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環境関連情報

世界の環境法規制#2 米国

幼児と妊婦の保護が優先

情報発信日:2010-12-20

はじめに

世界における環境法規制と言うと、まず思い浮かぶのはWEEE/RoHS指令、ELV指令、EuP指令やREACH規則など環境先進圏と言われる欧州の規制が多く、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素の排出量規制である京都議定書にも反対している米国での環境法規制はあまり話題に登って来ません。

中国を含めたアジア諸国、南米、豪州及び北米でもカナダなどは欧州の環境法規制に追随する方向性を示していますが、米国にはその動きも見られません。果たして米国は環境後進国なのでしょうか? 今回は米国における環境規制について述べてみたいと思います。

米国における独特の法体系とその特徴

米国は欧州における欧州連合の様に、一つの国家で有りながら「合衆国」と言う体制のため、時によっては各州が独立国家の様に振る舞う場合があり、法律においても連邦法と州法が存在しオーバーラップすることが有ります。この場合は、両者のうちでより厳しい方の法律が適用されることになりますので、やや判り難く連邦法だけに注意していれば良いと言うことにはなりません。

米国での法律に関する一般的な特徴は、米国流の「自己判断による自己責任」を求める姿勢として、例えば化学物質の規制については、「有害だから使用禁止にする」と言うよりは「その物質に関する情報を公開・提供して、その物質の使用は使用者の判断と責任に委ねる」と言った傾向が見られます。但し、「おもちゃに含まれる鉛」など自己判断が出来ない子供に影響が生じる可能性のある場合などは厳しく規制が行われています。

米国における主要な環境法規制

(1) 有害物質規制(TSCA: Toxic Substance Control Act)

最近、米国の有害物質規制であるTSCAが改正される動きがあり注目されています。

環境省は2010年12月13日付けで「2011年1月13日(木)に米国有害物質規制法(TSCA)改正に向けた最新動向セミナーを東京・渋谷にある国連大学で開催する。」と発表しました。このセミナーには米国環境保護庁(EPA)の担当官が招かれ、TSCA改正に向けた最新の情報が紹介される予定です。参加費は無料ですが参加希望者は12月24日までに化学物質国際対策ネットワークのウェブサイトからの申し込みが必要です。

EICネットの環境用語集によりますと「米国の有害物質規制(TSCA)は化学物質による人の健康・環境に対する不合理なリスクを規制することを目的に1976年に制定され、新規に化学物質を製造・輸入する者はEPAに対し、事前に通知を行うことが義務付けられています。EPAは審査を行い、当該物質に対して禁止を含む必要な条件を付す事が出来ます。また、特定の化学物質について、(1)人に対する不合理なリスクがある恐れのある場合、または(2)環境もしくは人に対する相当程度の暴露の可能性が有る場合に、その製造者などに対してEPAは健康・環境への影響に関する試験を実施するよう義務付ける事が出来る。さらに、特定の化学物質について、人の健康または環境に対する不合理なリスクについての合理的な根拠を有する場合は、その製造・使用などを禁止ないし制限することが出来る。その他、事業者に対する記録保管および報告の義務、化学物質の輸出入における手続きなどが規定されている。」と記されています。

TSCAの対象となる化学物質は他の法律で規制されている農薬、医薬品などを除くすべての化学物質(元素、化合物、重合物)で、届出・報告・アセスメントの義務違反を起こした場合には、1日1件当たりUS$25,000と言う高額の罰金が科せられる事になりますので十分な注意が必要です。

(2) スーパーファンド法

米国における最も有名な環境法にスーパーファンド法があります。スーパーファンド法は1978年に起きた「ラブキャナル事件」を契機に1980年に制定された「包括的環境対策保障責任法(Comprehensive Environmental Response and Liability Act : CERCLA )」 と1986年に制定された「スーパーファンド修正および再授権法(Superfund Amendments and Reauthorization : SARA)」の2つを合わせた法律の通称です。

ラブキャナル事件とは1940年頃から1950年頃まで、ナイアガラの滝の近くで、某化学会社が19世紀には水路として使用されていたラブキャナル運河に大量の農薬や除草剤を投棄し、やがて運河が埋め立てられ土地は売却され住宅や学校などが建設されましたが、投棄された(当時、これは不法投棄では無く、合法な行為でした)化学物質の中にBHC, DDM, TCP, ベンゾクロライド、ダイオキシンやトリクロロエチレンなどの極めて有害な物質が含まれていたため、埋め立て後約30年を経て投棄された、これらの化学物質が漏出し、地下水や土壌汚染、悪臭・有毒ガス発生などを引き起こしたことによって地域住民の健康被害が顕在化し大きな社会問題となりました。学校は一次閉鎖、住民の一部は強制疎開、一帯は立入禁止となり、国家緊急災害区域に指定されました。

この事件によってアメリカ環境保護庁(EPA)は1980年にその浄化費用に充てるために「包括的環境対処補償責任法(スーパーファンド法)」を制定し、信託基金が設立されました。

また、この事件を契機に全米の調査が行われましたが環境汚染を引きこす恐れのある廃棄物処理地が、数万か所もあることが判明しました。この浄化費用に充てるためにスーパーファンド(巨額資金)と呼ばれる16億US$に上る信託基金が設立されたため、この法律は「スーパーファンド法」と呼ばれています。

(3) ODSラベリング規則

1990年の大気浄化法の改正(Section 611 on the Clean Air Act Amendment of 1990) により、オゾン層破壊物質(ODS)を含む製品およびODSを使用して生産した製品にラベルによる表示が義務付けられています。対象となるODSはクラス1とクラス2が有り、要求事項はそれぞれ異なります。

クラス1のODSを使用した製品や含有する製品を輸入品する場合には通関時には必要事項を表示することが要求されます。

(4) プロポジション65

正式名称は「Proposition 65 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986 (安全飲料水及び有害物質執行法」で、1986年にカリフォルニア州法として採択され、1987年1月に発効しました。

この法律の目的は人体や飲料水を有害な化学物質から守ることで、州政府に対しては「少なくとも年に1回の有害物質リストの提示」、製造者に対しては「商品に有害物質が含有されている場合はその情報の表示」を義務付けており、消費者がこれらの情報に基づいて有害物質を含有する商品の購入や使用について自分自身で適切な判断が出来るようにしています。

まとめ

この他に、水銀規制、鉛規制、廃電池規制などもあります。冒頭でも述べましたが、連邦法、州法でそれぞれ厳しい規制が有りますが、基本的には「情報は与えるから自己の責任で判断しなさい。問題が起きたら裁判で解決する。」と言う流れが有る一方で、「幼児と妊婦の保護」が優先される傾向が有ります。米国の環境法規制は幼児や妊婦など弱者に重点が置かれていると思われます。

引用・参考資料

注意

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