低く。生物に及ぼす影響はα線ほど強くありません。体外からの被ばくでは皮膚や皮下組織に影響を与える可能性があります。

γ線、X線は透過力が強く、深部の臓器・組織にまで到達しますが、やはり電離密度は高くありません。生物への影響力はβ線程度です。

中性子と陽子は質量がほぼ同じであるため、中性子は陽子と衝突すると効率良く止まります。人体は水分を多く含むため、中性子は水分子を構成する水素原子の原子核とぶつかりながらエネルギーを失って行きます。
図2 放射線のエネルギーの強さ (出典:環境省)

 

6. 放射線の透過力

放射線は色々な物質で遮ることができます。


図3 各種放射線の透過力(出典:環境省)

 

7. 放射線が空中を飛ぶ距離と体内の透過距離

放射性物質が体外にある外部被ばくと放射性物質が体内に入り込んだ内部被ばくでは、生体に対する影響は全く異なります。例えば、α線は空中を数cmしか飛ぶことが出来ず、しかも紙1枚で止めることが出来ますので、外部被ばくしても皮膚表面の角質層より深くは浸透しないので影響はありませんが、放射性物質が体内に入ってしまう内部被ばくでは、近傍にある細胞に集中的にエネルギーを与え損傷を引き起こします。しかし、γ線やX線は透過力が高く、空中も遠くまで飛びますので、身体に浴びると身体の奥深くまで到達し、エネルギーが高い場合には通り抜けて行き、その通り道にエネルギーを与え損傷を引き起こします。


外部からα線により被ばくした場合、体表面の角質層で止まってしまいますので影響はありません。β線は皮膚を透過しますので、線量の高い場合は皮膚が火傷したようになりますが体の深いところまでは到達しません。外部被ばくで問題になるのは主にγ線であり、またγ線を出す放射性物質です。

内部被ばくの場合は、α線、β線、γ線を出す全ての放射性物質が体内の細胞に損傷を与える可能性があります。α線は放射性物質が存在する臓器や組織内への影響に留まりますが、浸透力の高いγ線の場合は身体全体に影響を与える可能性があります。

 

被ばくの経路について

1. 外部被ばくと内部被ばく

放射線を体に浴びることを放射線被ばくと言います。放射線被ばくには外部被ばくと内部被ばくがあります。放射線を放出する元が体外にある時に外部被ばくといいます。一方、放射性物質が体内に取り込まれた場合の被ばくを内部被ばくといいます。

放射線を受けるという点では外部被ばくも内部被ばくも同じですが、外部被ばくの場合は放射性物質から遠ざかるか、体表面に付着した放射性物質を取り除くことにより、被ばくは起こらなくなりますが、内部被ばくの場合は放射性物質が体外に排泄されるか、時間の経過とともに放射能が弱まるまで被ばくが継続することになります。

 

2. 様々な被ばく形態

人体が被ばくにより、どの程度の影響があるかは、「どこに、どれだけの放射線を受けたか」によって異なります。全身に放射線を受けた場合に全身被ばく、部分的に受けた場合を局所被ばくと呼びます。

全身被ばくでは全ての臓器や組織に放射線の影響が生じる可能性がありますが、局所被ばくでは原則として被ばくした臓器及び組織のみに影響が現れます。被ばくした部位に免疫系や分泌系の器官が含まれる場合は離れた臓器や組織にも影響が出る可能性もあります。ただし、臓器の種類によって放射線の感受性に違いがありますので、同じ線量による被ばくでも違いがあります。

内部被ばくの場合は、放射性物質の蓄積しやすい臓器や組織では被ばく線量が高くなります。チェルノブイリ事故後に、近隣の子供達に甲状腺癌の発症率が高くなりましたが、これは甲状腺に放射性ヨウ素が蓄積しやすいことと、子供の方が大人より感受性が高いことによります。

 

3. 外部被ばくによる人体への影響

前述したように、外部被ばくでは透過力の弱いα線は皮膚表面で止まってしまうので影響を及ぼすことはありません。β線を出す放射性物質が大量に体表面に付着し、長く放置された場合には、皮膚の放射線感受性の高い「基底細胞層」や「毛根細胞」に影響を及ぼすことがあります。しかし、こうした被ばくはたいへんに稀で、外部被ばくでの問題になるのは、主にγ線を出す放射性物質です。
※どの放射性物質がどの放射線を出すかは下の図をご参照ください。


4. 内部被ばくによる人体への影響

内部被ばくは以下の三つの経路が考えられます。
a) 経口摂取
飲食物に付着または取り込まれた放射性物質を食べたり飲んだりすることにより、体内に入り込み消化管から吸収される場合
b) 吸入摂取
空気中の塵埃や液体飛沫に付着または含有された放射性物質を呼吸によって気道を経由し肺・気道表面から吸収される場合
c) 経皮侵入
傷口より放射性物質を含む粉塵や液体などが侵入する場合
このような経路を経て体内に侵入した放射性物質は体内に取り込まれ放射線を出し続けます。放射性物質の種類によって、特定の臓器や組織に蓄積する場合があります。

例えば、ストロンチウムはカルシウムに似た性質を有しているため、骨や歯などカルシウムが多くある場所に蓄積します。セシウムはカリウムに似た性質を持っているため、カリウム同ように全身に分散します。また、甲状腺ホルモンの材料にヨウ素が使われるため、放射性ヨウ素も甲状腺に蓄積する性質があります。

 

5. 内部被ばくと放射性物質

内部被ばくで特に問題になるのは、半減期が長くα線を出す放射性物質です。また、体内に取り込まれやすく排出されにくい物質、特定の臓器や組織に蓄積しやすい放射性物質も被ばく線量が高くなります。
例えば、プルトニウムは消化管では吸収されにくいので飲食物と共に取り込まれた場合は体内に蓄積することはあまりありませんが、呼吸によって肺から取り込まれた場合には骨や肝臓に沈着しα線を出すため、肺がん・白血病・骨腫瘍・肝がんなどを引き起こす可能性があります。
一方、放射性セシウムはカリウムと似た性質を有しているため、体内に取り込まれやすい反面排泄もされやすい性質があります。しかし、特定の組織に蓄積せず脂肪細胞以外の全ての細胞に取り込まれてしまうため、大人の場合取り込まれた放射性セシウムの量が半分になるのに約100日かかるといわれています。

 

まとめ

今回は、環境省の資料を基に「放射線に関する基礎知識」と「被ばくの経路」について解説しました。
(1) 放射線の正体が電磁波や粒子線であること。
(2) 被ばくには外部被ばくと内部被ばくがあること。
(3) 外部被ばくでは強いγ線を出す放射性物質に近づかない限りはあまり怖くないが、飲食や呼吸によって体内に放射性物質を取り込んでしまう内部被ばくは、長期に渡り高い線量の放射線を浴びることになる。
(4) 内部被ばくした放射性物質の種類により受ける健康被害に違いがある。

今回は、このようなことがわかって頂けたと思いますが、放射線も放射性物質も臭いも色もありません。また、どの程度の線量を浴びると健康被害があるのかなどわからず不安なため、闇雲に怖がることになってしまいますが、放射線は自然界にも存在しますし、医療の現場では種々の治療や検査に幅広く使われているのも事実であり、正しい知識を持って正しく怖がることが重要です。

次回は「原子力災害の影響」と「放射線の単位」などについて解説する予定です。

引用・参考資料

注意

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