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環境関連情報

放射能、放射性物質と放射線について(その2)

放射性物質と、その除去方法

情報発信日:2011-05-20

この度の東日本大震災で被災された多くの方々に心よりお見舞い申し上げると共に一日も早い復興をお祈り申し上げます。また同時に福島第一原子力発電所において被ばくの危険に晒されながら日々復旧に努力されている方々へ心より敬服すると共に感謝致します。

はじめに

東日本大震災発生から既に2ヶ月以上が経ちましたが、福島第一原子力発電所は関係者の懸命の努力にも関わらず、相変わらず不安定な状況にあり、放射性物質に汚染された大気や水が今もなお、継続して漏洩されている模様です。放射性物質は目に見えないため、ある意味では非常に恐い存在ですが、太古の昔から宇宙や地球上の自然界にも存在するもので、新聞やテレビの報道から不必要に神経質になることも無関心になることもなく、まずは正確な事実を知ることが重要と思われます。今回は本コラムでは「種々の水処理方法」について記載する予定でしたが、急遽「放射性物質とは何か、放射性物質で汚染された空気や水はどのようにすれば浄化できるか」について述べたいと思います。

放射性物質と放射線とは

地震発生から約2週間が経過した2011年3月23日、東京都は「都内に水道水を供給する金町浄水場(東京都葛飾区)から、乳児が飲む暫定規制値の2倍を超える放射性ヨウ素131を検出した」と発表しました。そもそも放射性ヨウ素とか放射性セシウムとは何でしょう? 普通のヨウ素やセシウムとは何が違うのでしょうか?

通常、一般的な元素は水素を例外として原子核は陽子と中性子(陽子と同じ質量を有しますが、電荷は持っていません)とで構成されています。元素の周期律表を見ると、各元素の原子番号と質量数が記載されていますが、原子番号はその原子の陽子の数を表し、質量数から原子番号を引いた数が中性子の数になります。例えば通常のヨウ素であれば原子番号が53、質量数が126.9ですので陽子53個に、中性子74個から構成されていることを表しますが、ヨウ素には質量数が108から144、即ち陽子53個に対して中性子の数が55個から91個までの37種類が存在することが知られています。これら、陽子の数が同じであるが中性子の数が異なる元素を同位元素といいます。これらの元素は自然界で比較的安定なものと不安定で、安定な形になろうとするものがあります。この時に放射線を出しながら安定な形の他の元素なってゆく(放射性崩壊という)同位元素を放射性同位元素と呼びます。ほとんどの元素に同位元素はありますが、ヨウ素131は核分裂によって大量に作られ、半減期が短くかつ天然にほとんど存在しないため、原子力発電所の事故などによる放射性物質の汚染状況を把握する指標物質として用いられます。

話が難しくなってしまいましたが、放射性物質の正体とはα線、β線、中性子線などの粒子線やγ線、X線などの電磁波など種々の放射線を出しながら安定な状態に向かっている不安定な状態の元素であり、その性質自体は放射線を出す以外において安定な状態の元素と余り変わりがないと理解できます。

参考までに、各放射線について線種と遮蔽法を以下に示しておきます。

表1

放射性物質による汚染とは

原子力発電所における通常の状態では核分裂によって生成した放射性物質は原子炉の内部に閉じ込められていますが、今回の事故においては幾つかの汚染がありますので、下表にまとめてみます。

表2

以上の様に今回の事故では、放射性物質によって、(1)大気汚染、(2)土壌汚染、(3)地下水及び海洋水に対する水質汚染、のすべてが発生してしまいました。

<表2の1の現象>結果として大気汚染を引き起こしましたが、広域の大気に拡散した放射性物質は降雨降雪に伴い地上や海洋に落下します。2011年3月24日の東京都発表の浄水場での放射性物質検出と乳幼児への飲用回避要請がありましたが、それ以降は異常値を計測していませんので、これ以上の汚染拡大はないと推定されます。

<表2の2の現象>表2の1の現象とほぼ同じですが、原子力発電所敷地内に爆発により散乱した瓦礫や塵に付着した放射性物質が、風や雨などにより砂塵として飛散することによる大気汚染と、地下浸透による地下水汚染の可能性はありますが、敷地内の瓦礫撤去や飛散防止のための樹脂散布などにより、これ以上拡散する可能性は少ないと思われます。

<表2の3の現象>放水車による原子炉の外部からの冷却によって、汚染された大量の水が原子炉建屋周辺に大量に漏洩。しかし、放水を止めると原子炉が冷却できないため一時は汚染水を大量にたれ流し、原子炉周辺の海洋及び地下水を大量に汚染したと推定。現在は外部電源が復旧したため、内部循環による冷却システムがほぼ復旧しつつあると推定されます。

