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暮らしのなかのバルブ

(このページは当会発行「バルブダイジェスト2007」から一部抜粋し再構成したものです)

私たちの暮らしを支えているバルブ

給水栓を除くと、普段バルブを目にすることはあまりありませんが、私たちの生活を支えるさまざまな産業において、バルブは欠かすことのできない重要な存在となっています。ここでは、各種産業とそこでのバルブの役割について紹介します。

建築設備

給排水衛生設備

給排水衛生設備とは、水・熱水の給水と排水、冷風・温風・空気浄化等の供給設備の総称です。ここで使われるバルブは、単水栓、湯水混合水栓、大小便器洗浄弁、分水栓、止水栓、ボールタップ、逃し弁、空気抜き弁、調整弁、トラップ、グローブ弁、ゲート弁、バタフライ弁、逆止弁などです。

材料は、青銅、鋳鉄、ステンレスがほとんどですが、鉄系材料にはライニングやコーティングなどの「さび」防止対策、銅系材料には鉛侵出対策が求められます。

空気調和設備

空気調和設備とは、屋内空気の温度・湿度・風量・風圧・清浄度を、人に快適な状態または設備類に必要な状態に保つものです。バルブは給排気や冷温水配管などに使われます。流体の多くが空気である点と、自動化率の高いことが特徴で、使われているバルブには、調節弁(多くは電動式)、定流量弁などがあります。

ガス設備

ここでいうガス設備とは、おもに燃料および冷暖房用のガス設備配管などです。大都市周辺では都市ガスが主で、それ以外はLPG(液化石油ガス)が使われています。この設備に使うバルブは、ガス栓、ボール弁、圧力調整器、容器用バルブなどで、いずれも安全上の配慮が求められます。

水道

水道には上水道と下水道があります。飲用を含む生活用水を供給するのは上水道です。バルブは主として地下に設置され、飲料水を扱うことから水道用として特有の規定に基づき使用されています。バルブが水道施設で果たす役割を大別すると、制御用、遮断用、放流用、逆流防止用、管路保護用、汚泥および薬注用になります。

水道施設

水道施設とは、浄水場から(おもに地下埋設管を通じて配水する)配水管までを指しています。400mm以上のものは配水本管、350~75mmのものは配水小管とよびます。ここで使われるバルブには、制水弁、空気弁、逆止弁、減圧弁、自動制御弁、バタフライ弁などがあります。

給水装置

既設の給水装置や配水小管から導水するため、宅地や建物屋内に引き込まれる管を給水管といいます。ここに設置されるバルブは数多くの種類がありますが、おもなものは、分水栓、止水栓、ボールタップ、逆止弁などです。

消火設備

消火を目的とする設備は、消防法の規制を受けています。ここで使われる消火栓を大別すると屋内および屋外用になります。前者は建物内の廊下や壁などに設置して、ホースやノズルと同一の箱に納めておくものです。後者は地上式と地下式の二つに分かれます。

下水道

下水道では水処理と汚泥処理が行われます。混入する夾雑物、砂分、泥分や、硫化ガスなどの腐食性ガスへの対処がバルブに求められます。

電力

電力を得る方式として商業的に定着しているのは、依然として水力・火力・原子力です。このうち、水力発電には大形の水門弁などが使用されますが、わが国ではほとんど需要がなくなりましたので、ここでは、火力発電・原子力発電とバルブのかかわりについて紹介します。

火力発電と原子力発電は、熱源が石油、天然ガス、石炭の燃焼か核反応かで分けられます。しかし、いずれも、熱源で高温高圧の蒸気をつくり、それによってタービン・発電機を駆動して発電する仕組みです。電力弁とは、火力・原子力発電所で、おもに蒸気と水循環系で使用されるバルブの総称なのです。

火力発電

従来からある多くの火力発電プラントでは、蒸気温度538~566℃、蒸気圧力24MPa、発電効率は42%程度です。この蒸気温度と圧力が高ければ高いほど発電効率がよくなります。新鋭の大型石炭火力発電所では、蒸気温度593~610℃、主蒸気圧力24~25MPaの条件に達しています。

火力発電用のバルブは、これらの条件下で稼働すべき高温高圧弁として、一般のバルブとは異なった位置づけがされています。火力発電用バルブに求められる課題は、材料の選定と過酷な条件下での機能確保とにあります。高温クリープの向上、熱衝撃の急激な変化への対応、高温下の作動と気密性の維持などが求められるのです。