<表2の4の現象>最近、この件で報道がなくなってしまったので不明ですが、原子炉本体ではなく冷却水循環システムの中の配管系(接続部などの緩み)であれば修復可能ですが、原子炉本体に亀裂などがあれば深刻な問題。表2の3同様に原子炉周辺の海洋及び地下水を大量に汚染したと推定。

一度核分裂を起こした燃料棒は年単位の冷却を行う必要があり、まだ予断を許さない状態は続いていると思われますが、一時の危機的な状況に比べると、かなり制御された状態に復旧されつつあると推定されます。しかし、先日の報道では1号機の原子炉がメルトダウンを起こし、燃料格納容器の底に穴が空いたとのことですので、今後も大量の汚染水が生成する可能性があり、この汚染水の再処理・再利用が重要な課題と思われます。

放射性物質の除去法について

放射性物質は「半減期」という言葉をよく聞きますが、放射性物質から放射線の出るのを止めて無害化することはできませんので、放射性物質を気体や液体あるいは固体から分離し、できれば濃縮して放射線が出なくなるまで隔離するしか方法はありません。では、具体的にどのような方法で分離・濃縮することができるでしょうか? 上述しましたが、放射性物質は放射線を出している以外は通常の元素と同じと理解されます。

(1)放射性物質に汚染された気体の浄化

空気などの気体が放射性物質により汚染された場合、放射性物質は通常の元素同様に「元素単独」で気体中に浮遊する事はなく、ほとんどの場合は塵に付着して気体中に浮遊しています。したがって、クリーンルームで使用されているHEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter) を使用することにより浄化が可能です。HEPAフィルタはJIS Z 8122 によって、「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されています。さらにグレードの高いULPAフィルタもあり、最近の電子工業などで使用されています。したがって、JIS規格にあるような高性能防塵マスクを着用することも放射性物質吸入防止には有用です。

(2)放射性物質に汚染された液体の浄化

冷却水になどに使用し汚染された水や今回の事故などで汚染された飲料水の浄化の場合、放射性物質は微粒子の場合もありますが、大半は最少単位の元素レベルとしてイオン化し溶解していると考えられますので、イオン交換樹脂、イオン交換能力のあるゼオライトや、場合によって特殊な活性炭による吸着除去、逆浸透膜(RO膜)による膜処理により、高効率で除去可能です。しかし、今回の事故では原子炉から漏洩した汚染水が大量にあり、この処理を早急に行う必要が生じています。

家庭用浄水器に用いられているような水道水圧で駆動する超低圧逆浸透膜はやや除去率が落ちる可能性がありますので確認が必要です。

(3)放射性物質に汚染された土壌及び地下水の浄化

降雨降雪、降灰によって土壌の表面に落ちた放射性物質は放置しておいても長い年月の内に次第に地下に浸透して行きますが、高濃度汚染の場合には人工的に表土を除去して入れ替える以外に方法はありません。地下水の場合は汲み上げて(2)の方法で浄化することは物理的に可能ですが、コスト面で膨大な費用が掛ってしまいます。したがって、汚染濃度が自然の中で安全な値に下がるまで、人の居住、農作物の栽培などを制限する必要があるといえます。

(4)放射性物質に汚染された海洋水の浄化

一時的に高濃度の汚染水が海洋に流れ込んでも、継続的に漏出しないかぎり、潮流に乗って拡散し、短時間で安全な濃度に低下すると推定されます。ただし、魚介類や海水に対する十分な放射性物質濃度の測定による監視は必要です。

(5)放射性物質に汚染された農産物、畜産物、海産物の浄化

放射性物質に汚染された地域で収穫され、内部に放射性物質を取り込んでしまった農産物、畜産物、海産物の汚染を除くことは不可能ですので、安全基準値を越えた場合は廃棄する以外に方法はありません。

まとめ

放射性物質とは放射線を出しながら崩壊し安定な状態に向かっている不安定な元素であり、放射線を出している以外は通常の元素とほぼ同じ挙動を示すものと思われます。放出される放射線の量は次第に少なくなり、初期の半分の量になる期間を半減期といい、元素の種類によって数日(ヨウ素131は8日)から数十億年(ウラン238は45億年)と長短がありますが、いずれは放射線を出さなくなります。

放射線の種類には色々あり、紙でも遮蔽できるα線から、鉛や厚い鉄板でないと遮蔽できないγ線やX線、水で遮蔽される中性子線など各種あります。

いずれにしても目に見えませんので、放射性物質で汚染された地域へ近寄る場合は線量計でモニターして可視化する必要があるといえます。

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参考資料・文献

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