原子力発電

原子力発電は、核反応の高熱を熱交換して高温高圧の蒸気を発生させ、これによりタービン・発電機を駆動して発電するものです。タービンでエネルギーを消費した蒸気は、復水器によって元の水に戻され、再循環ポンプにより再び原子炉へ戻ります。原子炉と発電機周辺の循環系統を制御するバルブは、原子力発電所にとって欠くことのできない重要な機器です。そこでは、放射性流体、減速材、冷却剤、プロセス蒸気、復水、給水および冷却水など、いたるところでたくさんのバルブが使われています。

原子力発電用バルブの特徴は、十分な安全解析と多項目の確認記録、生産工程を含む綿密な品質保証が徹底的に追求されることです。温度・圧力は火力発電用を下回りますが、品質面からみた安全性が最優先されます。

石油工業

石油工業は、石油採掘、石油精製、石油化学に大別されます。これらの概要とそこで使われるバルブについて紹介します。

装置の概要とバルブ

(1)石油さく井とバルブ

石油の採掘は地下数百メートルから数千メートルにわたって埋蔵されている石油を、さく井によって自噴させたり、加圧・減圧させたりして行います。ここで使用するバルブを石油さく井用バルブとよび、一般弁とは異なる分野として扱います。わが国では原油の採掘がほとんど行われないため、これらのバルブはほとんどが海外向けとなります。

(2)石油精製とバルブ

石油精製は原油を蒸留して各種の石油製品をつくるものです。製造工程は常圧蒸留、減圧蒸留、接触分解、接触改質、アルキレーション、脱硫、調合などです。これらの装置と付属設備、または装置間や貯油槽間の配管に使うバルブを石油精製用バルブとよびます。冷却水や蒸気を扱うオフサイトにつけるバルブは、普通このなかには含めません。

装置の種類が多いので、石油精製用バルブの仕様も広範囲にわたります。使用圧力はクラス125から4500の広範囲におよび、弁箱材料は鋳鉄、炭素鋼、低合金鋼、高合金鋼および低温鋼など多種類です。

(2)石油化学とバルブ

石油化学は、石油精製の過程でつくられたナフサ(粗製ガソリン)を主原料として、エチレンやスチレンなどの誘導体製品をつくるものです。なかでもエチレンプラントは、石油化学工業のあらゆる中間材料を製造する基幹プラントです。

使用されるバルブは石油精製用とほぼ同じですが、高温・超低温・高圧・耐食などの条件はさらに苛酷なものが多く、バルブの種類・材料とも特殊仕様のものが多いといえます。

石油精製および石油化学用バルブの特徴

(1)取り扱う流体は危険物です。原油・重油・揮発油などのほか、酸・アルカリ・各種の薬品などです。これらは加工の工程上、超低温から高温のものもあり、引火性・爆発性があります。

(2)石油工業のプロセスは複雑な反応を必要とします。したがって、腐食はさまざまで、バルブの受ける腐食条件は苛酷なものです。プラントの長期連続運転を阻まないよう、腐食対策には十分な配慮が望まれます。

(3)タンク元弁や輸送管用バルブが地震や火災などの災害に曝されると、流出事故を引き起こし第二次災害を生じます。

(4)石油精製では、業界に共通の規格があります。用途や仕様条件から適用材料を区分し、それに見合ったバルブを使います。

ガス

わが国は天然ガス資源に乏しく、消費の大部分を輸入に頼っていますが、量の確保と輸送効率を上げるため、原料ガスは加圧して超低温とされ、その体積は1/60に圧縮されます。この原料の手当てから消費までの一連の工程で、採掘・精製・送り出し・運搬・受け入れ・処理・供給などの各設備に多くの種類のバルブが使用されています。汎用弁、自動制御弁、減圧弁の一種であるガバナ、ガス栓などです。

産業用ガス設備

産業用ガスには、民生用(生活用)にも使われる天然ガス、石油ガスのほかに、多種類の化学ガスと特殊ガスがあります。さまざまな産業において最終製品にまで至る途中の工程には、おびただしい種類のガスが使われています。それぞれ性状が違うため、これらの設備に用いるバルブは使用目的や条件に合わせて、個々に対応を図らねばなりません。

産業用ガスは、毒性・支燃性・可燃性・爆発性など非常に危険度が高いので、設備をはじめ、バルブなどについては、選定・製造・操作・保全などに細心の注意が不可欠です。このため安全確保の目的で「高圧ガス保安法」の規制が適用されています。

化学工業

日本の化学工業の出荷額は自動車産業、電子・電機産業に匹敵します。構成比率でみると、医薬品、プラスチック、染料・顔料、脂肪属中間体、化粧品、写真感光剤、塗料などのスペシャリティーが上位を占め、増加の方向にあります。

化学工業用バルブが扱う流体は一般に腐食性の高いものが多く、その圧力は超高圧から真空まで、温度も高温から超低温までと広範囲です。バルブが設置される環境も複雑で、雰囲気に腐食性がある場合もあります。

化学工業用バルブの特徴は、多種類の流体に対する材料の選択にあります。同じ圧力-温度条件でも流体の性状によって、まったく別の材料を選ばなくてはならないことになるのです。そして、材料によってはバルブの形式や構造も変わってきます。

したがって、化学工業用バルブのポイントは材料の耐食性の吟味にあり、仕様に合わせて経済性をも睨みながら設計・製作しているのが大部分です。耐食性の高い材料は価格も高いという側面があるため、経済性に優れた非金属材料を使うことがあります。また、経済性を考えて、金属材料が流体に接触する部分を耐食性のよい材料で被覆して用いることもあります。合成ゴム、合成樹脂、ガラスの被覆(ライニングまたはコーティングといいます)がその例です。

造船

造船の用途は、貨物船、タンカー、漁船、客船など約50種類に分類されます。船舶用バルブとは、これらすべての船舶の船体・機関・その他の設備に使われるバルブの総称です。

たとえば、石油類・液化天然ガス・化学薬品・食料品などの輸送船では、積載貨物の多様化に対応してバルブの材質にも大きな変化が及び、石油用バルブ、超低温弁、化学用バルブなどが使われます。船舶の配管系統だけをみると「動く工場」といった趣を呈しており、船舶用バルブにも多種多様なものがあります。

従来から船舶用バルブでは、次の条件が優先されてきました。

(1)余分なスペースをとらないこと
(2)航行中にできるだけ修理をしなくて済むこと
(3)もし修理する場合には船内で作業しやすいこと

また、機関室無人化船の普及にあわせて、他の搭載機器類と同様にバルブの自動化も進んでいます。各船級協会は、搭載する自動機器について、船内の環境条件下における機能の信頼性を確認するため、形式試験による認定を規格化しています。環境条件としては、振動・傾斜・動揺・塩水噴霧・外被の保護・高低温度・湿度などがあげられます。船舶用バルブには、船内環境での高い機能信頼性が要求されているのです。

手動式の船舶用バルブには、JIS規格のF部門で約90種類が標準化されています。その種類はおもに青銅製・鋳鉄製・鋳鋼製のグローブ弁・アングル弁・ゲート弁・逆止弁・バタフライ弁などです。

その他

製紙工業

製紙工業は、パルプ液・白水・清水・薬品・黒液・蒸気・空気・油などさまざまな流体を扱っており、プロセスが複雑な産業のひとつです。バルブに要求される特徴的な条件は、スラリー(粘性の強い流体)への対処です。

食品工業

食品工業で大事なことのひとつは、製品がヒトに安全でなけらばならないことです。そのため、バルブには流体を遮断・制御する本来の機能のほかに、プロセス流体(食品の原料)を汚染しないことが求められます。普通のバルブより清浄度が高くなくてはなりませんし、細菌が増殖するおそれのある滞留部が内部にあってはなりません。端接続部には、分解・組立の容易なクランプ式、ベベルシート式が用いられます。

半導体製造装置

半導体製造装置で使われる多くのガス系システムでは高い清浄度が保たれなければならず、バルブはこれを損なってはなりません。内部部品から微細な塵やガスを放出してはならず、流れが滞ってもいけません。

地域冷暖房

ビル群に蒸気・温水・冷水を熱源プラントから供給するのが、地域冷暖房システムです。そこで使われる汎用弁と自動制御弁には、高い耐久性と性能が求められます。

ごみ焼却炉

廃棄物減量化施策が進みつつありますが、ごみ焼却炉はいまだ多く、そこでもバルブが使われています。

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